2016年9月25日日曜日

20160925 JBJS (Am) Patient Compliance with Postoperative Lower-Extremity Non-Weight-Bearing Restrictions

免荷を指示すると患者さんはどれだけその指示を守れるか?という論文です。

結論として、27.5%の患者さんは免荷の指示を守れず歩いてしまいますよ。という結論です。
なぜか季節が暖かいとコンプライアンスが不良となるという結果を出していますが、苦しい感じは否めません。苦笑。平均気温摂氏16度とか、日本で言ったら寒い季節だし。
この論文はDiscussionの最後の段落が読みどころです。本研究の意味合いについて「この論文を書いたところ、自分の指導医の診療姿勢がかわったのが本研究が意味があるところである」という手前味噌なオチ。苦笑。
サンプルサイズの問題はあるかもしれませんが、コンプライアンスの良、不良に関わらず合併症の発生率に差がないというのもなかなか深い。と思います。

そうそう、この間95歳のおばあちゃんに三分の一の部分荷重を指示した若いDrがいました。本論文でも書いてありますが、部分荷重は本当に指導する方も守る方も大変です。
高齢者にそんな指示だすな。というのはこういう場で言っておきます。
閑話休題

以下本文

  • Background
  • 整形外科領域では、外傷の治療や手術後に免荷を指示することがある。免荷は創部の回復に有用であると信じられている。しかしながら免荷がどの程度守られているかと言うことについては今までわかっていない。本研究の目的は免荷のコンプライアンスがどの程度かを調べることである。
  • Methods
  • 一重盲検。片足の免荷を指示された患者のギプスに、圧がかかると色がするフィルムを貼り付けた。ギプス除去時(平均24日目)にフィルムを回収した。50%以上フィルムに着色されている場合にはコンプライアンスが不良であると定義付けた。患者背景、ギプス装着期間との関連を調査した。
  • 結果51患者中14患者(27.5%)がコンプライアンス不良であった。コンプライアンスが良好であった37例では11例に症状の悪化などがみられ、コンプライアンスが不良であった14例の患者の内6例で症状の悪化が見られた。この2群間に有意差はなかった。年齢、性別、言語、BMI、ギプス固定の期間、術者などで有意差を認めなかった。寒い季節よりも暑い季節のほうが荷重をかけていた。
  • 免荷を守れない患者は27.5%であった。暖かい季節だと有意に免荷が守れないことがわかった。免荷をしないことで合併症は免荷を守った群と差を認めなかった。
  • Introduction
  • 患者のコンプライアンス、アドヒアランスについて医療界ではよく語られている。特に多いのは薬剤の服薬継続についてである。これらの報告で明らかになるのは、コンプライアンスが低いと大きな問題が引き起こされるということである。
  • 整形外科の論文では、ギプスについての報告が最も多い。術後どの程度コンプライアンスが守られているかというのは不明である。今まで、患者が術後の指示をどれだけ守っているかということについて調査することは困難であった。しかし、術後良い結果を得るためには術後厳しい指導をしておく必要があるということが信じられてきた。患者がどの程度その指示を守っているのかわからないのにもかかわらず結果について報告することは時間の浪費であるとも考えられる。
  • 本研究では術後免荷の指示がどの程度有効であるかを調査することを目的とした。
  • Methods
  • アメリカボストンの大学病院を受診した患者。51名。術後免荷の指示が必要だった患者を対象。
  • ギプスの中に圧がかかると色が変わるフィルムを挿入しギプスを巻いた。
  • 最低3ヶ月間フォロー。術後合併症を記録。
  • フィルムの50%以上が着色されている群をコンプライアンス不良群と規定。まず6名のボランティアの健常人を準備し、ギプスを巻いて免荷、半荷重、片脚立位、2分間歩行の4パターンでのフィルムの着色を調査。これらの調査で、免荷、半荷重、片脚立位では着色が50%を越えることはなく、歩行した場合にのみ50%を越えることがわかった。
  • 患者の属性を記録。気温が16度を超えるときには暑い季節、それ以下のときには涼しい季節と定義した。
  • Result
  • 51例全例でフォローが可能であった。最低3ヶ月のフォロー。ギプス固定の平均は24.3日であった。27.5%の患者がコンプライアンスが不良であった。様々な患者要因を検討した結果、暖かい季節のほうがコンプライアンスが不良であった。その他多変量解析でも独立した真摯は認められなかった。
  • 51例中17例、33.3%で何かしらの合併症を発症した。持続する疼痛、再手術、感染、DVT、骨接合金属からの痛み、骨折治癒遅延などである。コンプライアンス不良例の14例中6例。コンプライアンスが良好であった37例中11例で合併症は発生した。この2群間に有意差を認めなかった。
  • Discussion
  • 術後の荷重制限については部分荷重についてその指示をまもれるか、という報告がある。部分荷重を守らせることは部分荷重を指導するのと同じように難しいという結論となっている。部分荷重についてははっきりと守らせることが困難だからである。BMIが高い群でよりコンプライアンスが不良であったとする報告がある。
  • 整形外科領域のコンプライアンスについての報告は散見される。これらの報告の多くは患者の申告に立脚している。このような報告式のデータ収集の報告ではコンプライアンスが実際よりも良好になる。
  • 本研究でわかったことは、免荷の指示を出したときに守れるのが72.5%であったということと、暖かい季節ではコンプライアンスが不良となるということである。しかし、多変量解析では有意な結果は得られなかった。その上、コンプライアンスの良、不良に関わらず術後合併症の発生には影響がなかった。ただし、骨癒合について影響があるかどうかを検討するには症例数がすくなく、本研究はコンプライアンスについて調査することを目的としているのでこの有意差がなかったのはサンプルサイズが不足しているせいであるとしておく。
  • 患者には、コンプライアンスについての調査をするということを前もって伝えてあるため、コンプライアンスの遵守率は実際の患者群より高くなっている可能性がある。(ホーソン効果の可能性)
  • コンプライアンスが不良であった原因について、職業なども含めた検討が必要であると考える。
  • 本研究によってこの研究を指導したDrの診療がより丁寧になったので本研究は意味があるものと考える。


2016年9月10日土曜日

20160910 CORR Physicians’ Attire Influences Patients’ Perceptions in the Urban Outpatient Orthopaedic Surgery Setting


若い先生がラフな格好で外来をしていると「もっときちっとした服装で外来にでなさい」とお小言をいうようなお年ごろになってきた、がみたけです。
変形性関節症などはヒアルロン酸の関節内注射の結果をみても、プラセボ効果が無視できませんので、服装は大事やで!とおもっていたところでこの報告です。
白衣とスクラブがオススメとのこと。
ネクタイつけるだけで手術がうまくみえるのであれば、つけない理由はありません。
そこのスニーカーで外来にでているあなた。ちょっと気を使いましょう。

以下本文
  • 抄録
  • 以前筆者らは皮膚科で医師の外見が患者に与える影響について調査を行っている。しかしながら、他の科では外見が患者に与える影響について行なわれた研究はない。今回は整形外科で医師の外見が患者の信頼度に与える影響について調査した。
  • 外来セッティングで医師の服装が患者の印象に与える影響を調べることである。
  • 都会の教育指定病院の外来。100人の患者の内85人が3つのパートの質問に回答した。はじめのセッションは8つのイメージについての質問。白衣、スクラブ、スーツ、カジュアルウエアで男性、女性の合計8名の写真を見せた。次にそれぞれの写真について5段階で評価を行った。自信がありそうか、信頼、安心感、優しさ、賢さを示しているかを調べた。どれくらい手術がうまそうか、についても自由記載させた。
  • LikertスケールとFriedmanテストで統計学に有意かどうかを決定させた。
  • 結果
  • 自信、知性、手術の技量、信頼、信用できる情報、優しさ、安全性において白衣を着ているとスーツを着ている場合やカジュアルウエアを着ている場合よりも有意に前向きな反応が得られることがわかった。女医については、白衣とスクラブでは差がなかったものの、白衣を着ているとスーツよりも有意に前向きな反応が得られることがわかった。信頼感において白衣を着ていると他の3つの服装よりも有意に良い信頼感が得られていた。
  • 都会の整形外科外来において、白衣は信頼、知性、信用、安全性を担保する道具となることがわかった。白衣を着ていたり、スクラブを着ているだけで手術がうまく見えたり個人的な情報を話すことができると感じることがわかった。これらの結果は他の科での結果と一致するものである。院内感染に気をつければ、整形外科医が白衣を着ない理由はない。
  • Introduction
  • 医師の服装が重要であるということはヒポクラテスの時代から言われている。専門職であることを明らかとすることや衛生的な理由からどのような服装をすると医師患者関係に有益かということが議論されてきた。多くの研究が医師患者関係(患者教育、信頼感、信用、尊敬、アドヒアランス)に服装が与える影響について述べている。信頼感や信用と言った要素は多くの心理的な要因に影響されているものの、整形外科以外では服装がこれらに影響することはわかっている。服装は患者の第一印象に影響を与える中で変えることのできる要素の1つである。白衣は19世紀から医師の一般的な服装として認識されてきた。近年、スクラブ、スーツ、カジュアルウエアも外来ではしばしばみられるようになってきている。英国では診療中に肘より先に装飾品をつけることを禁止している。これは白衣が院内感染の媒体となっているのでは無いか、また患者に接触し傷つけるのでは内科という恐れに伴うものである。患者側の医師の服装に対する期待も無視できない。小児科、精神科では白衣は医師の権威の象徴として患者側が心を閉ざすことがある。また高齢者ではよりフォーマルな服装を好む。
  • 以前の研究において、さまざまな施設で様々な科においてどのような服装が良いかの研究を行ってきた。小児科、精神科ではよりカジュアルな服装が好まれる一方で、内科では白衣が好まれてきた。今までに整形外科領域で医師の服装に関する研究はない。本研究の目的は整形外科領域での医師の服装が医師患者関係に与える影響を調査することである
  • 方法
  • 横断研究。3つのパートにわかれた質問票への回答。セッティングは都会にある整形外科教育病院
  • 対象は18歳以上。85人の患者からデータを回収した。黒人、女性、プライベートな保険を有する人が多かった。
  • 最初の調査は図1のような8枚の写真を見せた。これをランダムに出現させた。背景、装飾品などは全て統一させてある。それぞれの写真についてLikertスケールを用いて整形外科医に対する信頼感、知性、信用、安心感などを5段階評価。
  • 続いての質問では、8枚の写真で、どの整形外科医が信頼、知性、信用、安心感があるかを調査順位付けを行った。
  • 最後のセッションでは患者自身の背景について年齢、性別、人種、教育レベルについて聴取した。
  • データ収集についての問題
  • 5段階のLikertスケールであるので、カテゴリアルデータとなる。0.75以上で有効であると判定できる
  • 統計学的データ
  • Friedmanテストを用いて4つの服装についての検討を行った。Bonferroniで補正してある。ノンパラメトリックで検定を行った。
  • 結果
  • 男性では、白衣は他の全ての服装よりも信頼、知性、人種、手術の上手さが高いという結果になった。
  • 女性ではカジュアルウエアで信頼、知性、人種、手術の旨さで前向きな反応が有意に少なかった。白衣とスクラブ、スーツのあいだには有意差を認めなかった。
  • 患者が好ましいと考えるのは、白衣またはスクラブだった。
  • 考察
  • 英国では感染防御の観点から白衣、時計、ネクタイの着用が禁止されている。今回の結果は患者からみるとそれらの対応は好ましく無いと言える。
  • 本研究の結果はあくまでもアメリカの都会の病院の結果である。
  • 幾つかのLimitationがある。都会で若い患者を対象としていること、気候の問題を無視していること、若い患者が多く、これらの患者はカジュアルな服装を好むことなどである。
  • また5段階評価を行ったが、この評価はValidateされて担保されたものではない。
  • スクラブが白衣とほぼ同等の評価であった。若い患者ではよりカジュアルな服装を好むので、本研究の対象が若い患者が多かったことが影響しているのかもしれない。
  • 患者の第一印象を変える最も容易な手段として服装を変えるということはあるので、医師患者関係の観点から考慮されてもよい。

2016年8月20日土曜日

20160820 BJJ Surgical outcomes of primary hip and knee replacements in patients with Parkinson’s disease

パーキンソン病の患者さんに人工関節置換術をするとどうなるか?という論文です。

調べてみると結構少ないですね。こういった合併症を有する患者さんについてその人工関節の成績がどうなのか?というのはまだ戦う余地があるのかもしれません。

パーキンソン病の患者さんは脱臼しやすいですよ。長期の生命予後も不良ですよというのが論文の要点です。

以下本文。

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フィンランドの人工関節レジストリー。857例のParkinson病の患者を対象として、2571例のマッチさせたコントロール群を抽出。平均フォロー期間は6年。パーキンソン病の患者の平均入院期間は長く、術後脱臼の可能性が高かった。(ハザード比2.33)。感染率、再置換率、1年後の死亡率には差がなかった。パーキンソン病の患者の死亡率は高く、術後10年での平均生存率は34.7%であった。パーキンソン病の患者では心血管イベント、精神的な合併症が入院期間の延長と関連し、心血管イベントの存在が死亡率と関連していた。

Introduction
パーキンソン病はドーパミンの欠乏による神経難病である。60歳以上の1から2%に出現し、高齢化とともに増加する。運動障害はドーパミンの投与によって改善が得られるが、機能障害は徐々に進行していく。疾患によるものだけではなく、パーキンソン病の患者では筋骨格系の異常が生じることがある。変形性関節症はパーキンソン病の患者の慢性疼痛の主要な原因である。超高齢者においても人工関節置換術は有効であると報告されているもの、パーキンソン病に限っての報告はほとんどない。またこれらの報告は1970年台から1990年台に行なわれた手術の報告である。本研究ではパーキンソン病を有した患者でのTKA、THAの臨床成績を人工関節レジストリーを用いて調査することである。

Material and Methods
フィンランドの人工関節レジストリーを用いて行った研究。1998年から2009年まで。術前にパーキンソン病と診断されている患者を対象とした。リウマチなどの他の関節疾患を有している患者は除外した。2回以上の手術が行われている場合にはより最近の手術を対象とした。フィンランドでは慢性疾患に対して保険が適用されるので、その診断については確かなものである。1人のパーキンソン病の患者に対して3例のPrimary THA または TKAの患者をコントロールとして抽出した。抽出の方法としてはPropensity Scoreを用いた。入院期間、脱臼率、再置換術を調査した。
入院期間は正規分布でなかったためU検定を行った。90日、180日、1年での感染、脱臼、再置換術、死亡率に関してはカイ二乗検定を用いた。Kaplan-meier検定とCox hazardを行った。

Results
297例のTHA,560例のTKAがパーキンソン病の患者に対して行なわれていた。パーキンソン病と診断されてから手術までの年数が5.2年。6例が手術時にパーキンソン病に関わる認知症を発症し、97例が経過中に認知症を発症した。
パーキンソン病の患者では、入院期間が9日間と一般的な入院期間である7日間よりも長かった。術後90日たっても入院している割合はパーキンソン病の患者で多かった。感染率には差がなかった。
THAの関節生存率は、術後1年で98%、術後3年で96.8%。TKAの生存率は1年で98.6%、3年で96.3%であった。術後3年の時点で再置換術に至った症例はなかった。術後2年の時点での再置換率の危険率は対象群とコントロール群で差がなかった。術後2年を経過すると数例で再置換が必要となる例が多く、その原因は脱臼もしくは感染であった。
18例、6.1%でTHAの脱臼が生じた。この割合はコントロール群よりも大きかった。特に術後早期の脱臼が多かった。
術後1年までの死亡率には差がなかった。しかしながら長期に経過観察すると術後5年で75.1%、術後10年で34.7%しか生存していなかった。
パーキンソン病の患者では男性よりも女性で入院期間が延長し、また高齢者ほど入院期間が長い傾向にあった。心血管疾患、うつ、精神疾患などが経依存症として存在すると入院期間が延長した。これらの因子は再置換とは関連しなかった。認知症の発生は予後と関連を認めなかった。
高齢、男性、心血管疾患、糖尿病が存在すると生命予後が不良であった。
年齢、性別を調整すると、脱臼、生命予後にパーキンソン病が影響していることがわかった。

考察
パーキンソン病はTKA,THAの周術期の死亡率を増加させないものの、一般的な人工関節置換術と比べて、脱臼率、入院期間の延長が認められた。パーキンソン病の患者ではその長期の生命予後は不良である。精神疾患の悪化、心血管イベントの発生が入院期間の延長と関連していた。
本研究の強みはN数が多いことである。またパーキンソン病の診断が確立していることである。
本研究のLimitationは疼痛の改善、機能予後などについての評価が行えていないことである。
他の研究でパーキンソン病でも臨床成績は悪く無いとする報告があるので、本研究でもそれほど悪く無いであろう。また術中骨折などの術中合併症についての評価は出来ない。また患者の栄養状態、パーキンソン病の状態についての情報も欠如している。
パーキンソン病の患者で感染が増えるとする報告があるが、本研究では優位さを認めなかった。
脱臼率はコントロール群の2倍の6%だった。
術後早期の死亡率もコントロール群と差がなかった。ただし、長期の生命予後は不良だった。これは心血管疾患が関与している可能性がある。

2016年8月7日日曜日

20160807 JBJS(Am) The effect of Risser stage on bracing outcome in Adolescent idiopathic scoliosis

本邦でも「運動器検診」なるものが導入され、側わん症が検診の先生方によって発見される機会が増えています。
二次検診目的にご紹介いただくことが多いのですが、市井の一整形外科医がどのタイミングでどのような患者さんを脊椎専門医にご紹介するかはなかなか悩ましいところでした。
本研究によって
1)Cobb角25度以上
2)RisserStageがもっとも重要である。
3)加えてY軟骨の閉鎖の有無も確認すること。
というのが1つの指標として得られましたので、それを指標として脊椎専門医にご紹介したいと考えました。

Risser stage (SRSのホームページより)

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  • 特発性側弯症(AIS)の患者において手術療法が必要となった患者において装具療法のコンプライアンス。Risser Stage,骨成熟度合いとの関連を調査した。
  • 168例の患者。ブレースが不要となるまでもしくは手術となるまでフォローした。適合基準はCobb角が25度から45度。Risser Stageが0,1,2のいずれかである。体温計を用いてコンプライアンスを測定した。
  • 50度で手術適応とした時に、Risser Stageが0の患者では44.2%が、Stage1の患者では6.9%、Stage 2の患者は0%が手術適応となった。
  • 装具のコンプライアンスはRisser0,1,2の患者でそれぞれ11.3時間、13.4時間、14.2時間であった。最初の側弯の程度は3群で変わらなかったものの、Risser0の患者で手術に至る割合が多かった。Risser0の62例中41.9%で12.9時間以上ブレースをつけていても手術となった。Risser0でもY軟骨が閉鎖し、18時間以上装具を装着していた10例では手術になった例はなかった。対照的に同じだけ装具を装着していても、Y軟骨が閉鎖していないRisser0では10例中7例が手術治療に至った。Risser0でY軟骨が閉鎖していない9例で、最初の観察時のCobb角が30度以下で、12.9時間以上の装具の装着を行っていた群では7例が手術治療に至らなかった。
  • Risser0は装具を装着していたとしても側わん症進行のリスクである。一般に推奨される12.9時間以上の装具装着でも側弯の進行を抑えることが出来なかった。
  • またY軟骨が閉鎖していない群は最高リスク群である。特に最初の測定時にCobb角が30度以上でY軟骨が閉鎖していない群では18時間以上の装具装着を勧告すべきである。Y軟骨が開いていて、Cobb角が30度以下、Risser0では装具を積極的に用いるべきである。
  • はじめに
  • BRAIST(Bracing in adolescent idiopathic scoliosis trial)の報告によれば、特発性側弯症(以下AIS)の患者において、装具治療を行なわないと52%が手術治療が必要となるものの、装具を用いるとその率を28%まで低下させることができる、となっている。その報告では12.9時間以上の装着で90−93%の手術を防ぐことができると報告している。
  • しかしながらAISの患者の装具療法においてはそのコンプライアンスが問題となる。体温計を装具につけて測定したところ、ほとんどの患者が指示されたとおりに装具を装着することは無く、16%の患者が言われた時間の半分程度なんとか装着していたと報告している。しかしながら、一日の半分程度装着していれば装具療法としては有効であるとする報告もある。
  • 本施設では装具の着用を推進してきた。しかしながらRisser Stage、Y軟骨閉鎖を含めた骨成熟と装具療法との関連はわかっていないので、本研究では前向き研究で骨成熟と装具療法との関連を調査した。
  • 結果
  • 222例のAISの患者170人が研究に参加し、168人が研究を完遂した。
  • 平均年齢は12.3歳。Cobb各は33.8度
  • Risser Stageは0が120例、1が29例、2が19例であった。Risser Stageが0の内、46例でY軟骨が閉鎖前であり、74例でY軟骨が閉鎖していた。
  • Risser0の120例中53例、44.2%で進行が認められた。Risser1では6.9%、Risser2では0%であった。開始時の側弯の程度に有意差はなかった。
  • Risser0では装具をしているにもかかわらず手術になることが多かった。
  • Risser0の内、Y軟骨が閉鎖している74例では手術に至ったのは32.4%であったのに対し、Y軟骨が閉鎖していない46例では63%で手術が必要となった。
  • 装具の装着時間について全群で差はなかった。
  • 装具装着時間12.9時間を閾値としてRisser0を2軍に分け、手術に至ったかどうかを調べたところ装着群で62例中26例で手術が必要となり、装着できなかった群では58例中27例で手術が必要となり。有意差を認めなかった。Risser0で12.9時間以上の装具をつけたかどうかは手術に至るかどうかで影響しなかった。多変量解析を行ったが装具装着時間はRisser0については独立した説明因子とは成り得なかった。
  • Risser1について、6時間以上装具を装着している群では手術に至った例はなかった。Risser2では手術が必要となった例はなかった。未治療群がないので、Risser2で装具の有無がどう影響するかを評価することは出来ない。
  • Risser0または1で、初診時のCobb角が25−29度の患者で手術に至るのは12.8%であった。Risser0でY軟骨が閉鎖していない群ではCobb角が25−29度の症例12例中4例33.3%で手術が必要となった。
  • 30−39度の患者では30%の患者で手術が必要であった。Risser0に限れば46.3%で手術が必要でまたY軟骨閉鎖前では70%で手術が必要となった
  • 40−49度の患者ではRisser0では69.2%の患者で手術が必要となった。Y軟骨が閉鎖していなかった4例では全例が手術が必要となった。
  • 最後に装具装着時間と手術について検討を行った。15時間以上の装着をしているにもかかわらず、Y軟骨閉鎖前では54.5%の患者で手術が必要となった。18時間装着していた10例では7例で手術が必要となったが、カルテを見てみると全例が33度以上の側弯を有していた。反対にY何kの栂閉鎖した10例のRisser0で18時間以上の装具を装着していた例では手術に至った例は1例もなかった。
  • 考察
  • 側弯に対する装具療法のサンプルサイズの大きなコホート研究である。
  • 本研究のノイエスはY軟骨閉鎖の有無によって治療効果が異なることを示したことである。
  • BRAISTでは装具療法の有効性を明らかとした。本研究ではそれを詳細に検討している。
  • 研究のLimitationとしては装具の種類がTLSOしか無いこと、1人の賢者によってしかレントゲン評価がなされていないことである。

2016年7月23日土曜日

20160723 JBJS Am The American Academy of Orthopaedic Surgeons Appropriate Use Criteria for Management of Hip Fractures in the Elderly

http://www.orthoguidelines.org/go/auc/

JBJSにAAOSの新しいサービスが掲載されていました。
appropriciate use criteria (AUC) とよばれるサービスです。

EBMでは、自分の目の前の患者さんに対して、エビデンスに基づいた医療を行うために、
(1)問題の定式化
(2)情報検索
3)情報の質の吟味
(4)症例への適応
5)自己評価

が必要とされています。

このうち(2)〜(4)までを補助してくれるというか代わりにやってくれるというサービスになります。

大腿骨頚部骨折を例にとると、
大腿骨頚部骨折で検索した際に、その論文でEnrollされた患者さんの層がどのようなものかということからMethodsをみて検討しなければなりませんでしたし、その論文の妥当性なども自分で検討しなければなりませんでした。

このサービスはそれらの段階を全て代わりにやってくれることになります。

ガイドラインの一歩先にいくサービスといえばわかりやすいでしょうか。
次回使用感についてレポートします。

こういうサービスを日本語でも立ち上げないとだめですね。。。。


2016年7月10日日曜日

整形外科の抄読会のネタに困っているあなたのために


おはようございます。管理人です。

病院づとめしていると必ず回ってくる抄読会当番。
ネタ選びは結構難しくて、自分の専門分野以外の人も交えての抄読会ともなれば、自分の専門分野も踏まえつつ、他のひとも興味が湧くような話題を是非準備したいもの。

「まずPubmedで」なんてPubmedで”Hip fracture”と検索してみると、昨今の雑誌発刊ラッシュも相まって玉石混交どころか殆どが石ころ、砂粒のような論文が引っかかってくること引っかかってくることも。

かと言っていわゆるquality journalを探すと、自分が調べたい内容がない。なんてことはザラ。

そんなあなたにPubmedでquality journalから自分の興味のある分野を検索する方法を

これが普通に”hip fracture”と検索したところ。35,000以上の論文が発行されています。


ここでこの隅っこに注目

ここでjournal categoriesを選択すると
5つのJournal categoryが出てくるので、”core clinical journals”を選択。
すると

5,530編の有名雑誌にでている論文が抽出されます。

quality journalであれば全てよい論文というわけではありませんし、ここに出ていないからといって悪いというわけではありません。Acta orthopedicaなどは質のよい論文が載っていることが多いです。
あくまでも1つの参考ですかねえ。




2016年7月9日土曜日

20160709 CORR The natural histry of osteoarthritis: what happens to the other hip?

  • 変形性股関節症の予後についてはまだまだ未知の部分が多いですが、THAを行った症例について10年間のフォローを行い、健側の股関節の変形についてフォローしたもの。
  • 思ったよりあまり進行しないなあというのが感想。痛みがなければその関節は長持ちする。という僕の仮説はなんとなくあっていそうです。
  • 変形性股関節症で男性例が多いこと、DDHが基盤となっている本邦とは趣を異にします。本邦でも二番煎じで同じ研究ができそうですね。
  • 研究手法はしっかりしていると思います。特に脱落群についての取り扱いが丁寧です。同じ研究をされる方は参考にされると良いのでは無いかと思います。
  • 結局、OAが進行するのは41%。反対側のTHAが必要となるのは19%であった。関節裂隙、CE角、head-to-neckratioが関連しているものと考えられた。というのが結論です。
  • 余談になりますが、独特のIntroductionと考察の流れは読んでいて少しクスっとなります。Introductionが格調高くなく、普通の臨床医の目線で始まること、考察で突然同時期の自分たちのやった手術の結果(当然unpublished)を持ちだして考察しているところなんてドキドキします。苦笑。

以下本文
  • ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  • Abstract
  • 変形性関節症は人工関節置換術の主な原因の一つである。片方の人工関節置換術を受けた患者は反対側の関節の予後について心配になる。手術が必要となるのか、もし必要となるのであればいつかということが心配となる。単純レントゲン写真で反対側の関節の変化について評価した論文はほとんどない
  • 本研究の目的は片側のTHAを受けた患者において反対側の変形性股関節症の有病率を調査し、反対側の股関節の進行について臨床的、画像的な評価を行うことである。
  • 1998年から2010年。398例の片側の人工股関節置換術を受けた患者。手術時に全く症状がない患者を対象とした。367例の患者が最低2年間のフォローを可能であった。平均11年のフォロー。31例が脱落。THAをエンドポイントとして関節生存率を作成。リスク因子について検討を行った。
  • 結果 10年間の経過観察で、59%の患者が全く症状がなく、また81%の患者でTHAを行うことなく経過していた。関節裂隙の狭小化、CE角が小さいこと、Head-neck ratioが小さいこと、骨棘が存在することが危険因子であった。BMI,年齢などは危険因子ではなかった。
  • 結論 将来的にTHAが必要となる因子を明らかとした。ラウエン像でも評価が必要であろう
  • Introduction
  • 日常診療で「私の反対側の股関節は手術が必要ですか?」と聞かれることは少なくない。Ritterらは10年間の経過観察で、37%の患者でOAが進行し、8%の患者でTHAが必要となったと報告している。Vossinakisらは寛骨臼形成不全がある患者でより関節症の進行が必要となったと報告している。SahinらはFAIが存在していると関節鏡を行った反対の関節でOAが進行するということを報告している。
  • これらの報告は症例数が少なく、統計的なパワーにかける。またもう一つの論文は原因が含まれていて危険因子の検討がなされていない。それ故にこれらの研究では患者さんの疑問に答えることには不足している。そこで長期間の縦断研究を計画し、反対側の股関節が変化するかどうかを調査した。また患者の因子やレントゲン写真上の特徴がOAと関連しているかの研究はない。
  • 本研究の目的はTHAの反対側の関節の生存率について調査を行い、臨床上、レントゲン写真上の特徴についての検討を行うことである。
  • 方法
  • 1998年から2010年。398例の片側THAが行われた患者。またTHAの時点で反対側に全く症状がない症例を対象とした。レントゲン写真上で異常があっても痛みがないものも対象に含んでいる。367例の患者が最低2年間の経過観察が可能であった。平均フォローアップ期間は11年である。295例の男性、72例の女性。平均年齢は54歳±8歳。身長177センチ、体重86㎏。BMIは27であった。フォローは当初の5年は毎年受診し、その後2から4年毎の受診とし、臨床スコア、レントゲン評価、UCLAスコアの聴取を行った。歩行障害が出るような痛みをChanleyBとした。
  • 一方を手術してから反対側を手術するまでの時間を測定した。単純レントゲン写真で、関節裂隙、CE角、head -to -neck ratio、骨棘の存在、骨嚢胞の存在について検討を行った。関節裂隙は1ミリ以上を測定した。
  • 31患者が脱落した。これらは年齢、性別、BMI、関節裂隙、CE角、head-to-neck ratioで差を認めなかった。14例の患者が10年間フォローできず、脱落と判断した。また80例の患者が最近5年間受診していなかった。これらの患者は2年フォローできた場合には検討群に組み入れた。既に関節裂隙が2ミリ以内に狭小化していいたもの、骨棘が形成されていたものも疼痛がなければ検討群に組み入れた。
  • 一方のTHAを行った後、同じように悪くなれば手術することを患者に伝えた。同時に悪くなるかどうかについては不明であることも伝えてある。術後の患者はアスリートレベルのスポーツは避け、インピンジメントを避けるために内旋はしないように指導した。
  • 0.5ミリの関節裂隙の狭小化が見つけることができる最小の患者数は32名であった。
  • カプランマイヤーで生存曲線を描いた。1つはChanleyB(痛みがでる)、1つはTHAへの置換である。
  • 62名の患者がCE角が25度以下であった。
  • 結果
  • 殆どの患者が疼痛無く経過し、THAを行なわずに経過した。症状が全く無く経過したのが5年で73%、10年で59%、15年で39%であった。疼痛が出るまでの平均期間は44ヶ月であった。THAへの置換について、THAに置換せずに済んだ群は5年で87%、10年で81%、15年で75%であった。59名の患者がTHAに置換され、置換までの平均期間は58ヶ月であった。
  • THAの危険因子は最小関節裂隙、CE角、骨棘の形成、Head-to-neck ratioが小さいことであった。CE角が大きい群、小さい群でサブグループ解析を行ったところ、CE角が小さい群では関節裂隙だけが関連する因子であったが、CE角が25度以上でサブグループ解析を行うとHead-to-neck ratioが関連因子として抽出された。
  • 考察
  • 今までの研究は統計的な問題があったりOAの評価に問題があったりした。
  • 本研究のLimitationはまずレントゲン写真がAP像のみであること絵ある。CamタイプのFAIはOAの原因となる。本研究では健側の側面像の撮影が行われていなかった。一般的臨床医は正面像だけで予後を判定すると思う。なので正面像だけでもいいと考える。また痛みはないがレントゲン写真上でOAをきたしている症例について、骨棘などが測定に影響を及ぼした可能性はある。評価を術者が行っていることも問題であろう。
  • また80例が最近5年間受診しておらず、14例がフォロー不能であった。これらの患者は手術が受けられないので実際のTHAへ至る率は下がることが考えられる。また人種の問題は考慮されていない。
  • 今回の結果は今までの報告に近いものであった。
  • また危険因子についての検討で、関節裂隙が1ミリ大きくなると疼痛のある股関節症への進行が0.7倍に減ることがわかった。また最大関節裂隙と最小関節裂隙の差が大きい症例でもOAの進行の可能性が高いことがわかった。
  • 年齢性別は関連しなかった。
  • CE角が小さい症例ではhead -to -neck ratioは関連しなかったが、CE角が大きい症例ではhead- to-neck ratioが関連した。DDHの有無についてはしっかりと診断しておく必要がある。
  • 結局、OAが進行するのは41%。反対側のTHAが必要となるのは19%であった。関節裂隙、CE角、head-to-neckratioが関連しているものと考えられた。