2016年8月20日土曜日

20160820 BJJ Surgical outcomes of primary hip and knee replacements in patients with Parkinson’s disease

パーキンソン病の患者さんに人工関節置換術をするとどうなるか?という論文です。

調べてみると結構少ないですね。こういった合併症を有する患者さんについてその人工関節の成績がどうなのか?というのはまだ戦う余地があるのかもしれません。

パーキンソン病の患者さんは脱臼しやすいですよ。長期の生命予後も不良ですよというのが論文の要点です。

以下本文。

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フィンランドの人工関節レジストリー。857例のParkinson病の患者を対象として、2571例のマッチさせたコントロール群を抽出。平均フォロー期間は6年。パーキンソン病の患者の平均入院期間は長く、術後脱臼の可能性が高かった。(ハザード比2.33)。感染率、再置換率、1年後の死亡率には差がなかった。パーキンソン病の患者の死亡率は高く、術後10年での平均生存率は34.7%であった。パーキンソン病の患者では心血管イベント、精神的な合併症が入院期間の延長と関連し、心血管イベントの存在が死亡率と関連していた。

Introduction
パーキンソン病はドーパミンの欠乏による神経難病である。60歳以上の1から2%に出現し、高齢化とともに増加する。運動障害はドーパミンの投与によって改善が得られるが、機能障害は徐々に進行していく。疾患によるものだけではなく、パーキンソン病の患者では筋骨格系の異常が生じることがある。変形性関節症はパーキンソン病の患者の慢性疼痛の主要な原因である。超高齢者においても人工関節置換術は有効であると報告されているもの、パーキンソン病に限っての報告はほとんどない。またこれらの報告は1970年台から1990年台に行なわれた手術の報告である。本研究ではパーキンソン病を有した患者でのTKA、THAの臨床成績を人工関節レジストリーを用いて調査することである。

Material and Methods
フィンランドの人工関節レジストリーを用いて行った研究。1998年から2009年まで。術前にパーキンソン病と診断されている患者を対象とした。リウマチなどの他の関節疾患を有している患者は除外した。2回以上の手術が行われている場合にはより最近の手術を対象とした。フィンランドでは慢性疾患に対して保険が適用されるので、その診断については確かなものである。1人のパーキンソン病の患者に対して3例のPrimary THA または TKAの患者をコントロールとして抽出した。抽出の方法としてはPropensity Scoreを用いた。入院期間、脱臼率、再置換術を調査した。
入院期間は正規分布でなかったためU検定を行った。90日、180日、1年での感染、脱臼、再置換術、死亡率に関してはカイ二乗検定を用いた。Kaplan-meier検定とCox hazardを行った。

Results
297例のTHA,560例のTKAがパーキンソン病の患者に対して行なわれていた。パーキンソン病と診断されてから手術までの年数が5.2年。6例が手術時にパーキンソン病に関わる認知症を発症し、97例が経過中に認知症を発症した。
パーキンソン病の患者では、入院期間が9日間と一般的な入院期間である7日間よりも長かった。術後90日たっても入院している割合はパーキンソン病の患者で多かった。感染率には差がなかった。
THAの関節生存率は、術後1年で98%、術後3年で96.8%。TKAの生存率は1年で98.6%、3年で96.3%であった。術後3年の時点で再置換術に至った症例はなかった。術後2年の時点での再置換率の危険率は対象群とコントロール群で差がなかった。術後2年を経過すると数例で再置換が必要となる例が多く、その原因は脱臼もしくは感染であった。
18例、6.1%でTHAの脱臼が生じた。この割合はコントロール群よりも大きかった。特に術後早期の脱臼が多かった。
術後1年までの死亡率には差がなかった。しかしながら長期に経過観察すると術後5年で75.1%、術後10年で34.7%しか生存していなかった。
パーキンソン病の患者では男性よりも女性で入院期間が延長し、また高齢者ほど入院期間が長い傾向にあった。心血管疾患、うつ、精神疾患などが経依存症として存在すると入院期間が延長した。これらの因子は再置換とは関連しなかった。認知症の発生は予後と関連を認めなかった。
高齢、男性、心血管疾患、糖尿病が存在すると生命予後が不良であった。
年齢、性別を調整すると、脱臼、生命予後にパーキンソン病が影響していることがわかった。

考察
パーキンソン病はTKA,THAの周術期の死亡率を増加させないものの、一般的な人工関節置換術と比べて、脱臼率、入院期間の延長が認められた。パーキンソン病の患者ではその長期の生命予後は不良である。精神疾患の悪化、心血管イベントの発生が入院期間の延長と関連していた。
本研究の強みはN数が多いことである。またパーキンソン病の診断が確立していることである。
本研究のLimitationは疼痛の改善、機能予後などについての評価が行えていないことである。
他の研究でパーキンソン病でも臨床成績は悪く無いとする報告があるので、本研究でもそれほど悪く無いであろう。また術中骨折などの術中合併症についての評価は出来ない。また患者の栄養状態、パーキンソン病の状態についての情報も欠如している。
パーキンソン病の患者で感染が増えるとする報告があるが、本研究では優位さを認めなかった。
脱臼率はコントロール群の2倍の6%だった。
術後早期の死亡率もコントロール群と差がなかった。ただし、長期の生命予後は不良だった。これは心血管疾患が関与している可能性がある。

2016年8月7日日曜日

20160807 JBJS(Am) The effect of Risser stage on bracing outcome in Adolescent idiopathic scoliosis

本邦でも「運動器検診」なるものが導入され、側わん症が検診の先生方によって発見される機会が増えています。
二次検診目的にご紹介いただくことが多いのですが、市井の一整形外科医がどのタイミングでどのような患者さんを脊椎専門医にご紹介するかはなかなか悩ましいところでした。
本研究によって
1)Cobb角25度以上
2)RisserStageがもっとも重要である。
3)加えてY軟骨の閉鎖の有無も確認すること。
というのが1つの指標として得られましたので、それを指標として脊椎専門医にご紹介したいと考えました。

Risser stage (SRSのホームページより)

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  • 特発性側弯症(AIS)の患者において手術療法が必要となった患者において装具療法のコンプライアンス。Risser Stage,骨成熟度合いとの関連を調査した。
  • 168例の患者。ブレースが不要となるまでもしくは手術となるまでフォローした。適合基準はCobb角が25度から45度。Risser Stageが0,1,2のいずれかである。体温計を用いてコンプライアンスを測定した。
  • 50度で手術適応とした時に、Risser Stageが0の患者では44.2%が、Stage1の患者では6.9%、Stage 2の患者は0%が手術適応となった。
  • 装具のコンプライアンスはRisser0,1,2の患者でそれぞれ11.3時間、13.4時間、14.2時間であった。最初の側弯の程度は3群で変わらなかったものの、Risser0の患者で手術に至る割合が多かった。Risser0の62例中41.9%で12.9時間以上ブレースをつけていても手術となった。Risser0でもY軟骨が閉鎖し、18時間以上装具を装着していた10例では手術になった例はなかった。対照的に同じだけ装具を装着していても、Y軟骨が閉鎖していないRisser0では10例中7例が手術治療に至った。Risser0でY軟骨が閉鎖していない9例で、最初の観察時のCobb角が30度以下で、12.9時間以上の装具の装着を行っていた群では7例が手術治療に至らなかった。
  • Risser0は装具を装着していたとしても側わん症進行のリスクである。一般に推奨される12.9時間以上の装具装着でも側弯の進行を抑えることが出来なかった。
  • またY軟骨が閉鎖していない群は最高リスク群である。特に最初の測定時にCobb角が30度以上でY軟骨が閉鎖していない群では18時間以上の装具装着を勧告すべきである。Y軟骨が開いていて、Cobb角が30度以下、Risser0では装具を積極的に用いるべきである。
  • はじめに
  • BRAIST(Bracing in adolescent idiopathic scoliosis trial)の報告によれば、特発性側弯症(以下AIS)の患者において、装具治療を行なわないと52%が手術治療が必要となるものの、装具を用いるとその率を28%まで低下させることができる、となっている。その報告では12.9時間以上の装着で90−93%の手術を防ぐことができると報告している。
  • しかしながらAISの患者の装具療法においてはそのコンプライアンスが問題となる。体温計を装具につけて測定したところ、ほとんどの患者が指示されたとおりに装具を装着することは無く、16%の患者が言われた時間の半分程度なんとか装着していたと報告している。しかしながら、一日の半分程度装着していれば装具療法としては有効であるとする報告もある。
  • 本施設では装具の着用を推進してきた。しかしながらRisser Stage、Y軟骨閉鎖を含めた骨成熟と装具療法との関連はわかっていないので、本研究では前向き研究で骨成熟と装具療法との関連を調査した。
  • 結果
  • 222例のAISの患者170人が研究に参加し、168人が研究を完遂した。
  • 平均年齢は12.3歳。Cobb各は33.8度
  • Risser Stageは0が120例、1が29例、2が19例であった。Risser Stageが0の内、46例でY軟骨が閉鎖前であり、74例でY軟骨が閉鎖していた。
  • Risser0の120例中53例、44.2%で進行が認められた。Risser1では6.9%、Risser2では0%であった。開始時の側弯の程度に有意差はなかった。
  • Risser0では装具をしているにもかかわらず手術になることが多かった。
  • Risser0の内、Y軟骨が閉鎖している74例では手術に至ったのは32.4%であったのに対し、Y軟骨が閉鎖していない46例では63%で手術が必要となった。
  • 装具の装着時間について全群で差はなかった。
  • 装具装着時間12.9時間を閾値としてRisser0を2軍に分け、手術に至ったかどうかを調べたところ装着群で62例中26例で手術が必要となり、装着できなかった群では58例中27例で手術が必要となり。有意差を認めなかった。Risser0で12.9時間以上の装具をつけたかどうかは手術に至るかどうかで影響しなかった。多変量解析を行ったが装具装着時間はRisser0については独立した説明因子とは成り得なかった。
  • Risser1について、6時間以上装具を装着している群では手術に至った例はなかった。Risser2では手術が必要となった例はなかった。未治療群がないので、Risser2で装具の有無がどう影響するかを評価することは出来ない。
  • Risser0または1で、初診時のCobb角が25−29度の患者で手術に至るのは12.8%であった。Risser0でY軟骨が閉鎖していない群ではCobb角が25−29度の症例12例中4例33.3%で手術が必要となった。
  • 30−39度の患者では30%の患者で手術が必要であった。Risser0に限れば46.3%で手術が必要でまたY軟骨閉鎖前では70%で手術が必要となった
  • 40−49度の患者ではRisser0では69.2%の患者で手術が必要となった。Y軟骨が閉鎖していなかった4例では全例が手術が必要となった。
  • 最後に装具装着時間と手術について検討を行った。15時間以上の装着をしているにもかかわらず、Y軟骨閉鎖前では54.5%の患者で手術が必要となった。18時間装着していた10例では7例で手術が必要となったが、カルテを見てみると全例が33度以上の側弯を有していた。反対にY何kの栂閉鎖した10例のRisser0で18時間以上の装具を装着していた例では手術に至った例は1例もなかった。
  • 考察
  • 側弯に対する装具療法のサンプルサイズの大きなコホート研究である。
  • 本研究のノイエスはY軟骨閉鎖の有無によって治療効果が異なることを示したことである。
  • BRAISTでは装具療法の有効性を明らかとした。本研究ではそれを詳細に検討している。
  • 研究のLimitationとしては装具の種類がTLSOしか無いこと、1人の賢者によってしかレントゲン評価がなされていないことである。

2016年7月23日土曜日

20160723 JBJS Am The American Academy of Orthopaedic Surgeons Appropriate Use Criteria for Management of Hip Fractures in the Elderly

http://www.orthoguidelines.org/go/auc/

JBJSにAAOSの新しいサービスが掲載されていました。
appropriciate use criteria (AUC) とよばれるサービスです。

EBMでは、自分の目の前の患者さんに対して、エビデンスに基づいた医療を行うために、
(1)問題の定式化
(2)情報検索
3)情報の質の吟味
(4)症例への適応
5)自己評価

が必要とされています。

このうち(2)〜(4)までを補助してくれるというか代わりにやってくれるというサービスになります。

大腿骨頚部骨折を例にとると、
大腿骨頚部骨折で検索した際に、その論文でEnrollされた患者さんの層がどのようなものかということからMethodsをみて検討しなければなりませんでしたし、その論文の妥当性なども自分で検討しなければなりませんでした。

このサービスはそれらの段階を全て代わりにやってくれることになります。

ガイドラインの一歩先にいくサービスといえばわかりやすいでしょうか。
次回使用感についてレポートします。

こういうサービスを日本語でも立ち上げないとだめですね。。。。


2016年7月10日日曜日

整形外科の抄読会のネタに困っているあなたのために


おはようございます。管理人です。

病院づとめしていると必ず回ってくる抄読会当番。
ネタ選びは結構難しくて、自分の専門分野以外の人も交えての抄読会ともなれば、自分の専門分野も踏まえつつ、他のひとも興味が湧くような話題を是非準備したいもの。

「まずPubmedで」なんてPubmedで”Hip fracture”と検索してみると、昨今の雑誌発刊ラッシュも相まって玉石混交どころか殆どが石ころ、砂粒のような論文が引っかかってくること引っかかってくることも。

かと言っていわゆるquality journalを探すと、自分が調べたい内容がない。なんてことはザラ。

そんなあなたにPubmedでquality journalから自分の興味のある分野を検索する方法を

これが普通に”hip fracture”と検索したところ。35,000以上の論文が発行されています。


ここでこの隅っこに注目

ここでjournal categoriesを選択すると
5つのJournal categoryが出てくるので、”core clinical journals”を選択。
すると

5,530編の有名雑誌にでている論文が抽出されます。

quality journalであれば全てよい論文というわけではありませんし、ここに出ていないからといって悪いというわけではありません。Acta orthopedicaなどは質のよい論文が載っていることが多いです。
あくまでも1つの参考ですかねえ。




2016年7月9日土曜日

20160709 CORR The natural histry of osteoarthritis: what happens to the other hip?

  • 変形性股関節症の予後についてはまだまだ未知の部分が多いですが、THAを行った症例について10年間のフォローを行い、健側の股関節の変形についてフォローしたもの。
  • 思ったよりあまり進行しないなあというのが感想。痛みがなければその関節は長持ちする。という僕の仮説はなんとなくあっていそうです。
  • 変形性股関節症で男性例が多いこと、DDHが基盤となっている本邦とは趣を異にします。本邦でも二番煎じで同じ研究ができそうですね。
  • 研究手法はしっかりしていると思います。特に脱落群についての取り扱いが丁寧です。同じ研究をされる方は参考にされると良いのでは無いかと思います。
  • 結局、OAが進行するのは41%。反対側のTHAが必要となるのは19%であった。関節裂隙、CE角、head-to-neckratioが関連しているものと考えられた。というのが結論です。
  • 余談になりますが、独特のIntroductionと考察の流れは読んでいて少しクスっとなります。Introductionが格調高くなく、普通の臨床医の目線で始まること、考察で突然同時期の自分たちのやった手術の結果(当然unpublished)を持ちだして考察しているところなんてドキドキします。苦笑。

以下本文
  • ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  • Abstract
  • 変形性関節症は人工関節置換術の主な原因の一つである。片方の人工関節置換術を受けた患者は反対側の関節の予後について心配になる。手術が必要となるのか、もし必要となるのであればいつかということが心配となる。単純レントゲン写真で反対側の関節の変化について評価した論文はほとんどない
  • 本研究の目的は片側のTHAを受けた患者において反対側の変形性股関節症の有病率を調査し、反対側の股関節の進行について臨床的、画像的な評価を行うことである。
  • 1998年から2010年。398例の片側の人工股関節置換術を受けた患者。手術時に全く症状がない患者を対象とした。367例の患者が最低2年間のフォローを可能であった。平均11年のフォロー。31例が脱落。THAをエンドポイントとして関節生存率を作成。リスク因子について検討を行った。
  • 結果 10年間の経過観察で、59%の患者が全く症状がなく、また81%の患者でTHAを行うことなく経過していた。関節裂隙の狭小化、CE角が小さいこと、Head-neck ratioが小さいこと、骨棘が存在することが危険因子であった。BMI,年齢などは危険因子ではなかった。
  • 結論 将来的にTHAが必要となる因子を明らかとした。ラウエン像でも評価が必要であろう
  • Introduction
  • 日常診療で「私の反対側の股関節は手術が必要ですか?」と聞かれることは少なくない。Ritterらは10年間の経過観察で、37%の患者でOAが進行し、8%の患者でTHAが必要となったと報告している。Vossinakisらは寛骨臼形成不全がある患者でより関節症の進行が必要となったと報告している。SahinらはFAIが存在していると関節鏡を行った反対の関節でOAが進行するということを報告している。
  • これらの報告は症例数が少なく、統計的なパワーにかける。またもう一つの論文は原因が含まれていて危険因子の検討がなされていない。それ故にこれらの研究では患者さんの疑問に答えることには不足している。そこで長期間の縦断研究を計画し、反対側の股関節が変化するかどうかを調査した。また患者の因子やレントゲン写真上の特徴がOAと関連しているかの研究はない。
  • 本研究の目的はTHAの反対側の関節の生存率について調査を行い、臨床上、レントゲン写真上の特徴についての検討を行うことである。
  • 方法
  • 1998年から2010年。398例の片側THAが行われた患者。またTHAの時点で反対側に全く症状がない症例を対象とした。レントゲン写真上で異常があっても痛みがないものも対象に含んでいる。367例の患者が最低2年間の経過観察が可能であった。平均フォローアップ期間は11年である。295例の男性、72例の女性。平均年齢は54歳±8歳。身長177センチ、体重86㎏。BMIは27であった。フォローは当初の5年は毎年受診し、その後2から4年毎の受診とし、臨床スコア、レントゲン評価、UCLAスコアの聴取を行った。歩行障害が出るような痛みをChanleyBとした。
  • 一方を手術してから反対側を手術するまでの時間を測定した。単純レントゲン写真で、関節裂隙、CE角、head -to -neck ratio、骨棘の存在、骨嚢胞の存在について検討を行った。関節裂隙は1ミリ以上を測定した。
  • 31患者が脱落した。これらは年齢、性別、BMI、関節裂隙、CE角、head-to-neck ratioで差を認めなかった。14例の患者が10年間フォローできず、脱落と判断した。また80例の患者が最近5年間受診していなかった。これらの患者は2年フォローできた場合には検討群に組み入れた。既に関節裂隙が2ミリ以内に狭小化していいたもの、骨棘が形成されていたものも疼痛がなければ検討群に組み入れた。
  • 一方のTHAを行った後、同じように悪くなれば手術することを患者に伝えた。同時に悪くなるかどうかについては不明であることも伝えてある。術後の患者はアスリートレベルのスポーツは避け、インピンジメントを避けるために内旋はしないように指導した。
  • 0.5ミリの関節裂隙の狭小化が見つけることができる最小の患者数は32名であった。
  • カプランマイヤーで生存曲線を描いた。1つはChanleyB(痛みがでる)、1つはTHAへの置換である。
  • 62名の患者がCE角が25度以下であった。
  • 結果
  • 殆どの患者が疼痛無く経過し、THAを行なわずに経過した。症状が全く無く経過したのが5年で73%、10年で59%、15年で39%であった。疼痛が出るまでの平均期間は44ヶ月であった。THAへの置換について、THAに置換せずに済んだ群は5年で87%、10年で81%、15年で75%であった。59名の患者がTHAに置換され、置換までの平均期間は58ヶ月であった。
  • THAの危険因子は最小関節裂隙、CE角、骨棘の形成、Head-to-neck ratioが小さいことであった。CE角が大きい群、小さい群でサブグループ解析を行ったところ、CE角が小さい群では関節裂隙だけが関連する因子であったが、CE角が25度以上でサブグループ解析を行うとHead-to-neck ratioが関連因子として抽出された。
  • 考察
  • 今までの研究は統計的な問題があったりOAの評価に問題があったりした。
  • 本研究のLimitationはまずレントゲン写真がAP像のみであること絵ある。CamタイプのFAIはOAの原因となる。本研究では健側の側面像の撮影が行われていなかった。一般的臨床医は正面像だけで予後を判定すると思う。なので正面像だけでもいいと考える。また痛みはないがレントゲン写真上でOAをきたしている症例について、骨棘などが測定に影響を及ぼした可能性はある。評価を術者が行っていることも問題であろう。
  • また80例が最近5年間受診しておらず、14例がフォロー不能であった。これらの患者は手術が受けられないので実際のTHAへ至る率は下がることが考えられる。また人種の問題は考慮されていない。
  • 今回の結果は今までの報告に近いものであった。
  • また危険因子についての検討で、関節裂隙が1ミリ大きくなると疼痛のある股関節症への進行が0.7倍に減ることがわかった。また最大関節裂隙と最小関節裂隙の差が大きい症例でもOAの進行の可能性が高いことがわかった。
  • 年齢性別は関連しなかった。
  • CE角が小さい症例ではhead -to -neck ratioは関連しなかったが、CE角が大きい症例ではhead- to-neck ratioが関連した。DDHの有無についてはしっかりと診断しておく必要がある。
  • 結局、OAが進行するのは41%。反対側のTHAが必要となるのは19%であった。関節裂隙、CE角、head-to-neckratioが関連しているものと考えられた。

2016年6月20日月曜日

20160620 JBJS(Am) Tranexamic Acid Administration in Primary Total Hip Arthroplasty A Randomized Controlled Trial of Intravenous Combined with Topical Versus Single-Dose Intravenous Administration



トラネキサム酸(商品名:トランサミン)の局所投与がTHAの出血コントロールに有効ですよ。というお話。
中国からの報告。
素晴らしい論文だと思います。まず研究プロトコールが完成している。3群比較が絶妙ですよね。この論旨であれば、局所投与が有効であるといえます。
筆者らも『この研究の強みは研究プロトコールが完成していることである』とDiscussionの中で述べています。

全く同時期にJournal of ArthroplastyにアメリカからTXA局所投与と全身投与を比較したRCTが、Journal of Orthopaedic scienceに佐賀大学からのTXAについての局所投与と全身投与の後ろ向き研究が報告されています。
ご興味がある方は以下からどうぞ

Journal of Arthroplasty http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26783121
JOS http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26755385


この論文がそれらの報告を抑えてJBJS(Am)に掲載されたのもうなずけます。
佐賀の報告なんて886例!もの検討を行っています。そのご苦労を察するに、だれか研究プロトコール作れなかったのかと。どこかで前向き、RCTに出来なかったのかと。惜しまれます。

最後に、この1年、Core Journalにおける中国からの臨床研究の報告が目立つようになってきました。国としての勢いを感じます。またプロトコールを作る専門家がいるのでしょうかね。このプロトコールの巧みさには舌を巻くばかりです。日本も医者だけに任せずに、そういった研究アシストがあればいいのに。と思いました。


以下本文
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  • トラネキサム酸(TXA)は人工股関節置換術(THA)でしばしば使われる。しかしながら深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓などの副作用については検討されていなかった。また、どうやって投与されるべきかということについても検討されて来なかった。本研究はTXAの静脈内投与と局所の同時投与がTHAの出血量を減らすことができるかを検討した。
  • 方法
  • 前向き、無作為割り付け試験。150人の患者を3群に分けた。同時投与群(15mgのTXA静脈内投与と1g/100mlの局所投与)、静脈内投与群(15mgのTXA静脈内投与)、プラセボ群に分けた。プライマリーアウトカムは出血量。輸血量。セカンダリーアウトカムは入院期間、関節可動域、ハリスヒップスコア、DVT、肺塞栓の発生率とした。
  • 結果
  • 全出血量は同時投与群で835.49±343.5ml、静脈内投与群で1002.62±366.85ml、プラセボ群が1221.11±386.25mlで有意に同時投与群で減少した。同時投与群では輸血量も減少した。(1単位対8単位対19単位)。肺塞栓の発生、DVTの発生には有意差を認めなかった。
  • 結論
  • 静脈内投与と局所投与のTXAの同時投与はTHA患者での出血量を減らす。また輸血量も減少させる。どのように投与すべきかというプロトコールの作成は必要である。
  • Introduction
  • TXAは線溶系の阻害剤として知られており、様々な外科的手術の際に使用される。THAにおけるTXAの投与は周術期の出血量を減らすという報告がある。これらの報告はTXAの静脈内投与である。TXAの投与方法についてはいまだ議論の余地がある。
  • 静脈内投与されたTXAのほんの数%が局所に到達して同部の線溶系を抑制し、血栓を安定化させることは一般的なコンセンサスが得られている。TXAの投与では手術時の出血のみならずHiddenBloodLossも減少することが知られている。TXAの投与における安全域、すなわち静脈血栓、肺塞栓を起こさないような濃度については近年関心が高まっている。またTXAの適切な投与方法についても検討が必要である。
  • TXAの関節内直接投与(局所投与)についても近年報告が見られるようになってきた。局所投与は静脈内投与に比較して投与が容易である。またその効果も静脈内投与と同等であったとする報告もある。局所投与は静脈内投与よりも全身への影響が少なく、関節の腫脹、創部の治癒、リハビリにも好影響を与えたとする報告もある。
  • 本研究の目的は無作為割付試験にてTHAにおけるTXAの同時投与と、静脈内単独投与の効果について比較検討することである
  • 方法
  • 後方アプローチ。2人の術者。
  • 同時投与群は皮切5分前に15mgのTXAを静脈内に投与。臼蓋を掘削した時点でTXA200mg/20mlの生食を投与。続いて大腿骨を掘削した時点でTXA200mg/20mlの生食を投与。最後に筋膜を縫合する前にTXA600mg/60mlの生食を関節内に投与。
  • 静脈内投与群は皮切5分前に15mgTXAを静脈内に投与。同時投与群と同じタイミングで同量の生食を局所に投与した。
  • プラセボ群は同量の生食を同じタイミングで静脈内投与。同時投与群と同じタイミングで同量の生食を局所に投与した。
  • 術後2時間ドレーンをクランプ。その後開放。術後の評価はブラインドされた第三者によって行なわれた。
  • 輸血は中国の健康省のプロトコールにしたがって行なわれた。このプロトコールではHbは7.0g/dl以下、何かしらの全身症状または精神症状をきたしている場合に輸血が行なわれた。
  • 静脈血栓の予防としてはフットポンプと低分子ヘパリンの投与が術後8時間から24時間まで行なわれた。退院後は15日間のリクシアナの投与が行われた。
  • DVTのスクリーニングは術後3日目に全患者において超音波での検査が行われた。術後6ヶ月の時点で深部静脈血栓症が疑われる患者では超音波、CT、静脈造影が行なわれた。
  • プライマリーアウトカムの測定は、全出血量、屁もぐろぐん、ヘマトクリット、血小板濃度の変化。術後3日目にドレーンの量、出血量、周術期の輸液量、総輸血量を調査した。総出血量はGrossの測定法を用いた。
  • セカンダリーアウトカムとしてはDVT、肺塞栓の有無。ハリスヒップスコアを測定した。
  • 結果
  • 182名の患者をリクルート。32名の患者が除外された。
  • 出血量
  • 同時投与群が最もHbの低下、Htの低下が少なかった。3500ml以上の輸液が行なわれていた。
  • 輸血量
  • 同時投与群が最も輸血量が少なかった。
  • セカンダリーアウトカム
  • 入院期間は3群で全く差がなかった。術後のHHSも3群で差がなかった。
  • 術後合併症は5例でDVTを発症、2例で術中骨折を発症、1例で感染を認めた。DVTは2例で同時投与群、2例で静脈投与群、1例でプラセボ群で認めた。肺塞栓はどの群でも認めなかった。
  • 考察
  • TXAの使用が有益であることは多数の論文で報告されている。多くの論文で輸血量が減少したと報告されている。TXAの使用が有益であることがわかっていたが、本研究ではDVT、肺塞栓のリスクについても検討を行い、また局所のTXAの投与の有効性についても検討を行った。近年TXAの局所投与が全身投与と同程度の効果があるとの報告が散見される。その作用機序としては線溶系の直接的な阻害が考えられている。局所投与は全身投与に比べて投与が容易であり、TXAの濃度を高く保つことが出来、また関節の腫脹を減少させることができるという報告がある。TXAの関節内での半減期は2−3時間と言われている。局所のTXAの投与についてその効果ははっきりとしなかった。
  • TXAの全身投与では深部静脈血栓症、肺塞栓を含めた副作用が生じることが懸念されている。
  • これらの報告を踏まえて、本研究では統計学的にもしっかりと計画をされたTXAの無作為割り付け試験を計画した。
  • その結果として局所に1gのTXAを投与し、15mg/Kgの静脈内投与を併用することで出血量、輸血量を減少させることを示した。
  • 本研究で臼蓋側、大腿骨側、皮下への局所投与を併用する方法は有効であることを示した。
  • 皮切5分前でのTXAの全身投与は生物学的半減期から考えても有効な方法であるとかんがえられる。
  • 表5にTHAに関してのTXAの文献を示す。本研究の様な同時投与は今まで報告がなかった。
  • 本研究にはいくつかのLimitationがある。まずフォローが短期間であるということである。ただ、TXAの半減期が短いことを考えればこの短期間のフォローで充分であったものと考える。また便部静脈血栓症の検査でエコーのみで行っているが、この方法では症状のない深部静脈血栓症を見逃している可能性がある。また術後PT、PTINRの測定を行っていない。ひょっとしたら術後のPT、PTINRの変化が出血量に影響を及ぼしたかもしれない。最後に本研究のサンプルサイズが小さいため、DVT、肺塞栓の検出には充分でなかった可能性がある。
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2016年6月4日土曜日

20160604 CORR Will My Tibial Fracture Heal? Predicting Nonunion at the Time of Definitive Fixation Based on Commonly Available Variables



本研究の結果は上図のとおりです。

以下本文
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  • 抄録
  • 脛骨骨幹部骨折の偽関節を正確に予想することは難しかった。今回そのスコアリングづくりを行った。
  • 2007-2014年の患者を対象。35編の論文をreviewして危険因子を抽出。カルテから脛骨骨幹部骨折が治癒したのか偽関節となったのかを調査。髄内釘で治療された382例の脛骨骨幹部骨折の患者を対象とした。56例が偽関節、326例が治癒した。単変量、多変量解析を行い、各独立変数について検討。Odd比2以上。P<0 .05="" span="">
  • 多変量解析の結果、7つの要素が採択された。それらを用いてNURDスコア(偽関節スコア)を用いた。NURDスコアでフラップを必要とした場合が5点、4点がコンパートメント症候群の発生、3点が慢性の状態、2点が開放骨折、1点が男性またはASAが低いことであった。低エネルギー外傷、螺旋状の骨折であることはリスクを下げた。NURDスコアに沿うと、0-5点では2%した偽関節にならないのに比較し、6-8点では22%、9-11点では42%、12点以上で61%となった。
  • NURDモデルを作成した。実際に当てはまるかを今後前向き研究で実際の症例に当てはめて行う。
  • 背景
  • 脛骨骨幹部骨折はアメリカで1000人中2人から10000人中2人程度起こる外傷である。その偽関節率は5-15%と報告されている。偽関節になると多くの医療コストを必要とする。
  • 今まで幾つかのリスクが提唱されてきたもののその重み付けは行なわれてこなかった。
  • 対象
  • アメリカのLevel1外傷センターの患者。2007-2014の985例の患者を対象。18歳以下の患者は除外。
  • フォローは最短9ヶ月。(この時点で336例の患者を除外)。足関節固定を行った14例、早期の下腿切断を行った12例、人工関節周囲骨折の3例、疲労骨折の1例、病的骨折の3例を除外。違う病院で治療をされた4例、脛骨天蓋骨折を含んだ78例、膝の骨折を含んだ25例も除外した。妊娠中の2例、カルテが紛失した3例、手術治療を行なわなかった1例も除外。
  • 偽関節の可能性が高いと判断して3ヶ月以内に再手術を行った61例も除外。
  • 適合した382例について検討。うち56例が偽関節。326例が癒合。
  • 偽関節の定義は様々である。今回は手術治療を行なわないと治癒が得られなかったものと定義した。
  • 骨癒合についてはRdiographic Union Scoreを用いてRUSTが10点以上でああれば骨癒合であるとした。
  • 結果は添付した画像の通り
  • 考察
  • 脛骨骨幹部骨折の偽関節の可能性が予測できることは臨床家にとって価値があることである。
  • 今までのモデルでは脛骨の大きな欠損を含んで検討されることが多かったため、その検討が困難であった。大きな骨欠損がもっとも偽関節に大きく関わるためである。手術の時には皮質がそれぞれ合うようにしないといけない。
  • 本研究でGapを除くことでNURDスコアという術後予測モデルを作成することが出来た。
  • 本研究のLimitationは後ろ向き研究であるということである。331例という多くの患者のフォローアップができていない。ただ、この基準に当てはまる患者ではこのスコアは有効である。この施設はレベル1トラウマセンターで、患者は比較的若く、高エネルギー外傷の患者が多く、高齢、低エネルギー外傷の患者が少なかった。また治療がリーミング併用髄内釘のみである。これも本研究のLimitationである。本研究は前向きに検証されなければならない。また偽関節の定義が曖昧なのも問題である。
  • Bhandariは皮質の接触部位が50%以下、開放骨折、横骨折が偽関節のリスクファクターであるとした。ただ、彼らの研究の問題点はGapを含む症例が多い事である。骨欠損は偽関節の要素として大きなウエイトをしめすぎる。
  • Fongらは皮質の接触が25%以下で偽関節のリスクが高くなると報告している。皮質の接触もまた重要な因子である。
  • Audigeらはリーミングした場合とノンリーミングの場合も含んでを検討を行った。ノンリーミングと創外固定では偽関節が多かったと報告している。本研究ではこれらは除外している。
  • いずれの研究もFractureGapが偽関節の大きなウエイトをしめている。
  • Lackらは早期の外来受診時に偽関節となるかどうかのスコアリングを作成している。www.schocknurd.orgを参照されたい。
  • 開放骨折のGustily3C が偽関節のリスクとならなかったが、これはGustilo3Cの患者数が少なかったからだろう。
  • 今後このスコアの正しさを検証するための前向きの検討が必要である。

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多数の重症患者での脛骨骨幹部骨折を対象に偽関節のリスクについての検討を行いました。
いくつかの注意事項として、筆者らが本文中に書いてあるように除外例が多いこと、施設の偏りが大きいことがあげられるので、これが明日からの日本での治療にそのまま応用できるわけではないということです。
また、筆者らが考察でも述べているように、骨折のギャップが偽関節の有無に直結しているところは有ります。
ですので、実臨床ではまず骨折のギャップを作らないように丁寧に手術をする。ということが必要なのでしょう。