2009年11月30日月曜日

2009.11.30 JBJS(Am) Nov. 2009. Patellar Resurfacing Compared with Nonresurfacing in Total Knee Arthroplasty

要旨
TKAのときに膝蓋骨まで置換するかどうかということは議論の余地がある。本研究では以前の研究の長期フォローを行った。86例、118膝。primaryのTKA。これを膝蓋骨置換群と非置換群とに分けた。調査項目はKnee
society score,膝蓋大腿関節に特化した41個の質問票、患者満足度、全体、前方の膝関節疼痛スコア。レントゲン評価、合併症と再置換の頻度について調べた。
57症例、78膝については10年以上のフォローが可能であった。
結果二つの群でROM,knee society
score,患者満足度、膝の前方の痛み、膝全体の痛みの点で差を認めなかった。再置換に関しては膝蓋骨置換群で9%、非置換群で12%であった。膝蓋大腿関節の問題で再置換を行ったのは膝蓋骨置換群で2例(3%)であったのに対し、非置換群で7例(12%)であった。
結論としては膝蓋骨は置換しても置換しなくても大きな変わりはない。

図1 ランダム化のフローチャート
図2 使用したtibia component
図3 使用したfemoral component
図4 使用したpatella component

表1 すべての臨床的評価において有意差なし

考察
非置換群で膝蓋大腿関節の痛みのために再置換を行った7例はすべて初回術後5年以内に行われ、うち6例は2から4年以内に行われた。対して置換群では5-7年後に2例が再置換された。どうしても私たちはフォローしている最中に膝前面の痛みがあるとそれが膝蓋大腿関節が原因であると考えてしまいがちである。対照的に置換してあり、臨床所見に乏しくレントゲン写真上も正常であれば膝前面の痛みがそこから来ている可能性を患者に対して示唆することはほとんどない。そうすると必然的にそのような患者は長期間にわたって経過観察することとなる。そしてこれらの患者さんでは膝蓋骨の無腐性壊死やゆるみ、骨折、断片の先鋭化などが認められ、これらの合併症は非置換群では認められなかった。加えて少なくとも5度の大腿コンポーネントと脛骨コンポーネントの回旋異常があると膝前面の痛みと関連し、また膝蓋骨の傾きや亜脱臼のようなレントゲンに写らない異常をきたす。
有意な差を出すには母集団が小さいこと、フォローが完全でなかったことなどがこの研究の問題点である。
結局結果は似たり寄ったりなので、膝蓋骨は置換しても置換しなくてもどちらでもよいと思う。ただ自分達は変えていこうと思う。

≪論評≫
膝蓋骨の置換は施設によってやったりやらなかったりを経験してきたので、”差がない”という結論は一応納得がいくような気がする。100例以上でNが少ないといわれてしまったことにはびっくりであった。術者の好みで決めてよいということであろうが別の報告もみてみたいところである。
また、この論文は文中に”ハリケーンカトリーヌのせいでデータがなくなった”なんていう言い訳もしていて少し面白味がある。(笑)

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