2009年12月14日月曜日

2009.12.14 JBJS(Am) Dec. 2009 Reduction of Acute Anterior Dislocations: A Prospective Randomized Study Comparing a New Technique with the Hippocratic

要旨
背景
肩関節脱臼の整復方法にはいろいろな方法が報告されているが、それぞれの方法についてその難しさ、再現性、安全性を評価した報告はない。結局のところどの方法を選択するかということについて客観的な指標には欠ける。われわれは”FARES”となづけた新しい肩関節の脱臼整復方法についてHippocratic法とKocher法とその効果、安全性、施術中に患者が感じる痛みについて調査を行った。
方法
2006年から2008年までに173例の肩関節前方脱臼をきたした患者に対してこの研究は行われた。(骨折例も含む。)154例がすべての参加基準を満たした。来た患者をHippocratic法、Kocher法、FARES法の3つの方法のうち一つをランダムに割りつけた。1年目、もしくは2年目の整形外科研修医が整復を行い、術中の痛みをVASスケールで聴取した。
結果
年齢、男女比、受傷機転、整復までの時間が同等となった。整復の成功率はFARES法で88.7%、Hippocratic法で72.5%、Kocher法で68%であった。有意にFARES法が成功率が高かった。整復されるまでの時間はFARES法が有意に短かった。(FARES2.36分、Hippocratic法5.55分、Kocher法4.32分)。痛みについてのVASも有意にFARES法で低かった。(1.57:4.88:5.44)。合併症はいずれの群でも認めなかった。
考察
FARES法は従来の方法よりも素早く行うことができ、痛みもなく効果的な方法であると言える。一人でも容易に行うことができる。骨折を伴った例にも用いることができ、有用である。

表1 患者背景。ほとんど3群に差はない。

図1 今回の研究のフローチャート。

図2、図3、図4、図5 FARES法の実際
施術者は患者のわきに立ち、患者の手を両手で握る。肘は伸展位で前腕は中間位を保つ。次にゆっくりと長軸方向に牽引を加えながら愛護的に外転位にもってゆく。この時休みなく2から3秒くらいのサイクルで5センチ以下の動きで前後方向にかるーくゆするようにするとよい。
90度まで外転出来たら前腕を回旋させる。(愛護的に)この時も前後方向の揺れを続けることが重要である。
120度までこの状態で外転できるとたいていそこで整復される。
整復されたところで腕を内旋位にして愛護的に胸の上まで持ってゆく。

表2 各群の成績。FARES法が最も有用である。

考察
肩関節前方脱臼はさまざまな整復の方法が報告されている。今回われわれが報告したFARES法は前後方向への振動を加えながら長軸方向の牽引を加える手技のことである。Milch法とよく似ている点もあるが、対向牽引をかけない点と外旋させながら外転させるのか、われわれが報告したように90度までまわしてから外旋させるのかといった違いがある。前後方向にゆらしを加えるのもリラックスさせるために重要な技法である。
さまざまな方法が整復に有用であると報告されており、Kocher法は90%の成功率があるとする報告もある。しかしながら私たちの研究では68%に過ぎなかった。ほかにも肩甲骨移動法や過外旋法などがあり、いずれも鎮静下では有用であるとされている。しかしいずれの方法も対象数が少なく、またランダム化比較試験ではない。ランダム化された試験としてはKocher法とMilch法を比較し、Kocher法がわずかに優れているとする報告のみである。そのなかでもFARES法は出色の成績である。
この方法はまた鎮静する必要がないので経験のない術者でも可能である。
しっかりランダム化されているが盲検下での試験ではないことがこの研究の限界である。また関節の弛緩性についての評価も行っていない。それでも十分価値のある研究である。
FARES法は肩関節前方脱臼の整復方法として有用な手技のひとつである。

≪論評≫
自分自身は”zeroーposition”法で特に苦も無くはめていますので、まあ、術者の好みでいいのではないかと思いますが。一度試してみてもよいかもしれません。
ヒポクラテス法、kocher法はyoutbeにUPされていますがまだこの方法はUPされていません。
どなたか肩脱臼した患者さんにお願いしてやって動画をUPしてください。

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