2009年12月3日木曜日

2009.12.3 JBJS(Am) Nov.2009 Surgical Site Signing and “Time Out”:Issues of Compliance or Complacence

Background:

 自発的な皮膚へのマーキングprotocolによる効果は限定的で、手術部位の取り違えは未だcommonな問題として残っている。本研究ではJCAHO(病院認定合同委員会)の“time out”protocolの制定前後で、ある医療圏における救急および非救急患者に対する、site-signingと“time out”のコンプライアンスに関して整形外科医を調査した。

Methods:

 1つ目の研究は2006年に行われ、3か月以上の期間において48回の手術で執刀医または執刀するレジデントのイニシャルがドレーピングされた手術部位にあるかどうか記録した。2つ目の研究は翌年に行われ、231のランダムに選択された手術について同様に評価されるとともに、新たに採用された“time out”作業の履行についても行った。

Results:

 1つ目の研究では、術野をドレーピングした後、イニシャルは救急症例では67%で見られ、待機的手術では90%で見られた。2つ目の研究では、イニシャルは救急症例では61%で見られ、待機的手術では83%で見られた。“Time out”は70%の症例で皮膚切開前に行われ、皮膚切開後は19%、全く行われなかったのは11%であった。

Conclusions:

 全ての手術で術前に皮膚にサインすることと“time out”protocolの意義を整形外科医は認識すべきである。我々はこの二つの方法のコンプライアンスが100%になるように執刀医が努力することを勧める。
Discussion

 Bernsteinは手術部位の取り違えは「ほぼ間違いなく執刀医が最も恐れる失敗」とした。このため、このhuman errorを減少させるか完全になくすシステムを用いれば、患者の安全性は著明に改善する。様々な整形外科機関がskin-signing protocolを勧めており、たとえば1994年Canadian Orthopaedic Associationの“あなたのイニシャルを通して手術”の取り組み、1997年American Academy of Orthopaedic Surgeonsの“あなたの部位にサインを”の取り組みが手術部位取り違えの危険を最小限にするtoolとして勧められたが、広く普及はしなかった。Fureyらは2001年カナダの整形外科医をランダムに抽出し、聞き取り調査を行った。回答者の60%は術前の皮膚切開部のマーキングは病院のやり方でないと述べている。52%の執刀医は皮膚切開部のマーキングをいつも行い、25%は全くしたことがない。

我々はマーキングがうまくいかなかった要因、患者プライバシーの欠如など、を同定しようと試みた。我々の研究では、39例でドレーピングした後見えなくなってしまっていた。そのうち26%は股関節であった。しかし、21%は膝で、23%は下肢の他の部位で容易に受け入れることが出来る場所であった。

 2つの研究での重要な特徴は、執刀医は待機手術も緊急手術も同じ手技で行っており、サインも同様に行うことが期待されていた。しかし、四肢へサインした割合は待機手術で84-90%であったのに対して、緊急手術では61-67%であった。この違いは(1)splintがあると手術部位を同定したと仮定してしまう(その場所が正しかろうが間違っていようが)、また正しいサインへの物理的バリアともなっている、(2)救急処置の準備において術前にマークするのは執刀医やレジデントであるとは限らず、“チーム”の誰かが行うかもしれない。

研究1と2で皮膚へのサインをした割合は、待機手術、緊急手術ともほとんど違いはなかった。研究間のインターバルで執刀医のサインする手技に変化がなかった事を示している。

まとめると、1つの医療圏の4つの病院でのデータを用いて“sign your site”、“time out”の方策の受け入れが完全でないことがわかった。全てのケースで皮膚へのサインが行われていたのは70%。“Time out”では、執刀医チームにより手術部位を正しく照合することなしに手術を行ったのが23%であった。ミスを避ける確認するためのメカニズムを採用することで患者の安全性は向上する。四肢へのサインと“time out”は手術部位取り間違えのない理想に近づくことのできる方法であり、両方の方法を用いることをお勧めする。

≪論評≫
日本でもタイムアウトや手術部位サインを行うところは増えてきていると思う。しかし、タイムアウトのタイミングが適当だったり、消毒している間にサインが消えてしまったりといったminor troubleはよく起こっていると思う。そういったトラブルへの対処方法を考えて、新しく提唱できるようになるとより安全な手術が提供できるのかも。

1 件のコメント:

  1. お邪魔します。ついったでお世話になってます。phantomです。
    オペ前日に、お腹の真ん中にマジックで線を引かれる気持ちを考えると、正直なところマーキングに疑問もあります。あちこちで、おっぱいのマーキングを見せなければならなくなる女性の気持ちはどうでしょう。とはいえ、左右を間違えるわけには行かず、私は、患側の手の甲に「右乳」とか書いてます。awakeだから許される範囲と主張してます。これが救急なら、何も考えずに、お腹のど真ん中にappendectomyとか、M-perforateとやります。
    なんでもかんでも、其処に線を書けばいいというのは、いかがなものかという立場です。
    gami先生はどうお考えでしょうか。

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