2009年10月29日木曜日

救急医学会に参加して

DVTの話。
D-dimerは陰性的中率しか当てにならない。というのは自分にとっては新しい知見であった。
カットオフ値をいくつにしようとも、その値のトレンドをおってみてもd-dimerがVTEの診断には寄与しない。
診断には超音波がゴールドスタンダード。
CT(造影)の場合にはDVT用のプロトコールで慎重に追う必要がある。
外傷で止血が必要な時に抗血栓をどこまで行うかは議論の残るところ。
治療は全体にヘパリンなどで行われている模様。アリクストラとかはやはり整形外科の方が積極的に用いているのであろう。

救急システムの話
それぞれの病院ごと、地域ごとによって医者の数、システムなどが違うのでなかなかかみ合った議論にならない。
病院が担当する救急医療は3次で、それ以外は1次、2次医療機関でというのはどの救急の先生でも強く主張したいところであろう。
全くの私見であるが患者は自分が重症かどうかは分からず受診する。(コンビニ受診は論外であるが。)
そこで医療側の1次、2次、3次という分け方はあまりにも勝手な分け方のような気がする。
まあ、そんな理想をかなえようとすれば救命センターを集中して、救急の医者をたくさん作って、患者は受診するたびに今の3から5倍くらいの金額を払うというようにしなければ成り立たないけども。
医師会との連携で乗り切ろうという病院が多かった。
2次医療機関はもっとしっかりしろと。大きなお世話だ。

小児外傷
常に虐待を念頭に置く。
児童相談所への通達は義務。通報だけであれば別に患者、患者の親には知られないのでむしろ積極的に通告すべきと。
小児頭部外傷、嘔吐、健忘、意識障害があれば頭蓋内病変を疑う。これがなければ心配はいらない。
骨折の発表をしたが会場からの反応はなし。
重症な外傷でないといけなかったのだろう。テーマ設定のミス。

股関節学会に参加するので一日だけの出席。
ぜひぜひ外傷のセッションを聞きたかったのだが。。。。

2009年10月26日月曜日

Fracture of the base of the first metacarpal in children. Ann Hand surg 1999

要旨
小児の母指CM関節の骨折の不安定性を定義するために10カ月以上のフォローが可能であった30例についてreviewを行った。30度以上の転位、1mm以上の転位がある症例、開放骨折も含んだ。3つのグループに分けて検討を行った。グループAは純粋なCM関節での骨折(14例、10例手術、4例ギプス固定)。ブループB
Salterの2型。内側の骨片が外れている者。(10例、1例がピンニング、9例がギプス固定)。グループC、Salter2型。外側の骨片が外れているタイプ。(6例、2例ピンニング、4例ギプス固定).
二次的な早期転位の有無について調査した。グループBでは1例も転位が認められなかった。対照的にグループAとCでは半分に転位が認められた。そこでグループBはギプス固定でよいがグループAとCは早期のピンニングの方が好ましいと思われた。

図1 骨折の転位の分類
図2 グループAの骨折。基部での純粋な骨折
図3 内側に骨片が残っているタイプの骨折。
図4 外側に骨片が残っているタイプの骨折。

表1 治療方法の選択。17例について最初は救急外来で非観血的に整復し、thumb-spicaで固定した。ピンニングはIselin法を用い母指と示指をつなぐようにピンニングし、固定する。この方法が13例に行われた。ギプス固定は4-5週必要であった。

表2 転位の程度 ピンニングが13例でピンニング後の転位は0例であった。保存治療を行った群17例ではグループA,Cの半数が転位した。
長期フォローの結果では転位があっても完全な可動域に回復している。

考察
小児のCM関節近傍の骨折に対する報告はほとんどない。あっても手の外科全体での一部としての報告か、目録の中だけである。Leopardによれば手の外科全体の20%位にその外傷が存在するとなっている。20%しか手術が必要とならなかったということも同時に述べている。われわれの報告でもこのことについてはほぼ同様の結論であった。
整復を行うかどうかの基準は30度以下の転位、1mm程度の短縮は許容されるとされているのでそれを基準としている。どうしても解剖学的整復は困難である。関節自体が3次元の動きができるためそれほど大きな機能障害を残さない。加えてリモデリングが起こるし、そのリモデリングは成長軟骨の近いところで起こりやすいのでより許容される。それでもその整復には時間的な制約がある。大体2年くらいで自然な矯正がおこる。加えてこの部分の骨端線の閉鎖は女子で14.5歳、男子で16歳で起こる。
今回の分類はオブライエンの分類に従った。今回いわゆる小児のベネット骨折というものは除いた。これはSalter分類の3型を含むこととなり、いくつかの報告で観血的治療が必要であると述べられているからだ。
また成人で行われるピンニングが有用でないとする報告もある。
この研究は早期の二次的な転位についてその危険性について調べた。グループAだと骨折部が不安定であることもおおいことと内側の骨片がないことから不安定である。グループBは内側に骨片があることで安定し、ギプス固定だけでよかったのであろう。グループCは外側の骨片が残っており、内側の靱帯が破たんしているためギプスで指の間を固定するだけでは安定性は得られない。
骨折の固定に使うピンニングはiselinの方法を用いる。クロスピンニングでは成長軟骨を通過するため二次的に関節固定や矯正骨切りが必要となる可能性が出てくる。図6に手術の経過を示す。
すべてでopenにした症例はなかった。

結論
小児のCM関節近傍骨折での分類方法について示し、その分類ごとの治療方法を示した。内側の骨片が残っていると安定するのでギプス固定で、それ以外はピンニングがよい。


≪論評≫
小児のCM関節近傍の骨折についての小さなレビューである。内側の骨片がそれほど大きな役目を果たしているとは思わなかった。30度までのの変形が許容されるという部分についても驚きである。

2009年10月19日月曜日

JBJS 2009 October Patients with wrist fractures are less likely to be evaluated and managed for osteoporosis

要旨
背景 トウ骨遠位端骨折は高齢者の脆弱性骨折として評価、治療がなされているが脊椎の骨折を伴わない患者において骨粗鬆の治療を始める重要な機会であることが逸しているということがいくつかの報告で言われている。今回の目的はトウ骨遠位端骨折の治療を行った術者が骨粗しょう症の治療を行ったかということについて調査を行った
方法 2007年の韓国の国の調査に基づいて行った。この調査は国民の97%を網羅している。股関節、脊椎、手関節の骨折を起こした50歳以上の女性に行われたBMDのチェックと骨粗しょう症の治療について評価を行った。
結果 31540人の股関節骨折と58291人の脊椎骨折と61234人の手関節骨折が2007年に認められた。股関節骨折患者の22.5%、脊椎骨折患者の28.8%、手関節骨折患者の8.7%がBMDをチェックされていた。股関節患者の22.4%、脊椎骨折の30.1%、手関節骨折患者の7.5%が骨粗しょう症の治療を受けていた。
考察 骨粗しょう症患者における脆弱性骨折の割合が増えているということが知られているということにもかかわらず、手関節骨折の患者では股関節骨折、脊椎骨折の患者にくらべ骨粗しょう症の診断、治療が行われている割合が低かった。このギャップを埋めるために更なる調査が必要である。また術者は責任をもって骨粗しょう症の治療を行わなければならない。

表1 ICD-10を用いた患者抽出
表2 2007年に脆弱性骨折を受傷した人数とBMDを測った数と骨粗しょう症の治療を行った数。手関節骨折は8.7%、7.5%と有意に少ない。

考察
今回の研究では50歳以上の韓国人女性は脊椎骨折、股関節骨折を受傷した患者に比べて明らかに骨粗しょう症の診断、治療を受けている割合が少ないということが判った。韓国では家庭医ではなく手術をした整形外科医が術後のフォローを行う。すなわちトウ骨遠位端骨折の治療を行った整形外科医が骨折後に骨粗しょう症の検査、治療を行っていないことがわかる。しかしながらトウ骨遠位端骨折をした人が今後骨折を起こす可能性は全く骨折をしていない人に比べ2-4倍といわれている。その上トウ骨遠位端骨折を受傷した患者は脊椎骨折、股関節骨折を起こす患者よりも年齢が低く、2度目の骨折を起こす前にその予防を行う機会を逸している。多くの整形外科医に骨粗しょう症の治療を行うよう提言しなければならないというのがわれわれの意見である。確かに薬剤投与が必要でない患者も含まれている可能性があるがハイリスク患者を見逃していいというわけではない。
確かに、脊椎骨折を起こしていない患者の骨粗しょう症治療は適切に行われていないということがよく言われている。2.8%の検査、22.9%の治療しか受けていないということを報告している人もいる。レビューによると15%以下しか骨粗しょう症の検査、治療を受けていない。
このギャップがある理由は不明である。骨粗しょう症に対する理解のなさ、術者と家庭医との連携不足などが今までの報告では言われてきたが韓国では術者とフォローする人間が一緒であるので連携不足ということはない。むしろ韓国では家庭医が不足しているため骨粗しょう症の診断と治療を行わない理由が一つ減る。保険の提供者からの情報提供が不十分なことも原因であろう。トウ骨遠位端骨折を起こした人は今までそのような骨折歴がなくまた検査も受けていないと推測される。トウ骨遠位端骨折を起こした患者の半数が自分の骨は正常であると考えており、骨粗しょう症であると考えている人は20%に過ぎなかった。これらの情報を治療する側、治療される側に提供する必要がある。トウ骨遠位端骨折を治療する人間には骨粗しょう症が国民的問題であり、その治療方法について研修を受けてもらったほうがいいのかもしれない。
脆弱性骨折を治療した術者は骨粗しょう症の治療を行う責任がある。

論評
日本は韓国と同様術者がフォローすることが多いお国柄なので、日本でも同様の問題が起こっている可能性はあると思われる。日本でも導入されたDPCの適切な調査によるこのような疫学的調査はおこなわれるべきであろう。(臨床医に無駄なDPC入力の時間を使わせているのであればそれくらいは調べていただきたい)。
骨粗鬆症の治療はなおざりになっているところがあるので実際に骨折の治療に当たる若手の医師への啓蒙は必要であろう。

2009年10月15日木曜日

2009.10.14 Up to date Dietary therapy for obesity

背景
肥満、体重増加に対する管理としては食事療法、運動、行動変容などがある。加えて薬物療法、外科手術まである。太っていることが問題であるということを教えることがあらゆる治療の始まりとなる。(10/17ページ)

体重減少の目標
現在の体重の5-7%を減少するのが現実的な目標である。
・最初の目標は体重を増やさないようにすること。(せいぜい5%以内の増加にとどめる)
・臨床家の目標は患者の現実的な目標を設定してあげること。多くの患者は30%以上の減少をゴールに設定するがそれは現実的には行き過ぎである。
・5%以上の体重減少に導けたらそのプログラムは成功したということになる。5%体重を減らせば脂質異常症、高血圧、DM、心疾患イベントを減少させるとが出来るからだ。体重が減った患者では58%も耐糖能異常が改善したという報告がある。
・5-7%の体重減少は医学的には有効であるが患者の納得は得られない。
・BMIは25までこれば最低リスク群になる。

食事のエネルギー
体重減少の割合
体重が減るかどうかはとったエネルギーと必要としているエネルギーとの間に乖離があるということである。ちょっとしか食べなければ体重が減少する。しかしながら体重の減少の予想は難しい。これは個々のいうことの聞き具合とエネルギーの消費量の違いからくる。食事の記録をさせてもたいてい不正確である。体重が普通の人に書かせると10%減らして書いてくるし、太った人に書かせると30%くらいは食べたものを書いてこない。しかもエネルギーの必要量は飽きっぽさや性別、年齢、などに左右される
・男性のほうが基礎代謝量が多いため同じ体重の女性よりはやせやすい。
・年をとるとやせにくくなる。10歳ごとに2%ずつ消費率は下がっていく。
・遺伝的な素因も重要。双子ちゃんで見てみると3倍は違う

おおよそ22kcal/日が正常な大人で必要な量である。ということは100kgの女性であれば2200kcalが必要である。そこで平均500kcal/日とすれば週に500グラムずつ減る。

図2(12/17ページ)に正式な必要エネルギーの表がある。デスクワークのひとは消費エネルギーが少ない。

体重減少の管理
体重が減少すると必要なエネルギー量も減っていくので減った体重を保つことはなかなか難しい。しかも食事療法をして体重を減らすと胃から出るグレリン量が上昇するため食欲が増してそのままの体重を保つのがまた難しくなる。

食事の種類
デスクワークをしている人が太るのは余分なカロリーを取っているから。最低800kcal以上で以下のような食事療法を行いましょう
・量をコントロールするかカロリーの低い食事
・低脂肪食
・低炭水化物
・テレビでやっているような気まぐれダイエット(これは別の項で述べる)

バランスの取れた低カロリー食
この方法は必要なエネルギーを食事からとる。加えてたんぱく質、炭水化物、脂肪酸の適切な量の摂取が望ましい。アルコール、清涼飲料水、甘いお菓子は必要以上のエネルギーとなるためよしておいたほうがいい。
たんぱく質が減ると体重が減少する。食べ過ぎると75%が脂肪になる。25%は筋肉のほうに行く。体重が減ったときその5%は筋肉量の減少である。

量を調節した食事
一つ一つパッケージに入ってきてそれを水に溶かしたりだのして食べるダイエット。
この筆者達は朝ごはんとしてこういうものを食べることを進めている。昼ごはんはこのパッケージを食べるかして夕ご飯にはこれに野菜つけたものを食べる。こうすると一日1000-1500kcalくらいになるのでいいですよ。一番早く目標の体重に達するとの報告がある。

低脂肪ダイエット
飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸がたくさん入っている食事を取ることはデブになるだけでなく心血管リスクの増大、癌になりやすくなったりだとかいろいろ悪いことばかりである。ということで低脂肪ダイエットは理にかなっている。普段の食事でとる油の量を全体の30%以下にするようにする。こうすることで大体3kgは余分に体重が落ちる。
低炭水化物療法を提唱するものもいるがまあ、それほどでもない。
大研究が行われこの方法は有用であることがわかっている

低脂肪ダイエットには”Fat food”を減らすことからはじめる。口の中で解けるものはすべて脂肪の塊であると認識すること。もうひとつは脂肪量を計算することである。1gの脂肪は9.4kcalである。カロリー計算よりも脂肪量を計算するようにする。カロリー全体の脂肪を30%以下にするようにする。一日にとっていい脂肪の量は50gまで!!

低炭水化物療法
短期的に体重を落とす方法として有用である。一日にとる炭水化物の量を0-60g(普通は130gくらい)にする。低炭水化物療法はDMとか心血管病変を持っている人には有効な方法である。GI(Glycemic
index)を減らすようになる
ただしこの方法をとるときには脂肪と蛋白を上手に取らないといけない。

高たんぱく療法
高たんぱく療法は体重の管理を改善する。しかしこの方法をとるとカルシウムがおしっこで蛋白と一緒に出て行ってしまう。腎結石にもなる。

超低カロリー療法
一日に200-800kcalしか食べない方法。一日200kcal以下では断食となってしまう。最も早く体重が減っていく。しかしながらこの方法は長期間追跡するとほかの方法よりも優れているということがない。低血圧、低血糖になって蛋白も減っていくので手術をするとか何か特別な目的がない限りはこの方法を用いてはいけない

比較
低脂肪法と低炭水化物法のどちらが優れているかは今後も議論が必要である。
・体重減少について
低炭水化物療法群のほうが短期的には減少したが長期的に観ると有意差なし。(15/17ページ)
その他さまざまな文献あり
ということで患者さんの状態に合わせてあげて長期的に体重減少させてあげることが必要かもしれない。
・脂質
低炭水化物療法でHDLが増えた。しかしLDLも増えたのでどちらが有用化は不明である。
・副作用
対炭水化物療法でケトーシスまで起こした患者がいるので注意が必要。

カウンセリングの効能
カウンセリングを受けると短期間の体重減少には有効である。少し説明するだけでも有効であるとする報告があるが脱落者が多いのも特徴である。

長寿とカロリー制限
カロリー制限が寿命にどういう影響を与えるのかは不明である。むやみな摂取カロリー制限はDNAに損傷を与えるとの報告もある。


まずは食事療法から。まず食べているものの把握。そのうえで患者さんと離していかねばと思った。

2009年10月5日月曜日

JBJS(Am).2009 October. Patients with wrist fractures are less likely to be evaluated and managed for osteoporosis

背景 トウ骨遠位端骨折は高齢者の脆弱性骨折として評価、治療がなされているが脊椎の骨折を伴わない患者において骨粗鬆の治療を始める重要な機会であることが逸しているということがいくつかの報告で言われている。今回の目的はトウ骨遠位端骨折の治療を行った術者が骨粗しょう症の治療を行ったかということについて調査を行った
方法 2007年の韓国の国の調査に基づいて行った。この調査は国民の97%を網羅している。股関節、脊椎、手関節の骨折を起こした50歳以上の女性に行われたBMDのチェックと骨粗しょう症の治療について評価を行った。
結果 31540人の股関節骨折と58291人の脊椎骨折と61234人の手関節骨折が2007年に認められた。股関節骨折患者の22.5%、脊椎骨折患者の28.8%、手関節骨折患者の8.7%がBMDをチェックされていた。股関節患者の22.4%、脊椎骨折の30.1%、手関節骨折患者の7.5%が骨粗しょう症の治療を受けていた。
考察 骨粗しょう症患者における脆弱性骨折の割合が増えているということが知られているということにもかかわらず、手関節骨折の患者では股関節骨折、脊椎骨折の患者にくらべ骨粗しょう症の診断、治療が行われている割合が低かった。このギャップを埋めるために更なる調査が必要である。また術者は責任をもって骨粗しょう症の治療を行わなければならない。

表1 ICD-10を用いた患者抽出
表2 2007年に脆弱性骨折を受傷した人数とBMDを測った数と骨粗しょう症の治療を行った数。手関節骨折は8.7%、7.5%と有意に少ない。

考察
今回の研究では50歳以上の韓国人女性は脊椎骨折、股関節骨折を受傷した患者に比べて明らかに骨粗しょう症の診断、治療を受けている割合が少ないということが判った。韓国では家庭医ではなく手術をした整形外科医が術後のフォローを行う。すなわちトウ骨遠位端骨折の治療を行った整形外科医が骨折後に骨粗しょう症の検査、治療を行っていないことがわかる。しかしながらトウ骨遠位端骨折をした人が今後骨折を起こす可能性は全く骨折をしていない人に比べ2-4倍といわれている。その上トウ骨遠位端骨折を受傷した患者は脊椎骨折、股関節骨折を起こす患者よりも年齢が低く、2度目の骨折を起こす前にその予防を行う機会を逸している。多くの整形外科医に骨粗しょう症の治療を行うよう提言しなければならないというのがわれわれの意見である。確かに薬剤投与が必要でない患者も含まれている可能性があるがハイリスク患者を見逃していいというわけではない。
確かに、脊椎骨折を起こしていない患者の骨粗しょう症治療は適切に行われていないということがよく言われている。2.8%の検査、22.9%の治療しか受けていないということを報告している人もいる。レビューによると15%以下しか骨粗しょう症の検査、治療を受けていない。
このギャップがある理由は不明である。骨粗しょう症に対する理解のなさ、術者と家庭医との連携不足などが今までの報告では言われてきたが韓国では術者とフォローする人間が一緒であるので連携不足ということはない。むしろ勧告では家庭医が不足しているため骨粗しょう症の診断と治療を行わない理由が一つ減る。保険の提供者からの情報提供が不十分なことも原因であろう。トウ骨遠位端骨折を起こした人は今までそのような骨折歴がなくまた検査も受けていないと推測される。トウ骨遠位端骨折を起こした患者の半数が自分の骨は正常であると考えており、骨粗しょう症であると考えている人は20%に過ぎなかった。これらの上方を治療する側、治療される側に提供する必要がある。トウ骨遠位端骨折を治療する人間には骨粗しょう症が国民的問題であり、その治療方法について研修を受けてもらったほうがいいのかもしれない。
脆弱性骨折を治療した術者は骨粗しょう症の治療を行う責任がある。

論評
日本でも術者が術後のフォローは受け持つ。また、以前、家庭医にまかせるよりも整形外科の専門医がフォローしたほうが骨粗鬆症の治療がうまくいくとの報告がJBJSにあった。(たぶん2008年)どうしても忙しい外来の中骨粗鬆症の説明を加え、治療を開始するというのは相当の強い気持ちがないといけない。ぜい弱性骨折の棋王があるとFRAXで試しに計算してみると約2倍に危険率が上がる。骨粗鬆症の認識を上げるとこから始めていかなければならない。

2009年10月3日土曜日

国保学会に出席して

10/2-10/3 国保学会に出席してきました。

医師だけでなく、看護士、理学療法士など多職種の出席があり、また同じような悩みを抱えている病院が多く、楽しく参加することができました。

プログラムの組み方にはもう少し配慮の余地があるのではないかと思いました。

1日目 ランチョンセミナー
地域とともに行う高知県の地域医療教育。高知大学の地域医療学講座で診療所などに実習に出かけるという内容でした。地方は最近の傾向として地域医療枠を重視して、その学生たちに対する教育として行っているようです。
内容がテレビで放映されたとのことでDVDもらいました。また、そのDVDを鑑賞し、検討したいと思います。話されている内容は総論的でいろいろな所に出かけることで学生のモチベーションが上がりますよというお話でした。

藤沢病院のDr.のお話
住民との対話を通じて作る地域医療。とのお題。当院で行っている地域懇談会とそれほど大きく内容が異なるわけではないが、できる限り疾患についてだとかそういう各論的な話ではなく、ポジティブな話題を中心として話し合うというところが少し違うようです。
病院の形態はどうあるべきかとか、そういう話も積極的にしているようです。

国保直診とその役割といった話のパネルディスカッション
やはり藤沢病院の佐藤先生のお話が心に残りました。”免許の人と選挙のひとの間にある壁を越えよう”という表題から秀逸です。
お互いにプライドが高く、藤沢でもなかなか交流が進まないが、住民を間に置くことによってその二つの間を取り持つことができるというお話でした。
住民と医療機関(免許の人)との間の話はナイトスクール、住民懇談会などで行っていくとのことでした。
住民の率直な意見を議員、首長と病院関係者とが同時に聞くことが重要であるとのこと。
住民懇談会で研修医の研修報告会を行うことで住民から研修医も認めてもらうようにするというのには驚きでした。

2日目は研修医教育のWG,ポスターセッションに出席しました。
何を教えるかということが重要で、これはまだ試行錯誤の状態が続いています。
地域そのもの、介護保険、慢性期のいりょうなどさまざまな内容を多岐にわたって短い期間で教えなければなりません。
また、座学だけではなく実践することでその研修が実り多いものになったという感想が多く研修医から聞かれたそうです。
そこで今後東栄病院で行えそうなことについて以下に列挙してみます。思い付きですのでいろんな意見を入れて熟成できたらと思います。
キーワードは病院でできないことの提供。
・研修医からのフィードバックをより的確に反映。研修医のやりたいこと、やれることを把握し、週単位、日単位で研修内容の見直しを図る。外来見学に興味があればそちらを重点的にやっていけばよいし、介護に興味があればそちらのほうにも首を突っ込んでいただくと。
・ナース、包括、介護職から研修医へ講義を行う。講義内容は未定ですが普段何を考えて看護、介護にあたっているのか、医師はどういうポイントを見てほしいのかということを講義してもらえたらと思います。
・介護体験実習 私は無理です。しかしよその病院では結構評判の良い実習のうちのひとつであったそうです。研修医と相談しやってみたいというのであればやらせてあげてもと思います。
・介護のシステムについてのブリーフィング。これは私が今月中に資料をまとめておきたいと思います。
・社会資源を多く使っている患者さんに寄り添って一日を過ごす。
・往診はやはり楽しいらしい。
・リハビリの現場を見せる。

いまの急性期病院から来る研修医は退院させるまでは見れると思います。なので退院した後、病院以外にいる住民とのかかわりということをテーマとして研修に臨んでもらえればと思います。

私の発表はつつがなく終わりました。
よその先生に質問したら険悪なムードになったので今後注意します。

貴重な機会をいただきありがとうございました。
できれば前泊を認めてください。