2010年4月29日木曜日

2010.4.29 JBJS(Am) A Comparison of the Long Gamma Nail with the Sliding Hip Screw for the Treatment of AO/OTA 31-A2 Fractures of the

要旨
AOの31-A2タイプの大腿骨転子部骨折に対しての治療は、髄外型のインプラントを用いるべきか髄内型のインプラントを持ち言えるべきかという議論がある。CHSとγネイルを前向きに無作為割付してその結果について調査を行った。
方法
210人の大腿骨転子部骨折の患者を無作為にCHSとγネイルの2群に割付した。primary outcomeは再手術とし、secondary
outcomeは死亡率、入院期間、輸血の必要性の有無、活動性と住居の変化、Euroqolを用いたQOL評価を行った。
結果
2群の間に有意な差は認められなかった。(再手術:γネイル3例、CHS2例)。Tip-Apexの距離がカットアウトと関連しているようであった。死亡率、QOLを含めいずれのsecondary
outcomeでも有意な差は認められなかった。
結論
CHSはγネイルと比較して、そのインプラント費用が低価格であることからAO31-A2タイプの大腿骨転子部骨折に対してゴールドスタンダードに用いられる機種であるといえる。

図1:割付のアルゴリズム。最終フォローはそれぞれ65%、85%
表1:患者の活動性のスコアリングについて
表2:患者背景
表3:結果:γネイルで30日以内の死亡例が20%!輸血は全体の半分に行われている

考察
AO-31A2:大腿骨小転子まで含むような転子部骨折に対しての治療はいまだに議論の残るところである。
この数年大腿骨転子部骨折に対して髄内釘がよく用いられるようになってきているがこれは科学的な根拠のあるものではなく、メーカーの思惑だとか、術者の好みの変遷だとか、患者側の要因とは関連の無いところで決めているような風潮がある。髄内釘の使用は1999年に3%であったものが2006年には69%にまでなっている。
髄内釘がたのインプラント特有の術中合併症や、あとはインプラントの価格の問題がある。CHSは髄内釘よりも1500ドルは安いのである。
2008年のCochrane libraryではCHS型のほうが髄内釘型の機種よりもそのインプラントに伴う合併症は少ないというとことを明らかにしている。
ロングネイルを使うことで短いネイルを使っていたときのような術中骨折を防ぐことはより容易になったのではないかと考える。
いくつかの統計学上の問題は存在するものの、結論として機能評価上の問題が無ければより安いデバイスを用いるべきであろう。

<論評>
僕自身は安定型骨折にはCHS,小転子が含まれているような不安定な骨折と診断したときにはγネイルを用いています。
この研究はRCT、レベル1となっていますが、フォロー率が65%という異常な低さが気になります。また本文中でもありましたが術後早期死亡例が20%と高く、どんな手術をなさっていたのか気になります。(苦笑) なのでこの論文を読んだからといって僕自身の手術方針の決定が変わることはないと思います。
この筆者はコストを述べていらっしゃいますが、コストを述べるのであれば単一機種でなく、複数の機種をおくことでの病院の在庫調整にかかるコストなども計算に入れるべきでしょうね。
まあ、あなたの選んだインプラントは患者さんのことを考えて選んでいますか?という、ひとつの警鐘として受け止めるべき論文でしょう。

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