2011年5月23日月曜日

JBJ(Am) ACL reconstruction w/ ST provided similar stabiity and knee function and problems w/ kneeling compared w/ BTB

Anterior cruciate ligerment reconstruction with semitendinousus graft provided similar stability and knee function and fewer problems with kneeling compared with the bone-patellar tendon-bone graft

Question
前十字靭帯の再建で半腱様筋(ST)と骨付き膝蓋腱(BTB)のどちらを使ったほうがQOLの向上に寄与しているのか。

Patient
二つの病院での結果。164人の患者を無作為に割付。2年間の経過観察

Intervention
ACLをBTBとSTでそれぞれ再建。

Major Outcome
膝の機能評価のスコアをいくつか使用した。
(Lysholm score, Tegner activity score, International Knee documentation committee score, )

Main result
8年のフォロー。膝を付くこと、膝蓋大腿部の疼痛、膝をついて歩くこと、感覚障害の有無の点に関してSTとBTBで有意な差が生じた。いずれもST群の方が優れていた。
その他の結果では差が認められなかった。

Conclusion
8年間のフォローの結果、ST、BTBのいずれもその安定性には差は認められなかった。感覚障害、膝をつくといった動作でわずかにBTBの方が障害を生じた。

<論評>
僕自身もACL再建しているので興味深く読みました。僕自身はSTで再建していますが、特に困ったと言う経験をしたことはないですね。
ただACLの場合には僕の場合にはレクリエーションレベルでのスポーツ復帰でしたが、より高いレベルを求めるような場合には強固な固定、早期復帰を目指してBTBと言う選択もあるのかもしれません。
STを採取するとバレエ、体操選手では脚のラインが美しくなくなるというのはほんとでしょうか?

2011年5月22日日曜日

JBJS(Am) Combined treatment with Corticosteroid injection plus Exercise and Manual therapy was similar to exercise and manual therapy alone .....

Combined treatment w/ Corticosteroid injection+Exercise and Manual therapy was similar to exercise and manual therapy Alone for shoulder pain at 12 wks

Question
肩のインピンジメント症候群の患者に対してステロイド注射を行って、運動療法を処方した方がよいのか、運動療法だけで経過を見てよいのか

Patient
40歳以上(平均年齢)232人の患者。セッティングとしてはプライマリーケア(診療所またはクリニック通院)程度。痛みの程度は中から重度の疼痛があり、肩関節の関節包パターンでない拘縮を認める。外旋は25%程度に制限されており、Neer、Hawkins徴候は陽性。

Intervention
レダコート®とキシロカインを混ぜたものを肩峰下に注射してから運動療法を行った群と、運動療法のみとを行った群とに分けた。

主要アウトカム
Shoulder pain and disability Index (SPADI)を用いて12週後に評価を行った。
付随アウトカム
肩関節可動域

結果
1~6週までは有意に注射群の方が改善が得られたが、12週の段階では有意な差がなかった。

考察
インピンジメント症候群の患者では注射をしてもしなくても12週の段階では運動療法群と有意な差はない。

<論評>
”evidence-based orthopaedics”シリーズ第二弾です。
短期間での改善はステロイド投与群で得られていますけど。。と思ってしまいました。表題に引っ張られてい舞いましたねえ。
この原文はBMJからきているようですが、24週の時点でも20%弱の患者さんが問題を抱えていて、72%の患者さんが改善しているにも関わらず治療を継続していたとの記載があったとコメント欄に書いてあります。

原因としては、肩の痛みを診断することのむずかしさが根底にあるのではないかと考えました。
インピンジメントだけではなく、関節包の拘縮、腱板損傷、関節炎なども肩関節の痛みの原因となりうります。なので一概に”リハビリだけしていればよいよ”というのはあまりにも乱暴な結論ではないでしょうか。

以前どこかのSystematic reviewで肩関節の痛み(原因は問わない)にヒアルロン酸の関節注射を6カ月継続するとよくなったとするものがありましたので、そちらの方が実際の臨床の現場に近いのではという印象を持ちました。

運動療法を否定するつもりはありませんが、エビデンスでがんじがらめにされずに患者さんの症状に応じて適切な手段を講じることができる、というのがよき臨床医であると思いました。

JBJS(Am) A Splint was not inferior to a cast for distal radial fracture in children

Question 
小児の橈骨遠位端の若木骨折または横骨折の患者。ギプスによって治療するか、装具で治療するかで機能回復に差が出るかを調査した。

Patient
カナダの子供病院を受診した5-12歳までの小児100名。無作為割り付け試験。
多発外傷、先天性障害、成長軟骨に及ぶような症例を除外。92%のfollo-upを完遂。

Intervention
4週間プラスチック製の装具かまたはギプス固定にて経過観察。その後2週間追加で骨折部に負担のかかるような日常生活動作を制限。

Main outcome
Active scales for Kids(ASK)を用いて主要アウトカムを測定。付随するアウトカムとして転位の残存、VAS、手関節の可動域、握力を測定した。

Result
Intention to treat が行われた。二群に有意な差は認められなかった。付随するアウトカムでも違いは認められなかった。

Conclusion
ほとんど転位のない小児の橈骨遠位端骨折であれば装具による治療もギプスと治療成績には差がない。

<論評>
JBJSの"Evidence-based orthopaedics"シリーズからの抜粋です。今月号には3本このEBMシリーズが載っているので紹介していきたいと思います。
最後のコメント欄にもありますが”ギプス治療でも良好な成績を収めている。この研究結果はプライマリーケア、または救急外来で単純な横骨折を見たときに装具で帰宅させたからといって悪くはないよ、ということを言っている”とありますが、その通りだと思います。
25度までの変形は許容したとありますが、日本の医療体制では許されない可能性があります。(日本は皆保険制度により専門医の受診が極めて容易なため)
ギプスを嫌がる子に無理につけることはないよ、という程度の理解にしておいた方が妥当ではないか、というのが私の意見です。

2011年5月18日水曜日

20110518 JBJS(Am) Trends in the Management of Open Fractures. A Critical Analysis

推奨
・開放骨折の患者では感染のリスクを減少させるためにできるだけ早期に抗生剤の投与を行うべきである。
・開放骨折の患者はできるだけ早期に手術室で治療を開始されたほうがよい。 患者の状態、オペ室の準備などあらゆる状況が斟酌された上で治療にあたるべきである。
・創部の洗浄に関しては洗う溶媒、方法については未だに検討中である。
・早期の創閉鎖、適切なデブリードマンが予後を改善する。
・rhBMP2のような補助療法が開放骨折の治癒を促進するかもしれない。(コレは先日否定された。)




<論評>
2007年の時点でのJBJSでのまとめです。
今回読んだ論文では局所へのrhBMP-2の投与は有効でないと言うことが示されていました。

開放骨折は適切な施設へ送られ、そこで緊急の手術が行われるべき。と言う事で、やはり外傷センターのような存在は必要であるとしみじみと感じます。
小さな病院で経験に基づいてなんとかやる。というのは良くないなあというのは僕の意見です。

2011年5月17日火曜日

20100518 JBJS(Br) Epidemiology and outcome of fracture of the hip in women aged 65 years and under

6782例の大腿骨頚部骨折のデータのウチ、65歳以下の327骨折(うち315例が女性)について前向きコホートで調査を行った。対象として65歳以上の4810骨折(4542例が女性)を対照として研究を行った。
45歳を頂点とした骨折の著明な増加が認められた。これは骨粗鬆症のスクリーニングが開始される50歳よりも若い年齢であった。若年者での大腿骨頚部骨折の原因としては基礎疾患があることが多かった。大腿骨頚部骨折をきたした女性の死亡率は同年代と比較して46倍であった。喫煙歴の存在は若年での大腿骨頚部骨折のリスクと強固に関連していた。
ラグスクリューを用いた固定が最もおおおく行われていた。一般的な周術期合併症の合生は少なかった。再手術としてはセメント人工骨頭を行った。転位のある大腿骨頚部骨折に対してラグスクリューで固定した場合、5年間再手術にならなかったのは71%に過ぎず、今後の手術方法については議論の余地があるものであった。

若年女性での大腿骨頚部骨折は稀な疾患である。高齢者とは違い、若年での大腿骨頚部骨折は社会経済学的な問題がより大きく生じる。大腿骨頚部骨折事態の数の増加が認められているが、これはベビーブーム世代の高齢化と関連している。
若年世代での骨折は転移性骨腫瘍によるものが多かった。高齢者ではあまり影響を与えないが、若年者では死亡率に大きな影響を与えた。若年者では高エネルギーでの受傷が多いと考えられていたが、今回我々の研究ではそのような症例はなく、すべて室内での転倒など軽微な外傷によるものであった。骨折の年齢分布は単峰性に増加するものであった。この分布は脛骨高原骨折、上腕骨近位端骨折が二峰性なのとは趣を異にした。このことは大腿骨頚部骨折は年齢に伴う骨粗鬆症の結果として軽度から中程度の外力で起こりうるものであるということが推察される。
より若い年代であつので一般的にはもっと高い活動性が予想されるのであるが、今回の症例の半分以上が室内での骨折であった。何かしらの社会的、精神的な問題があるのではないだろうか。
一般的に欧米での骨粗鬆症検診は50歳から行われているが、それよりも低い年齢で骨折が発症していた。。
また65歳以上の骨折を起こした分では明らかに喫煙歴があるものが多かった。また1/5の患者でアルコール依存が認められた。アルコールも大腿骨頚部骨折のリスクとなりうる。
ラグスクリューによるこていを行い、全身の合併症の発症率は低かった。転位した関節内骨折にも骨接合術を行った。今後治療方針については議論がなされるであろう。

<論評>
誰も手を付けなかった分野であるので、面白く拝見いたしました。
今後日本でも同じネタでやる価値はあるでしょう。
若くても骨折する人には何かしらのバックグラウンドがある。ということがよく分かりました。
70%の骨癒合が得られるのであれば最初に骨接合を選ぶというのは妥当な選択だと思うのですがいかがでしょうか。

2011年5月16日月曜日

20110515 J​BJS(Br) Th​e failure of survivorsh​ip

人工関節の耐用年数は再置換までの年月を用いて客観的に評価されることが多い。しかしインプラントの耐用年数だけを評価するのはあまり適切でなく、また感度に欠ける態度である。
なぜならば再置換に至る例は少なく、機種間での違いを明らかにしようとすれば多数の対象と長い年月でのフォローを必要とする。
15年間もてば人工関節としては成功である、とされるがその期間ずっと痛みがあるようであればとても成功した手術とは言えないのではないだろうか。
整形外科医が耐用年数だけの見方と、患者側からの見方(Patient reported outcome measures:PROM)というものは大きく異なっている。
PROMに従ったリサーチを行ってみるとTKRを行った患者の約10-30%、THAを行った患者の10-15%が絶え間ない痛みと機能制限に悩んでいることが分かった。
ある研究によればエンドポイントを再置換すかどうかというところにおくと、7年後の人工関節の生存率は98%であるが、第二のエンドポイントを疼痛としてみてみると75%までその率は低下した。
別の研究では人工関節の生存率は96.7%であったが、VASを用いた患者満足度は73.3%に過ぎなかった。
ほかの研究でも満足度は68%-80%にすぎないという報告がある。
PROM単独でも問題がある。データを集めることに多くの費用がかかったり人手を必要とする。またほかの様々な要因にも患者の見方は左右される。
Oxford hip scoreは術後の機能評価として用いられるが、それぞれの患者の環境などへの配慮はなされていない。
人工関節の耐用年数を調査していくことは今後も必要である。
ただし、単に人工関節のライナーを変えただけの手術か、人工関節全部を再置換したのかという違いはあるし、ある部分が別の部分に悪影響を及ぼしたのかもしれないということには留意が必要である。
非感染性のゆるみが生存率にカウントされるが、それ以前におこっている脱臼や感染といった悪い事象についても合わせてカウントしておく必要がある。
ジャーナルとしても今後は人工関節の生存率だけの報告は採用せず、加えてPROMに配慮した臨床研究を採用、公表していく予定である。

<論評>
journal of bone and joint surgery (British edition)の巻頭の一言です。
人工関節がどれが有用であるという時代は終わりを告げたので、次はこのような方針でやっていきますよという意思表示です。
こういうものをチェックしておかないと投稿してもrejectされ続けるということが起こりえますので、編集方針というものも常に確認しておく必要があると思います。

実際の生活が満足度にどれくらい影響を及ぼしているかということについて調べてみるというのも面白いかなと思いました。

2011年5月7日土曜日

20110508 JBJS(Am) Recombinant Human Bone Morphogenetic Protein-2: A Randomized Trial in Open Tibial Fractures Treated with Reamed Nail Fixation

背景
recocmbinant human bone monophogenetic protein-2(rhBMP-2)は、脛骨開放骨折に対するunreaming nailの時に高い治癒率を示した。今回reamingした髄内釘挿入術時にはどうかと言う事を調べた。
方法
無作為に、普通に軟部組織で覆う方法をとった群(SOC群)と吸収性のコラーゲンにrhBMP-2を吸収させたものをその治療に加えた群(rhBMP-2群)の二群に分けた。骨折の重症度に応じて層別化した。rhBMP-2を吸収させたスポンジは骨折部において創を閉鎖した。最終的に創が閉鎖できたところから13週、20週の時点でのX線上、臨床上での評価を行った。
結果
277例。intention-to-treatが行われた。全体の13%がGustilo3Bの骨折であった。rhBMP-2群とSOC群のそれぞれの治癒率は、13週の段階で60%と48%、20週の段階で68%と67%であった。それぞれの群の12%がなにかしらの再手術を必要とした。nailの入れ替えなどより大きな侵襲を必要としたのは、rhBMP-2群では30%、SOC群では57%(P値は0.12)であった。感染はそれぞれrhBMP-2群で19%、SOC群で11%認めた。有害事象全体でみると両群に差は認められなかった。
結論
reamingをもちいた髄内釘のとき、rhBMP-2をスポンジに含ませて骨折部に置く方法では骨折の治癒を促進させる、ということは認められなかった。


考察
rhBMP-2をスポンジに含ませて置く方法では明らかな臨床的な違いを認めることができなかった。術後早期ではrhBMP-2群が高い治癒率を示したものの、有意差を示すまでには至らなかった。喫煙をしている群、骨折がより重症な群で両群の違いはより認めにくかった。以前に行われたBESTT試験でもreamingした場合には違いがでなかったが、この時にはnの数が小さいため、と判断されていた。BESTT試験は1996年に行われているので、再手術の基準などは現在と違っている。
結論としてはreamingした髄内釘ではrhBMP-2の効果は認められないということである。
1996年よりも全体に感染率が下がっているということは現在行っている開放骨折の治療は以前よりも改善が得られているということだと考えられる。


<論評>
残念な結果でした。rhBMP-2は骨折を薬で治せるような時代の先駆けとなるのではと考えていましたが、あまりよい結果を残せなかったようです。

この論文では1996年よりも2001年の方が一般的な開放骨折の治療においても改善が得られている。としているところは注目すべき点だと思いました。
一度開放骨折の治療について再度まとめてみます。

2011年5月2日月曜日

20110501 Foreign Body Migration Along a Tendon Sheath in the Lower Extremity

7歳女児、カーペットの上に落ちていた爪楊枝を刺したということで救急外来を受診。大きな木片は除去されたものの、翌朝になって足部の腫脹とホ発赤が出現した。レントゲン写真では異常なく、抗生剤投与にても改善なく切開したところ10センチの爪楊枝の破片を摘出した。長母指屈筋腱の腱鞘内を貫通していた。

考察
この症例は下肢の腱鞘内を異物が貫通した、という世界で初めての症例である。上肢の腱鞘内を貫通したという症例は散見される。1983年のロシアの症例報告では前腕の筋にそって36センチも小さな金属片が混入したという報告や、30年前に混入したガラス片が屈筋腱の損傷を起こした
超音波でも受傷後2週間の時点では陰性であった。
非金属性の異物を検索するため手段については、MRIもしくは超音波によっての検索がよいとする報告がある。超音波であれば5mm以上の木片であれば93%の再現性をもって発見することができる。とする報告がある。所見としてはlow echoic areaにアコースティックシャドウをともなったような像としてみられる。
足部に混入した木片は長期間放置されることがある。腫瘍とまちがえられ切除された例も少なくない。この場合も超音波での診断が有用であった。


<論評>
ちょうど手で同じような症例を経験して、地方会にだそうかと思ったので調べてみました。
四肢での異物腫瘍(gossipiboma)じたいが珍しい、とただそれだけです。