2012年3月19日月曜日

20120319 JBJS(Am) Mortality and Morbidity in dialysis-dependent Pt undergoing spinal surgery:analysis of National Administrative database in Japan

このブログも199回目の投稿になりました。なんとか200回までは頑張りたいものですね。笑
引越、転勤でバタバタしておりますが今後も続けて参りますのでよろしくおねがいします。

普段外来やっていて困ることといえば、その患者さんの状態を評価しようと思っても手元にJOAスコアなどの表がないとなかなか調べきれないことです。
膝とか股関節は暗記しているのですけど、それ以外はぱっと出てこないです。
そのうちこのサイトのどこかにスマートフォン対応でチェックを入れるだけでその罹患部位特異性の高いスコアを表示して計算できるようなものも作りたいですね。

さて、表題のとおりです。
dialysis
抄録
透析中の患者における脊椎手術への影響は十分に知られているわけではない。本研究の目的は透析をしていると術中の危険性がどの程度かということを決定することと、破壊性脊椎関節症が存在するとより危険が増すか、という点について調査を行った。
方法
日本全国からのDPCデータの解析を行った。2007年から2008年までの間のデータを使用し、椎弓切除術、椎弓形成術、椎間板切除術、脊椎固定術を受けた患者について調査した。そしてサブグループ解析として破壊性脊椎関節症の有無についても調査した。
結果
51,648例についての調査を行った。うち869例が透析患者であった。この内の95名が破壊性脊椎関節症であった。
病院内死亡率は0.41%。透析群は非透析群よりも有意に死亡率が高かった。調整後で評価すると院内死亡率は非透析群の10倍となった。透析群は術後の合併症もまた有意に多かった。破壊性脊椎症がある患者では合併症発生率がない群に比べ65%高かったが、有意ではなかった。
結論
透析患者で脊椎手術を必要とする患者の術後院内死亡率は透析をしていない患者の10倍であった。また心血管イベント、敗血症、呼吸不全などの重大な合併症を多く起こす傾向にあった。また破壊性脊椎症の患者ではより高い確率で合併症が起こりうる。

考察
DPCデータを用いて、透析患者の脊椎手術についての調査を行った。以下の3点がわかったことである。
・透析患者は非透析患者に比べて術後院内死亡する確率が10倍である。
・透析患者は重大な術後合併症をおこす確率が高い。
・破壊性脊椎症がそんざいすると合併症を起こす確率が高くなる。
この研究の強みは、そのn数である。このような国レベルでの入院患者データベースは最近良く使われるようになってきている。
50000人規模での調査は透析患者に於ける研究の中で最大のものである。実際にどの程度合併症が起こっているかを調べるためにこの研究は行われた。
この研究で脊椎手術での院内死亡率は0.41%であった。これは頚椎術後の死亡率が0.57%、側弯症術後が0.3%、椎弓切除術後が0.17%である。
この研究ではまた破壊性脊椎症が存在する場合についても述べている。破壊性脊椎症の患者は全体の10.9%であった。破壊性脊椎症は長期間の透析の結果として生じる脊椎、椎間板、靭帯の脆弱化によって起こる。破壊性脊椎関節症がある患者ではその手術が大掛かりなものとなることが多い。Abumiらの報告でも固定術が必要がなることが多いと言われており、今回の研究も80%以上で固定術を必要とした。また、破壊性脊椎関節症の患者では手術時間の延長と麻酔時間の延長が認められた。神経学的予後にかんしては良好であるとAbumiらは述べているが、うち2例がフォロー中に死亡している。(16症例中)。破壊性脊椎関節症の患者では術後早期の死亡はそれほど珍しいことではない。この研究でもサブグループ解析をしたら術後合併症、死亡率は有意な差はなかったが高かった。
この研究はDPCデータによる研究なので、透析期間がどうなのか、神経学的にはどうだったのかということを評価することもできない。また入力ミスの可能性もありえる。入院期間が長いけれども、保険制度の違いだと思う。


【論評】
DPCデータを用いた大規模な検証結果です。なんとなく実感と一致するところがあります。
東大での研究ですけれども、田舎にいてDPCデータを持ってきて何かの研究がデキないかなんて考えてみました。厚労省のページを探してみたのですけど、欲しいデータがどこに有るかわかりません。。。。
そもそも僕のもってるPCでこんな大規模解析はムリでしょうけど。笑

あと同様の研究でやるとすれば透析患者の股関節、膝関節での同じような研究ですかね。

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