2013年12月18日水曜日

CORR Ceramic-on-Ceramic bearing decrease the cumulative long-term risk of dislocation

抄録
長期経過したTHAの脱臼には器械的インピンジメント、関節包のゆるみによる生物学的メカニズムに起因すると考えられているがはっきりしない。
セラミックオンセラミックTHAは摩耗、オステオライシスが少ないことで長期の脱臼リスクを減らす可能性がある
本研究の目的は第一にセラミックオンセラミックとセラミックオンポリエチレンの累積脱臼率を比較すること。第二に患者側の要因(年齢、性別、疾患)が脱臼に影響するか、第三に機械的要因(コンポーネントの設置位置、クリープ現象、摩耗による骨頭中心の変化)。第四にセラミックオンセラミックとセラミックオンポリエチレン間生物学的要因(関節包の厚さ、手術時の関節液の除去量、組織学的検査)について調査することである。
方法 169252関節。セメントインプラント両側THA(セラミックオンセラミック反対側はセラミックオンポリエチレン)
27年間にわたる累積脱臼率(初期脱臼率、反復脱臼)について集計した。カプのポジション、クリープ量、摩耗量、関節包の厚さを再置換時に測定した。
結果
セラミックオンポリエチレンとセラミックオンセラミックの間では脱臼率に差を認めた。(セラミックオンポリエチレン31例、セラミックオンセラミック4例)。長期経過の脱臼率はセラミックオンセラミックは1例も無く、セラミックオンポリエチレンは28例であった。大腿骨頭壊死、年齢、性別が脱臼と関連していた。コンポーネントの丸ポジションは2種類のベアリングの間で差を認めなかった。関節包の厚さはセラミックオンポリエチレンで薄く、セラミックオンセラミックの方が厚かった。
結論
セラミックオンセラミックはセラミックオンポリエチレンに比較し累積脱臼率を低くした。


結果
1 セラミックオンセラミックとセラミックオンポリエチレンの比較
セラミックオンポリエチレン群では1ヶ月で1%、1年で2%であったが30年では13%まで上昇していた。セラミックオンセラミック群が30年経過で2%であることと比較すると有意に高い値であった。反復性の脱臼は有意にセラミックオンポリエチレンで多かった。累積発生率はセラミックオンセラミックが3.2%であるのに対してセラミックオンポリエチレン群では25%と有意に高かった。セラミックオンポリエチレンの5例はコンストレインカップで再置換された。セラミックオンセラミックは1例のみが反復性脱臼となったが、脱臼を原因とした再置換例はなかった。早期の脱臼例は前方、後方両方に認められたが後期の脱臼は後方にしか認めなかった。
2 患者側の要因を示す。アルコール性で有ることは脱臼の危険因子であった。高齢患者ででは脳血管病変、神経疾患があることが特に女性ではセラミックオンポリエチレンでは高いリスクファクターとなり得た。
3 カップの設置については脱臼に影響を与えなかった。カップの外方開角、前方開角はセラミックオンセラミックとセラミックオンポリエチレンの2群で違いを認めなかった。脱臼した群としていない群の間でのクリープ量は差がなかった。
4 再置換が必要となった例での関節包の厚さ、関節液、組織学的所見の比較。セラミックオンポリエチレンとセラミックオンセラミックについて。
関節包はセラミックオンセラミックが厚かった。関節液の量はセラミックオンポリエチレンの方が量が多かった。デブリスと巨細胞はセラミックオンポリエチレンに認めた。脱臼がない例ではセラミックのデブリスをセラミックオンセラミックで認めた。

<論評>
長期にわたる価値ある研究だと思います。
30年前のポリエチレンですので現在のクロスリンクとは大きく異なりますが、セラミック(アルミナ)の優秀性を示した論文です。
セラミックは破損、スクイーキングなどの問題さえクリアできればよい摺動面だと思います。
自分がメインのオペレーターになったときに何を使うかは悩むなあ。


2013年12月2日月曜日

20131202 股関節学会に参加して

20131129−30
日本股関節学会 @広島

広島で行われてきた股関節学会に参加してきました−。
関節系の学会はオッサンばかりでゲンナリしますが、股関節学会はPT,ナースの参加もあって会場が華やかになるので参加していてウキウキします。

股関節ステム挿入後の画像評価
今まで画像評価を行おうとするとハレーションの問題がありましたがZedHipのような画像処理ソフトの出現によってより精密なステムの挿入の評価が行えます。
3Dで評価が可能となったので、座標系をどうとるか。頚部軸?上前腸骨棘に並行?術者から見えている頚部はどの角度?といった問題がでています。
ナビゲーションを使えばこれらの問題は解決できるのでしょうが貧しい当院では無理でござる。。。。
当院でも出来そうだなと思ったのはFemoral Calcarの評価。小転子の内側に皮質様変化がCTで評価可能。現在花盛りのTaper Wedge Typeのセメントレスステムではその皮質様の変化が影響するということでした。
当院で未だに使用しているFit&FillTypeのステムでは確実に破壊していますが、術後の骨折例を検討することでFemoral Calcarの影響について検討できるのでは無いかと考えました。

変形性股関節症の保存療法。
テレビでも取り上げられて一躍話題のジグリング(貧乏揺すり体操)。
結論としてはたまたま貧乏ゆすりを指導したらよかったという事象を観察しているだけに過ぎず。画像で軟骨再生と演者がおっしゃっていましたが気のせいだと思います。
考察もPoorでscienceではないなと思います。ただ、保存療法のセッションは立ち見がでるほどの人出であったことから変形性股関節症に対しての保存療法の確立は必要であろう。今まで装具療法は全く考慮したことがなかったが今回の結果をみて若年者には考慮しても良いかもしれない。

JHEQを用いた評価
面白かったのは股関節鏡の患者ではメンタルがR^2で0.5を超えるほど関連しているという報告。
今までにない観点で報告ができる評価方法であると再認識。
骨切りのコホート。
年齢をマッチさせて骨切り群とTHA群での比較。
大腿骨頚部骨折、転子部骨折での比較。
変形性ひざ関節症、変形性脊椎症を有する患者での比較ができると面白そう。

2013年11月22日金曜日

20131122 Arthritis & Research & Therapy :A randomised controlled trial of selfmanagement education program for osteoarthritis of the knee delivered by health care professionals

抄録
本研究の目的は変形性ひざ関節症の患者が疾患特異的な自己管理プログラム(OAK)を導入することでその治療群がコントロール群と比べて臨床評価上の差が有るかを検討することである。
方法
変形性膝関節症の患者146人。リウマチのような炎症性疾患、重篤な合併症があるような例を除外。無作為割り付け法によりコントロール群とOAK群とに分けた。OAKは6週間の自己管理プログラムである。コントロール群は6ヶ月間待機したのちにOAKを開始した。開始後8週、6ヶ月の時点で評価。主要な評価ポイントはWOMACスコア、SF36、二次的なスコアとしてVASスケール、TUG,膝関節の花王行き、四頭筋、ハムストリングの筋力評価とした。治療反応性と臨床的に意味のある最小の治療評価点数差を検出した。
結果
OAKグループではVASスケールの値が有意に改善した。OAKグループでは6ヶ月間の間、WOMACの疼痛スコア、活動性スコア、SF36の身体機能、疼痛、活力、社会活動性の面で高かった。8週、6ヶ月の時点では評価項目全てでOAK群のほうがコントロール群より優っていた。
結論
OAK群では8週、6ヶ月の時点でWOMACスコア、SF36のいずれでもコントロール群よりも有意な改善を認めた。

Introduction
自己管理(Self management)は慢性疾患の患者に対してしばしば用いられる。
変形性膝関節症でも自己管理についての報告はいくつか有る。しかしあまり有効な結果を得ることはなかった。
自己達成感は自己管理の中でもっとも重要な部分を占める。元気がある人はよりよい自己評価を獲得することができる。
自己達成感に影響する因子としては問題解決能力、疼痛の管理、運動、社会生活、ゴールセッティングなどが挙げられる。
疼痛管理がもっとも重要で疼痛のために運動を差し控える患者は多い。
疼痛管理のための薬剤療法では副作用が問題となる。
今までの自己管理がうまくいかなかったので新たにOAKなる事故管理法を開発した。本研究ではOAKの効用について述べる。
一般に変形性関節症の患者では疼痛のため運動を制限することが多い。しかしながら運動をしないことは長期的に見ると機能障害の下忍となる。OAKプログラムでは変形性ひざ関節症の患者に対してアドバイスを与えながらスポーツをするように勧めている。
プログラムでは週ごとのゴールを作りそれを達成することで自己達成感が得られるようにしている。
OAKは運動教室ではなく個々の患者にとってどのように運動したらよいかということをアドバイスするような場である。
ナース、PT、OTなどが専門的なアドバイスを与えることで後ろ向きになるような気持ちを前向きに変えていく手助けをするのである。

OAKプログラム
表1を参照。週2.5時間のプログラム。6週間継続。12から15人くらいのグループで社会認知理論にしたがってゴール設定、問題解決、認知行動療法を行う。マニュアルにしたがってPT,ナース、OTらがアドバイスを時々与えるようにする。一般的な事柄だけでなく患者特有の問題にも配慮したアドバイスを与える。

図1 ランダム化の実際。
表2 組入基準と除外基準。
表3 患者背景
表4、表5、表6 結果

考察
健康の専門家介入による指導はOA患者の状態を改善することが本研究であ明らかとなった。
自己管理による患者の行動変容は患者の状態を改善する。OAKは患者の痛み、機能、QOLのすべての項目をより改善した。
OAKでは変形性膝関節症に対する運動療法について正しい情報を継続的に提供することによって患者の行動変容が起こせることをあきらかとした。
WOMAC、SF36とも疼痛の項目が改善されることで健康状態の改善が認められることがわかった。
OAKプログラムでは8週ではコントロール群よりも有意に改善したが、6ヶ月ではその差は有意ではなかった。このことは長期の管理には限界があることを示している。
疼痛にどのように対応するかということが問題となる。一般的な痛み止めを使って治療された変形性膝関節症の群ではその疼痛の改善率は9−10%という報告がある。OAKグループでは23%の患者で改善が認められた。コントロール群では7%でしかなかった。鎮痛薬と同時にOAKプログラムを用いるとよい。
対象が未治療群であることが問題となる。何もしてもらえないため自己評価が低くなる可能性がある。
身体機能はOAKグループでより向上した。コントロール群でも改善が認められた。このことは説明することが難しい。
筋力もOAKグループで改善した。
参加したのが比較的裕福な層だけであったことも問題となる。一般的な対象とした場合に問題となるのかもしれない。
結論
OAKは変形性膝関節症の患者の身体機能、QOLを改善した。OAKプログラムのコストなどについても計算する必要がある。 

2013年11月16日土曜日

20131116 名古屋股関節セミナー

こんにちは、管理人です。
本日午後からは名古屋股関節セミナーに参加しております。

SSI/VTE 名古屋整形外科北村先生
SSI 起こったとおもったら大げさに処置をすべき。
VTE
VTE いままで参照とされていたACCPガイドラインが今年に改訂。
第9版 ACCPガイドライン
症候性VTEを対象。10-14日の投与。低分子ヘパリン、アスピリンの投与。
今までめちゃめちゃ薬を使いなさいみたいな流れに一石を投じましたね。
SSIと診断した後の抗生剤投与は培養の結果が出るまでは菌血症、敗血症という状態でなければ僕は経験的投与をすべきで無いと思うのですけども。。

セメントTHAの実際 愛知医大 大塚先生
セメントTHAの実際。
一定した環境管理。インターロッキングをいかに獲得すべきか。

豊橋市民病院 山内先生 人工股関節の脱臼
スカートをつけるとオシュレーションアングルがどの骨頭にもかかわらず20度減る。
術中の要因が術者が唯一関与できることなので正しい位置にコンポーネントを設置するように心がける。

浜松医療センター 岩瀬先生 出血対策
自己血輸血の基礎。感染に注意して無菌操作を。
最近のトピック、EPO投与にても血栓のリスクは上がらない、術中創部へのトランサミンの投与によって出血量が減少する。

セメントをこうやって模擬骨で練習させていただけるというのはありがたいことです。

2013年11月11日月曜日

20131110  Topical (Intra-Articular) Tranexamic Acid Reduces Blood Loss and Transfusion Rates Following Total Hip Replacement A Randomized Controlled Trial (TRANX-H)

THA術後の関節内へのトランサミンの投与は術後出血量と輸血率を減少させる

背景
THAの術後1/3程度の患者が1から3単位の血液を必要とする。トランサミンは抗線溶剤でTHAの術後に点滴内から投与すると出血量が減少することが知られている。関節内に直接投与する方法は容易で出血源のそばでもっともその濃度が高くなる。トランサミンの全身での吸収を抑えることができるのではないかと考えた
方法
二重盲検割り付け法、161人の患者。片側のTHA。トランサミンを投与。主要評価項目は輸血率。第二の評価項目はドレーンからの出血、ヘモグロビン値の低下、QOL、入院期間、コストの評価、合併症とした。
結果
トランサミンは輸血率を32.1%から12.5%へと19.5%減少させた。出血量の減少は129ml、ヘモグロビンの低下値は0.84gdl。入院期間は1日、コストは305ポンド削減できた。QOLには差がなかった。
結論
トランサミンの関節内投与は出血量を減少させ、点滴から投与した場合の合併症を減らす可能性がある。

背景
出血は整形外科手術で避けて通れない。術後の貧血は機能を低下させ、入院期間の延長につながる。輸血は比較的安全な方法であるが溶血、感染、免疫不全、輸血関連肺損傷などの可能性もある。輸血後に術創の感染が増えたとスル報告も有る。
点滴からのトランサミンの投与は術野からの出血を減らすことが知られている。整形外科領域ではまだ投与は珍しい。メタアナライシスでは血栓症のリスクは高くならないと言われていても全身投与に伴う血栓症のリスクが避けられないと心配になる。
心臓血管外科の領域では術野に直接トランサミンを投与する方法が取られている。本研究の仮説はトランサミンを術野に直接ふりかけることで全身合併症を減らすことができるのではないかとするものである。本研究はTRANXと名づけて行われることとなった。
イギリスでは年間79000人の患者がTHAを受けている。13の患者が1から3単位の輸血を必要としている。TKAでのTRANX研究ではTKA術後に出血量の減少した。合併症は認めなかった。THAでは骨切りがTKA術後より多いためより少ないサンプルサイズで行うこととした。
TRANX-Hは二重盲検無作為割付試験である。血栓予防にはタイツとポンプを用い、BMI30以上の患者では低分子量ヘパリンを用いた。
結果
310人をエントリー。52人の患者はスタッフの不手際で除外。48人が研究への参加に同意しなかった。12人が表面置換術を行われたため除外。161人の患者を対象とした。
81人がプラセボ群、80人がトランサミン群。3例の患者がプロトコールから外れた、1例がどちらに割りつけされたかわからない。2例が麻酔科によって天敵からトランサミンを投与。Intention-to-treatにより術前の解析に含めた。
術前の背景で術前のヘモグロビン量がトランサミン群の方が高かった。
輸血はプラセボ群で32.1%、トランサミン群で12.5%に行われた。術前のヘモグロビン値が違っていたためロジスティック回帰分析を追加して術前のヘモグロビン値が輸血をするかどうかに与える影響を調査して解析の際に考慮した。
36例の患者が25単位の輸血をされた。トランサミン群のほうが有意にプラセボ群よりも輸血が少なかった。
出血量はプラセボ群が389ml、トランサミン群が260mlであった。平均出血量はプラセボ群で1981ml、トランサミン群で1617mlであった。
術後Hb値はトランサミン群のほうで高かった。
平均入院期間はプラセボ群が6.2日、トランサミン群が5.2日であった。OHSの値は変わらなかった。3ヶ月後のQOLにも差はなかった。
費用は出血の費用が133ポンド、入院が230ポンドなのに対し、トランサミンは2.2ポンドであった。合併症は計算に入れていない。
3に合併症の数を示している。合併症の数が少なく統計的な有意差を出すには至らなかった。
考察
TRANX-KTKA術後の出血量を合併症が増えること無く減らすことが出来た。THAでも同様の結果を得ることが出来た。
術前のHB値が高いことは輸血の有無に影響を与えたかもしれないが、投与量には影響を及ぼしていないはずである。
ドレーンからの出血がトランサミン群で少なかった。総出血量はGrossFomulaを用いて計算した。
メタアナライシスではトランサミンの投与によって出血量が減ることが示されている。しかしながらいずれもサンプルサイズが小さく50例以上での報告は本報告が2例目である。5編しか論文中で輸血の適応について明らかにしておらず、またQOLまでついて述べた論文は本報告が初めてである。点滴からのトランサミンの投与は輸血率を20%下げるが、関節内投与をした本研究でも同様の結果が得られた。
本研究の無作為割付は専門家集団に依頼し、適切なサンプルサイズの設計、患者上方の管理を行った。プラセボもわからなくなるように色をつけたりといった工夫も行っている。
長期予後については不明な点が本研究の短所である。現在トランサミンの基礎的研究を行っている。結論としてトランサミンの関節内投与は静脈投与と同等の効果を示した。

<論評>
トランサミンの投与が出血量を抑えることはTHAのみならず脊椎の世界でも言われておりました。本研究は術野に直接投与してみたとの報告です。
以前中部整災で同様の発表があったと思いますが、本研究はしっかりとデザインされた二重盲検無作為割付法ですのでぐうの音もでないほどケチがつけにくくなっております。
術前の検査でヘモグロビン値が違っておりましたが、統計の専門家にさらっと処理してもらっていますね。これは整形外科医だけでは出来ない仕事だと思います。
筆者らも述べているようにポリエチレンに対するトランサミンの影響がわからないことが気になります。基礎的研究の結果を待ちたいところです。
両側同時手術の場合どうか、片側に投与もしくは以前の両側同時手術との比較でも面白いと思います。
頚部骨折、転子部骨折で術野に直接投与してみてもよいかもしれませんね。



2013年10月21日月曜日

20131021 J Arthroplasty Sexual activity after Total hip arthroplasty: A motion capture study


THA術後に性生活を営む際に脱臼や関節の不安定性がどのようになっているかという研究は今まで報告されたことはない。特に体位と股関節可動域との報告は今までになかった。二人のボランティアに12種類の体位をとってもらってそれをモーションキャプチャーにて撮影。その上で股関節の可動域を計算。カップの設置位置の影響を考慮して9パターンのカップの設置位置を想定して計算を行った。12体位中4体位で女性側の股関節の屈曲が95度以上となり、9パターン中6パターンでのカップでのインピンジメントにつながった。前方の不安定性と関連した骨性の衝突が男性側の体位で1種類だけ出現した。本研究からTHA後の女性にとってある体位は脱臼、破損のリスクを高めることが明らかとなった。

変形性股関節症に伴う股関節痛が性行為を困難にすることが知られている。またTHA術後には性生活の満足度の向上、パフォーマンスの向上がみられることが知られている。ただし、THA術後に性行為を行った場合の危険性についての報告は未だない。
以前に行われた研究は患者、または術者が術前後の性行為の困難さ、性行為にいつから復帰するのか、安全な体位はなにかと言うことをアンケートによって回収したものであった。これらの報告では性行為中にTHAが脱臼した症例の報告や脱臼を心配して性行為に及ばない症例も有ることがあきらかとなった。DahmらはTHA後の安全な体位について推奨を出しているもののその推奨は筆者の個人的な考えであり、客観的なデータに基づいたものではない。
近年コンピュータシミュレーションによりTHAのコンポーネントの設置、インピンジメントなどを容易に予測できるようになった。しかしながらこれらのデータは単純な屈曲伸展のみで性行為中のデータまでを反映したものはない。どの体位がどの程度の股関節の可動域が必要かということは現在までに明らかとなっていない。
本研究の目的は実際にいくつかの体位をとることでその体位での股関節の可動域をモーションキャプチャーにて測定し、股関節のインピンジメント、不安定性が生じていないかをin-vivoで明らかにすることである。

対象と方法
二人の健康なボランティア。女性1名(31歳、180センチ69kg)、男性1名(26歳、180センチ80kg)。若年の男女を選定したのは、THA術後に若年の方が性行為に対して積極的であること、どの体位が危険かわからないためモーションキャプチャーを行う際に起こるトラブルを防止するために行った。
まずMRIにて股関節の形態について評価を行った。これは被曝を避けるためである。放射線科の専門医によって股関節の形態評価が行われた。
MRI撮像後にモーションキャプチャーの部屋に移動し、解剖学的指標にマーカーを装着。12種類のよく行われる体位をとってもらった。
この12種類の体位はLafosseDahmらが認定したものである。モーションキャプチャーは3回測定。図2はマーカーにそってMRIから抽出した3Dの骨を合わせたものである。
関節中心をコンピューターで調節した。

THAのシュミレーション
THAを受ける患者の股関節のCTCADにしてシュミレーションでカップを挿入。外方開角40,45,60度にぞれぞれ前方開角0,15,30度と設定してモーションキャプチャーで得られた股関節の角度を入力。
Fig4のようにネックとカップがインピンジすると赤くなる。こうすることで関節の不安定性、脱臼の危険性を表すことができる。

結果は表がいっぱい有りますが図6を参照。

考察
今までTHA後の性生活についての報告は全くなかったが、本研究は客観的なデータを用いた初めての報告である。本研究はin-vivoで行われた研究で、12種類の一般的な体位の股関節の可動域を測定した初めての報告である。臼蓋側コンポーネントにネックがインピンジすることが脱臼のリスクとなるが、女性側で4種類の体位が危険であることがわかった。男性側では股関節の伸展、外旋、内旋をとることで大転子の骨性の衝突がおこり脱臼のリスクが高くなることがわかった。これは男性側が恥骨をぶつけようとして股関節をむやみに伸展させすぎたことが考えられる。
Dahmらの研究では男性では5つの体位が、女性では3つの体位が許容されるとしており、Lafosseらは女性側があまり動かなくても良いようにしたほうがよく、男性側はそれほど気にしなくてもよいということを述べている。
本研究はそれらの結果を支持するものであった。
本研究の限界は参加者数が少ないこと、3Dデータの正確性がMRIの竹にやや劣ること、軟部組織の評価を行っていないことである。

まとめるとあらゆる体位は女性の方が過度な屈曲、外転、外旋といった股関節の可動域を必要とし、男性は股関節の伸展、外旋といった動きだけであった。THAの脱臼のリスクは女性の方に多く、このデータを患者さんに提供することが必要ではないかと考える。