2013年9月2日月曜日

20130902 JBJS (Am) Spinal anesthesia: Should everyone receive a urinary catheter? RCT,THA patients

脊椎麻酔後のTHAの患者で必ず尿道カテーテルが必要かどうかをRCTで調べた。
方法:一般的にTHAを脊椎麻酔後に行う場合には尿道カテーテルを挿入している。0.5%のマーカインで脊椎麻酔。従来治療群は術後48時間尿道カテーテル留置。実験群は尿閉の程度を測定、必要に応じて間欠的に導尿を行った。
結果:200人の患者を対象とした。尿閉、尿路感染、入院日数に有意差はなかった。術後48時間たったところで実験群で9人、従来治療群で3人が尿閉のため間欠的導尿を必要とした。尿路感染症は従来治療群で3人、実験群で認めなかった。
結論:THAの患者では尿閉のリスクは低いので尿道カテーテルの留置は必ずしも必要でない

尿閉は術後しばしば見られる合併症でTHAの患者でもありえる。尿閉の治療として尿道カテーテルを用いることがあるものの、尿道カテーテルの留置は感染症との関連も指摘されている。尿道カテーテルの留置は従来尿量の測定に用いられてきた。しかしながら留置することで神経因性膀胱をきたす患者もいる。
尿道カテーテル留置を行うメリットは術後の尿閉を避ける事ができることである。尿閉になると残尿がおこり感染につながる。カテーテル早期抜去によって尿閉がおこる率は0ー75%と言われておりよくわかっていない。現在、筆者らの施設ではカテーテル挿入を義務付けてはいない。カテーテル挿入による神経因性膀胱を避ける事が目的である。本研究の目的はカテーテルを留置したほうがよいのかどうかをRCTで調べることである。

考察
THA後にカテーテルを留置したほうがよいのかどうかということについて調べた論文はほとんどない。Knightらが行ったTHA、TKAの患者を対象とした論文では尿閉の発生率は35%となっている。Davisらは硬膜外麻酔よりも脊椎麻酔のほうが尿閉の発症が少ないと報告している。これらの方法はいずれも麻酔の方法が異なっており、交絡因子を除去するために今回はRCTを行うことで麻酔のプロトコールを一致させた。
本研究で重要な点はいくつか有り、術後の尿閉の発症率は今までに考えられていたのよりも低く、9.7%でしかなかったことである。
しかし、一方実験群と従来治療群との間では有意な差を認めなかった。しかし、その発症率には3倍の差があると考えることもできる。この研究からは尿道カテーテルを使わないと術後の尿閉の発症率が高くなるものの、1回導尿すればその問題を解決することができるといえる。
従来治療群で尿路感染症は起こりやすかった。尿路感染症は人工関節置換術後も重要な問題である。IDSAの報告では入院患者感染症の40%が尿路感染症であるとする報告をしている。カテーテルの留置を安易に考えるのは良くないということであろう。
RCTであるが幾つか問題があり、前立腺肥大の患者などは除外されている。IPSSのいう尿閉になりやすい人をスコアリングするシステムが有ることからそういったものを用いて判断する必要があった。モルヒネの投与を今回行っていないものの、モルヒネの投与で尿閉が多くなることも知られているので今後そういった研究も必要であろう。

<論評>
ペンシルベニアはトマス・ジェファソン病院からのご報告。
考察で”3倍も差があるやないか!”とおっしゃっておりますが、有意差が出なかったということはその3倍という数字は偶然かもしれません。あくまでも”差があるかどうか分からなかった”と記述すべきですわな。
カテーテル留置の害はよくいわれているところでこのように間欠的導尿をおこなったほうが良いのかもしれませんが、尿がたまっているかの確認をして導尿をそのたびに行うのであれば尿道カテーテルをいれたままでも早期離床して早く抜けるようにしてあげたほうが良いのではないかと思いました。この研究だけみてカテーテルなしにするのはあまりに早計。
なにかガイドラインであたらしくこうしたいとか、保険上の問題とかゴニョゴニョしたべつの力が働いているような気もいたします。


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