2013年9月11日水曜日

20130909 BJJ Femoral head deformity and severity of acetabular dysplasia of the hip


臼蓋形成不全の患者では将来の変形性関節症の予防に寛骨臼骨切り術が行われる。いくつかの研究で大腿骨頭の形態異常が将来の予後に影響をおよぼすことが示されている。本研究では112例、224関節の臼蓋形成不全と初期関節症の患者について調査を行った。103例が女性、9例が男性。平均年齢は37.6歳。(18歳から49歳)。201例に臼蓋形成不全を認めた。23例は臼蓋形成不全がなかった。臼蓋形成不全群ではCE角とAHIが有意に小さかった。acetabular angle、acetabular roof angleは臼蓋形成不全群のほうが正常群よりも大きかった。骨頭の円形度とその他のパラメータはすべて有意に相関した。骨頭の形態は臼蓋形成不全の重症度に影響されている可能性がある。

introduction
日本では一次性の変形性股関節症の発生は少なく、ほとんどが臼蓋形成不全に伴う続発性の変形性股関節症である。臼蓋形成不全に伴う変形はアメリカの患者よりも多く(46%対4.5%)イギリスの患者よりもより重症の臼蓋形成不全の患者が多い。(CE角37度対31度)。将来の変形性関節症の発症を予防するために寛骨臼骨切り術(PAO)が臼蓋形成不全の患者に行われることがある。大腿骨頭の形態異常は臼蓋の適合性を最適下限にしたり、また二次性のインピンジメント症候群の原因となりうる。いくつかの研究で大腿骨頭の形態異常は臼蓋形成不全に対するPAOの予後を規定することが報告されている。
大腿骨頭の形状についての論文はいくつかある。Stulbergの分類はペルテス病の評価に用いられ、Kalamachi,SchmidtとMacEwenの分類はDDHの無腐性壊死に対して用いられてきた。しかしながら臼蓋形成不全に注目して行われた研究はほとんどない。通常の股関節に比べて臼蓋形成不全股では大腿骨頭の変形が起こりやすいかどうか、また臼蓋形成不全の重症度と大腿骨頭の変形との関連を調査した。

patient and method
後ろ向き研究。17歳以上の臼蓋形成不全症の患者。日整会の変形性関節症の基準にしたがってStage1,2の前関節症、初期関節症の患者を抽出。Stage3以降の患者、50歳以上の患者を除外。股関節の手術既往のある患者、脱臼股、外傷後変形、RAの患者は除外した。
2008年から2012年までに112人の患者をrecruit。103例は女性で9例は男性であった。平均年齢は37.6歳。224関節に対してレントゲン撮影を行い201例が臼蓋形成不全、23例が正常股と診断された。評価にはCE角、Sharp角、acetabular head index(AHI)を用いた。臼蓋形成不全の診断はCE角が20度未満、AHIが75%以下。Sharp角が45度以上、臼蓋傾斜角(acetabular roof angle)が15度以上とした。
大腿骨頭の変形を定量化するためにround indexを用いた。この指標は大腿骨頭の頂部から垂線をおろし、この垂線と大腿骨頭の内側縁からの距離と大腿骨頭内側縁から外側縁までの距離で割ったものである。
AP像で撮影。撮影距離は115センチ、足部は15度内旋。x線は恥骨結合上からまっすぐ入射した。
3人の検者にてCE角、AHI、Sharp角を測定。5枚適当に選んだレントゲンで検者間誤差が無いことを確認して残りは筆者が測定した。それぞれの大腿骨頭は3回ずつ一週間の間をおいて測定した。

result
正常群に比べて臼蓋形成群ではCE角、AHIが有意に小さくまた臼蓋傾斜角、Sharp角、round indexが有意に大きかった。round indexは臼蓋傾斜角、CE角と中程度の有意差をみとめAHI,Sharp書くと弱い相関を認めた。

discussion
正常群に比べ、臼蓋形成不全群では大腿骨頭の形態異常を認めることが多いことがわかった。また臼蓋形成不全の程度と大腿骨頭の形態異常の程度が相関していることがわかった。
round indexと臼蓋形成不全症のすべてのレントゲンパラメータで有意な相関があることがわかった。臼蓋傾斜角でもっともよく相関し、Sharp角が最も弱い相関を示していた。臼蓋傾斜角は臼蓋の荷重部である。Sharp角は臼蓋全体の角度を表している。これから言えることは臼蓋全体の形態よりも臼蓋荷重部の形態のほうが大腿骨頭の形態異常に影響を及ぼしているのではないかということである。
臼蓋形成不全の患者に対して手術治療をおこなうかどうかを決定するツールとしてレントゲン写真評価を用いることができる。しかしながら現在までに初期関節症の将来的な予測する方法は確立されていない。
小林らはCE角と臼蓋角をDDHの患者で経過観察した。3年から18年の経過観察の結果13.6%の患者で臼蓋形成不全を発症した。12歳までで将来の臼蓋形成不全を診断することは困難であると述べている。鬼頭らはCE角と臼蓋傾斜角が臼蓋形成の上でもっとも鋭敏な指標となりうることを述べている。
MurphyらはCE角15度以上、AHI68%、臼蓋傾斜角16度以下であれば65歳までは良好な股関節機能を保てると報告している。Albinanaらは臼蓋傾斜角が25度以上は成績不良と述べている。
岡野らは観血的整復の後の大腿骨頭の形態異常と臼蓋傾斜角の増大は年齢と関連することを述べている。しかしながら征服後も変形が残存したという理由で10歳以下で骨切り術を受けた患者ではフォロー時には球形となっていた。これらから早期の臼蓋の治療は大腿骨頭の球形度に影響をおよぼすものと考えられる。
Omeroglu らは臼蓋傾斜角が15度が早期に臼蓋形成術の適応となったと述べている。臼蓋傾斜角は大腿骨頭のround indexと関連が強い。臼蓋傾斜角は臼蓋形成不全での経過観察の時に最も影響を与えているのかもしれない。
本研究の限界は一方向からのレントゲン撮影しかしていないということである。将来的には3方向からの評価が行えるとよい。

conclusion
大腿骨頭の形態異常は臼蓋形成不全と関連していた。特に臼蓋傾斜角が大きく関連していた。大腿骨頭の形態は臼蓋傾斜角に大きく影響されているのかもしれない。

臼蓋形成不全で大腿骨側に変化が出るという論文です。
これだけマメに研究できる岡野先生はすごいなあ

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