抄録
背景
THAをうけた若年患者の中で活動量とTHAの長期予後についての論文はほとんどない。活動量を聴取しておくことはTHAの機種選択、手術方法の決定に有用かもしれない。
目的
本研究の目的はTHAを受けた若年の患者を対象として10年間経過した所で機能テスト、患者立脚型成績評価を用いた。ポリエチレンのウェア量を計測し、患者の活動性が合併症や患者の臨床的評価と関連しているかどうかを測定することである。
方法
50歳以下の58股関節を対象に10年間経過観察した。万歩計を21日間装着、6分間歩行テストを行った。10年間連続でレントゲン写真を撮像しポリエチレンのウエア量を計測した。平均年令は39歳、平均BMIは29であった。
結果
歩行量は年間のポリエチレンの摩耗量と相関していた。6分間歩行テスト、UCLAスコア、Tegnerスコアは摩耗量と相関しなかった。6分間歩行テストで335メートル平均歩いていた。これは156万歩一年間に歩いているのに匹敵する。UCLAの平均は6点、Tegnerスコアの平均は3点であった。平均摩耗量は0.266ミリ/年であり、その体積は82.6立方ミリメートルであった。合併症の有無は活動量に関連したものの有意な差は得られなかった。
結論
活動量の測定では万歩計だけがポリエチレン量の摩耗と相関した。万歩計による活動量の測定はTHAの長期の摩耗を測定するのに有用な方法であると推定された。
背景
Charnleyは45歳から50歳までの患者さんに対して手術を考慮する場合それ自身が朝鮮であるということを知っておかねばならない。なぜならば20年以上トラブルなく制限のない生活が送れるようにするためにはあらゆる分野での進歩が必要であるからだと述べている。今までに50歳以下の若年者を対象にして長期成績を報告したものはほとんどない。これらの報告はレントゲン写真、インプラントの生存率などの臨床成績にフォーカスを当てており、患者の活動量までには目を向けていなかった。しかしながら患者の活動量はTHAの長期成績と関連があるとする報告が幾つかある。
本研究の目的は若年者を対象にTHAを受けた患者を対象として10年後の身体活動量をStepActivityMonitor(SAMs)、6分間歩行テスト、UCLAスコア、TegnerLynsholmスコアをそれぞれ測定し、これらの身体活動量を測定するテストのどれがポリエチレンのウエアと関連しているかを測定した。今回の研究では1,どの測定方法が最もポリエチレンウエアと関連しているのか、2,患者立脚型評価はポリエチレンのウエアと関連するか、3,内科的合併症の数は患者の活動性や患者のQOLに影響するかを調べた
対象
対象は50例58関節。50歳以下でTHAを受け最低10年以上のフォローアップが可能であった症例。21日間のSAMsの装着、6分間歩行テスト、SF36、WOMAC、UCLA、そしてTegnarLynsholmスコアを聴取した。
当初73患者、82関節を対象としたものの、6分間歩行テスト、SAMsの装着を拒否したりといった理由で23患者が除外となっている。また数人の患者がクロスリンクポリエチレンを用いたせいで評価不能となったため除外としている。手術は1994年から1999年までの間に行われた。すべて同一機種のセメントレスステムを用いた。DepuyのProdigyを大腿骨コンポーネントとして用い、ヘッドは22ミリまたは26ミリ。27関節でZimmerの臼蓋コンポーネントを、31関節でDuralocを用いた。Zimmerの27関節が空気中でガンマ線処理したもので、Duralocがガスないでガンマ線処理されたコンポーネントとなる。
患者の平均年齢は39歳。36関節が男性、14関節が女性。BMIは29.すべての手術は同一術野により後方アプローチによって行われた。リハビリは6週間の杖歩行ののち疼痛内全荷重を許可している。患者は2年毎にフォローされ、変わったことがあれば適宜フォローを行った。術後10年の時点で電話にてSF36, WOMAC、HHS、UCLA、TegnerLynsolmスコアを聴取した。
UCLAスコアは人工関節置換術の患者を対象とした10点満点でスポーツなどのへの参加を評価するシステムで、Tegnarスコアは膝関節の靭帯再建後などにスポーツ、仕事への復帰を測定する評価方法である。時々人工関節置換術の患者でも用いられる。
術前平均のHHSは48.1点。術後82.3点に改善。SF36は身体が26.1点から49.5点に、精神面のスコアが46.2点から54.2点に改善した。平均のWOMACスコアは疼痛41点、こわばり40.3点、機能43.4点であったものがそれぞれ術後には86.8点、72.3点、78.1点に改善を見せた。UCLAの平均スコアは6点。制限なく家事が可能というレベルであった。Tegnerスコアは6点中3点であった。男女間に差はなかった。
最低10年間のフォローを行い、二人の検者でレントゲン写真の評価を行った。大腿骨側のコンポーネントではすべてboneingrowthが認められた。
また50人の患者を対象としてSAMsによる日常活動量の評価を行った。SAMsは2ヶ月間の歩行について記録が可能である。。歩行前に身長、体重をプログラムしておくことで他の万歩計よりも正確に測定できることが利点である。朝から晩までの21日間記録。これを元に1年間の歩行数を計算した。加えて6分間歩行テストを行った。6分間普通のペースで歩くことでどれくらいの距離が歩けるかを測定するものである。簡易、安価に行える方法として有用であると報告されている。これは健康成人を対象として行った以前の報告と比較を行った。
また合併症の有無と活動量について調査を行った。17人の患者が合併症を有さず、10人の患者が1つの合併症を、23人の患者が2つ以上の合併症を有した。11人の患者が他の筋骨格系の異常をきたしており、39例が異常がなかった。レントゲン写真の評価には以前に報告されたKaboらの方法を用いた。統計処理にはSASを用いた。
結果
SAMsによる歩行数はポリエチレンウエアと相関した。6分間歩行の結果は摩耗量と相関しなかった。平均歩行数年間156万歩。6分間歩行は335m。平均ポリエチレン摩耗量は0.266ミリであった。歩行数と摩耗量は相関した。22ミリ骨頭と26ミリ骨頭の間では摩耗量に差がなかった。患者が申告する活動量と摩耗量との間に相関はなかった。何かしらの合併症を抱えているとHHSは低かった。合併症を持っているとSAMs、Tegnarスコアは有意に低かった。
考察
50歳以下のTHAの患者を対象とした10年間の経過観察においてSAMsによる歩行数が最もよくポリエチレンの摩耗量と相関することがわかった。これらはいずれもコンベンショナルなポリエチレンによるもので、現在用いられているハイクロスポリエチレンでは摩耗量が0.061ミリとなるため評価は困難である。コンベンショナルなポリエチレン群を対象とすることで評価は容易であった。
今まで摩耗量は時間ではなく使用によって決まると言われていた。Schmalzriedの報告によれば使用量と摩耗が関連していたと報告している。GoldSmithらは活動性と摩耗量には関連がなかったと報告している。Sechriestらは摩耗量は骨頭の大きさとUCLAスコアと関連すると報告した。歩行量は関係ないとした。SechriestらはUCLAが摩耗量の測定に有用であると報告している。
本研究では6分間歩行、SF36,などを測定したものいずれも摩耗量とは関連がなかった。
本研究はTHAの患者に対して6分間歩行を行った最も大きな研究の一つである。6分間歩行は簡易に行うことのできる検査である。また6分間歩行は日々の生活を反映すると言われている。いままで6分間歩行は虚弱高齢者を対象として行われていた。
本研究の対象者は健常者よりも6分間の歩行能力は低かった。合併症の数が増えると6分間歩行能力は低下した。筋骨格系の合併症は6分間歩行能力を低下させることがわかった。
内科的合併症の数はすべての評価項目に影響を与えてた。
本研究の最大のLimitationは73人中23人の患者が除外されていることである。また6分間歩行の結果、身体活動量アンケートも最後のフォロー時にしか測定していない。合併症についても高血圧と運動が禁止されるような合併症とは違うが全て一緒にしている。また交絡の可能性は否定出来ない。またノンクロスリンクのポリエチレンは今や使用されていないため現在の患者には反映できない。
まとめとしてSAMsがポリエチレンの摩耗量と相関していた。合併症があると活動性が下がることがわかった。
2013年8月7日水曜日
2013年8月1日木曜日
20130801 Arthroscopy Arthroscopic Debridement Versus Refixation of the Acetabular Labrum Associated With Femoroacetabular Impingement
Abstract
背景:
臼蓋関節唇は、sealing機能とある程度の股関節安定性に寄与している。
短期成績に限っては、関節唇縫合が切除群と比較して優れていることは示唆されている。
目的:
FAIに対して鏡視下におこなった関節唇再固定と切除群の患者を前向きに比較することで
ある。
研究デザイン:
コホート研究;エビデンスレベル3
方法:
我々は、関節唇縫合術が発展する前に行っていた関節唇切除術を行った患者の成績を報
告した。我々の現在の関節鏡技術で修復可能であると考えられる関節唇断裂を有する患
者を、関節唇縫合を受けた患者コホートと比較した。よりよく2つの群をマッチさせる
ために、関節唇のpincerまたはcombinedタイプFAIの患者だけ対象とした。最初の44股
関節は、関節唇を部分的に切除/デブリした(group1);次の50股関節で、関節唇を縫合した
(group2)。結果は、術前と術後のmHHS、Short Form 12(SF-12)とVASで判断した。
術前および術後のレントゲンは、骨切除を評価するために行った。
結果:
平均年齢は、グループ1は32歳、グループ2は28歳であった。フォロー期間は平均42ヶ月
(24から72ヶ月)。
各術前平均スコアは、群間で有意差がなかった。平均3.5年の追跡調査で、主観的な結果
は、術前スコアと比較して両群で有意に改善した(P<.01)。HHS(P = .001)、SF-
12(P = .041)とVASペインスコア(P = .004)の全ては、ごく最近の追跡調査で切除群
と比較して再固定群で有意によりよい結果だった。
平均3.5年追跡調査で、良好ないし優れた結果は、部分的切除群の68%と再固定群の92%に
みられた(P = .004)。
結論:
他の因子がこれらの結果に影響する可能性があったにもかかわらず、部分的な関節唇切除
の初期のコホートと比較して関節唇再固定群は平均3.5年の追跡調査で良好ないし優れた結
果の割合が高く、より良好なHHS、SF-12とVASペインスケールを示した。
最近の論文では、股関節関節唇が股関節温存処置と股関節の完全性を維持することの重要
な役割を果たす可能性があることを示唆している。Pincerタイプインピンジメントの治療
における関節鏡の部分的な関節唇切除と再固定の患者を評価した著者の先行研究や他の研
究では関節唇の温存/再固定で、より良好な結果を報告している。
本研究の目的は、最小2年のフォローでの関節唇縫合術と部分的な切除/デブリのupdateを
報告することである。
MATERIALS AND METHODS
pincer-typeFAIの鏡視下手術は、2004年11月から著者らによって行っている。
当初は、リム切除に引き続き部分的に関節唇切除/デブリを行っていた。
2006年6月から、acetabular rim overcoverageを切除するために関節唇のtakedownを行い、関節
唇の再固定を行うようになった。
acetabular rim resectionの適応は、画像診断とpincer-type impingementと矛盾しない手術時所見
の組合せとした。
Acetabular retroversionはCOS、PWS陽性、 LCEが25度以上で陽性とした。
Focal anterior overcoverage はCOS、PWS陰性、LCEが25度以上で陽性とした。
Coxa profundaはLCEが35度以上かつtear dropがilioischial lineより内側にある場合とした。
Protrusio acetabuliは大腿骨骨頭がilioischial lineの内側にあれば陽性とした。
camtypeFAIはアルファ角が55以上で陽性とした。
関節唇縫合の適応は、pincerまたはcombinedタイプ、外傷、再固定するだけの十分な
量のintactな関節唇を有することである。再固定のための理想的な関節唇は、有意な内部
実質変性、石灰化、骨化と複合体退行性の断裂であり、典型的な前上方に位置している
ことである。
この方法の結果を比較するために、我々は、関節唇の再固定の現在の基準を満たした関節
唇のデブリで治療された症例を特定するために再固定/修復技術を使用する前に治療された
患者の手術報告、手術時のイメージと術前画像診断研究をレトロに見直した。
camFAIのみの治療において関節唇損傷を治療するとき、異なる技術が使用される可能性が
あるため、pincer-typeまたはcombined type FAIによる関節唇の病変だけが、関節唇の処置技術
に関してよりマッチングするためにに含まれた。
デブリ群のinclusion criteriaは、pincerまたはcombined type impingementにおけるレントゲンや術中所
見や引き続き行った関節唇の再固定や修復の使用前にFAIの鏡視下デブリや処置が含まれている。追加的
なinclusion criteriaとしては、レントゲン上での変性所見のないものや最小2年のフォロ
ーの患者が含まれた。再固定群のinclusion criteriaは、pincer-type またはcombined type FAIの
レントゲン所見や術中所見がある関節唇再固定症例とした。
調査期間内(2004.11-2007.9)では鏡視下処置を行ったFAI症例176股関節(166例)
での変性変化を認めた症例はなかった。我々の以前の報告と比べると、本研究において
は再固定群の調査期間を2ヶ月延長した。この結果、再固定群にて15例追加し、inclusion
criteriaを満たしたのは全100例となった。
われわれの施設にて関節唇縫合の発展する前に73例75股の患者がFAIの関節鏡視下手術
を受けた。部分的な切除、デブリを受けた44例46股はinclusion criteriaに含まれた。2例
2股の患者はフォローを外れ、最小2年のフォローを受けたのは42例44股であった。男性
27例、女性17例で平均年齢32歳(16-57歳)であった。平均フォロー期間は44ヶ月(24-
72ヶ月)であった。術前診断はpincerが10股、combinedとcamが34股であった。術前レン
トゲン画像でtonnis grade0から1が42股、2が2股であった。
再固定するようになってからは、調査期間中ではFAIの鏡視下治療を95例97股に対して
行った。52例54股が関節唇再固定を受け、inlusion criteriaを満たした。4例4股は追跡不
能であった。48例50股が最小2年のフォローを受け、inclusionに含まれた。男性29例、女
性患者21例の平均年齢は28歳(16-52歳)であった。平均追跡期間は、41ヵ月(範囲、24-
56ヵ月)であった。術前診断は8股pincerで、42股がcombinedであった。術前レントゲン
は、48股のTonnisグレードの0~1変化と2股のグレード2変化を示した。
手術はFig1と2を参照。
21歳の大学生のホッケー選手。左股関節のAP像で、combinedタイプ形態を示している。
A)術前APレントゲンでdashed curved lineはacetabular retroversionを示している。white
arrowがcamタイプのFAIを示している。 B)術後APレントゲンでdashed curved lineはanteverted
Acetabulumで鏡視下リム切除を示し、white arrowがhead-neck offsetの改善を示している。 C)術前側
面レントゲンで、white arrowがcam-type FAIを示し、D)術後側面レントゲンは鏡視下大腿骨切除形成術後
のhead-neck offsetの改善を示している。
Fig2では
(A) PincerタイプFAIの鏡視下リム切除(矢印)後の右股関節の術中画像。
(B) 同様のpincerに対して関節唇のtake down後にリム切除して再固定(矢印)した術中所見。
結果は、クリニック診察時、または、メールで集められた。
筆頭著者の診療が3次医療のため、一部の患者は、客観的な追跡調査を受けることができ
なかった。
ごく最近の結果は、デブリ群の29例の患者と再固定群の29例の患者の結果がクリニック訪
問で得られた。ごく最近の結果は、メールでデブリ群の13例の患者と再固定群の19例の患
者で得た。senior authorは、術前および術後2週のAP骨盤とクロステーブル側面レントゲン
上でcamタイプFAIを有する患者のすべてのアルファ角を測定した。
結果
群間の統計的に有意な差が、性(P = .83)、年齢(P = .43)、FAI分類(P = .44)または
Tonnisグレード(P = .998)にて認められなかった。
Table1
Degree (Outerbridge Grade) of Chondromalacia Found Intraoperatively
Outerbridge Gradeはデブリ群と再固定群で有意差は認めなかった。だいたい大腿骨頭は問題なくて、臼
蓋のダメージが多い結果となっている。
Table2
Concomitant Procedures Performed at the Time of Arthroscopic Femoroacetabular Impingement
Correction (Hips)
FAIに対して付随的に鏡視下に行った処置
両群間に有意差はない。現在重要視されている円靭帯のデブリが結構行われている。Microfractureは臼蓋
に行ったかどうかは記載がない。
Fig3
術前のHHSは両群間に有意差なし。スコアは手術後に1年に再固定群で有意により改善し、3.5年の平均追
跡期間で、本研究のそれ以降は全体を通じて維持されていた。mHHSは平均3.5年の追跡期間でデブ
リ群84.9と比較して再固定群94.3で有意に良好であった。
Fig4
術前のSF12スコアは両群間に有意差はなかった。SF-12スコアはデブリ群(82.2)と比較して再
固定群(89.8)で有意により良好だった(P = .041)
Fig5
VASは両群間術前に有意差はなかった。術後3.5年のフォロー時ではでデブリ群(1.7mm)と比較し
て再固定群(0.7mm)で有意により低かった。(P = .004)
Table3
部分的な関節唇切除/デブリ群と再固定群を比較した術前術後結果
再固定群は改善点で、HHS、SF12、VASにおいて有意にデブリ群より改善していた。
ごく最近の追跡調査で、良好ないし優れた結果(HHS .80以上)は、デブリ群の68.2%と
再固定群の92%であった。(P 〈0.004)
FailureをHHS70より小さいまたはopen surgical dislocationやTHAなどのopen surgical
approachへのconversionと定義した。Failure rateは再固定群の8.0%(4股関節)と比較
してデブリ群の9.1%(4股関節)であった。(P = .998)
統計的に有意な差が、アルファ角の減少に関してはなかった。
合併症は、3例の患者で手術後に異所骨化をデブリ群に認めた。
これらの患者の2例は、症候的な異所骨を取り出すために、rivision股関節鏡と術後照射を
その後行った。この合併症を認めた後に、以降の患者は、手術後に3週の間ナプロキセン/
ナイキサン(500mgのBID)で治療した。修復/再固定群の患者は、手術後に異所骨化を生
じなかった。デブリ群の2例の他の患者は、不十分な最初の減圧法のためにrevision femoral
osteochondroplastyを受けた。修復群において、1例の関節鏡検査時の2.5cmの全層寛骨臼
chondral欠損患者は、1年の追跡調査でTHAを受けた。修復群のもう一人の患者は、2.5年
の追跡調査で症候性後方cam病変のために、open surgical dislocationでrevision hip surgeryをそ
の後受けた。修復群のこれらの患者の両方とも、failureと考えられた。
考察
Biomechanicalおよび有限要素モデル分析では、寛骨臼関節唇が股関節安定性と股関節適
合性に寄与する可能性があり、sealing機能を通して滑液を分布させるために機能する可
能性があることを示している。以前読んだ論文ですが、ヒツジ・モデルにおいて、外科
的に誘発された関節唇の断裂は1本のスーちゃーアンカーで修復された、そして、すべ
ての標本がカプセルおよび/またはカプセルの下にある寛骨臼骨に血管結合組織瘢痕組
織を経て治癒するがわかった。
最近の研究では、FAIのarthroscopic managementを受けた最小限の2年(平均、2.44年)
の追跡調査を有する96例の患者で、関節唇のデブリに対して関節唇の修復を評価した。
mHHSは、デブリ群と比較して修復群で有意により良好だったとの報告がある。
関節鏡視下FAIcorrectionの結果を2年以上の追跡調査で調べているもう一つの研究では、
関節唇の修復(デブリよりもむしろ)がより高いHHSの予測因子であることが明らかにな
ったと報告している。
本研究は、関節鏡視下の関節唇のデブリと関節唇の再固定の結果を比較した最初の研
究であったコホート上で、更なる追跡調査を意味する。他の研究は、同じ調査期間のた
め縫合群がたいしたことない損傷に対して行っているかもしれないと筆者らは述べてい
る。
画像評価では3次元的評価をしていないことも問題であると述べている。
本研究の関節唇のデブリの技術が部分的な関節唇の切除から成ったことは注意すべき
である。近年、pincerインピンジの治療における関節唇のデブリ技術は、進化している
ため同じような結果となったどうかわからないと述べている。
まとめ 他の因子がこれらの結果に影響する可能性があったにもかかわらず、関節唇
のデブリ群の初期コホートと比較して関節唇の再固定群では平均3.5年の追跡調査で良好
ないし優れた結果の割合とより良好なHHS、SF-12とVASの結果を得た。
背景:
臼蓋関節唇は、sealing機能とある程度の股関節安定性に寄与している。
短期成績に限っては、関節唇縫合が切除群と比較して優れていることは示唆されている。
目的:
FAIに対して鏡視下におこなった関節唇再固定と切除群の患者を前向きに比較することで
ある。
研究デザイン:
コホート研究;エビデンスレベル3
方法:
我々は、関節唇縫合術が発展する前に行っていた関節唇切除術を行った患者の成績を報
告した。我々の現在の関節鏡技術で修復可能であると考えられる関節唇断裂を有する患
者を、関節唇縫合を受けた患者コホートと比較した。よりよく2つの群をマッチさせる
ために、関節唇のpincerまたはcombinedタイプFAIの患者だけ対象とした。最初の44股
関節は、関節唇を部分的に切除/デブリした(group1);次の50股関節で、関節唇を縫合した
(group2)。結果は、術前と術後のmHHS、Short Form 12(SF-12)とVASで判断した。
術前および術後のレントゲンは、骨切除を評価するために行った。
結果:
平均年齢は、グループ1は32歳、グループ2は28歳であった。フォロー期間は平均42ヶ月
(24から72ヶ月)。
各術前平均スコアは、群間で有意差がなかった。平均3.5年の追跡調査で、主観的な結果
は、術前スコアと比較して両群で有意に改善した(P<.01)。HHS(P = .001)、SF-
12(P = .041)とVASペインスコア(P = .004)の全ては、ごく最近の追跡調査で切除群
と比較して再固定群で有意によりよい結果だった。
平均3.5年追跡調査で、良好ないし優れた結果は、部分的切除群の68%と再固定群の92%に
みられた(P = .004)。
結論:
他の因子がこれらの結果に影響する可能性があったにもかかわらず、部分的な関節唇切除
の初期のコホートと比較して関節唇再固定群は平均3.5年の追跡調査で良好ないし優れた結
果の割合が高く、より良好なHHS、SF-12とVASペインスケールを示した。
最近の論文では、股関節関節唇が股関節温存処置と股関節の完全性を維持することの重要
な役割を果たす可能性があることを示唆している。Pincerタイプインピンジメントの治療
における関節鏡の部分的な関節唇切除と再固定の患者を評価した著者の先行研究や他の研
究では関節唇の温存/再固定で、より良好な結果を報告している。
本研究の目的は、最小2年のフォローでの関節唇縫合術と部分的な切除/デブリのupdateを
報告することである。
MATERIALS AND METHODS
pincer-typeFAIの鏡視下手術は、2004年11月から著者らによって行っている。
当初は、リム切除に引き続き部分的に関節唇切除/デブリを行っていた。
2006年6月から、acetabular rim overcoverageを切除するために関節唇のtakedownを行い、関節
唇の再固定を行うようになった。
acetabular rim resectionの適応は、画像診断とpincer-type impingementと矛盾しない手術時所見
の組合せとした。
Acetabular retroversionはCOS、PWS陽性、 LCEが25度以上で陽性とした。
Focal anterior overcoverage はCOS、PWS陰性、LCEが25度以上で陽性とした。
Coxa profundaはLCEが35度以上かつtear dropがilioischial lineより内側にある場合とした。
Protrusio acetabuliは大腿骨骨頭がilioischial lineの内側にあれば陽性とした。
camtypeFAIはアルファ角が55以上で陽性とした。
関節唇縫合の適応は、pincerまたはcombinedタイプ、外傷、再固定するだけの十分な
量のintactな関節唇を有することである。再固定のための理想的な関節唇は、有意な内部
実質変性、石灰化、骨化と複合体退行性の断裂であり、典型的な前上方に位置している
ことである。
この方法の結果を比較するために、我々は、関節唇の再固定の現在の基準を満たした関節
唇のデブリで治療された症例を特定するために再固定/修復技術を使用する前に治療された
患者の手術報告、手術時のイメージと術前画像診断研究をレトロに見直した。
camFAIのみの治療において関節唇損傷を治療するとき、異なる技術が使用される可能性が
あるため、pincer-typeまたはcombined type FAIによる関節唇の病変だけが、関節唇の処置技術
に関してよりマッチングするためにに含まれた。
デブリ群のinclusion criteriaは、pincerまたはcombined type impingementにおけるレントゲンや術中所
見や引き続き行った関節唇の再固定や修復の使用前にFAIの鏡視下デブリや処置が含まれている。追加的
なinclusion criteriaとしては、レントゲン上での変性所見のないものや最小2年のフォロ
ーの患者が含まれた。再固定群のinclusion criteriaは、pincer-type またはcombined type FAIの
レントゲン所見や術中所見がある関節唇再固定症例とした。
調査期間内(2004.11-2007.9)では鏡視下処置を行ったFAI症例176股関節(166例)
での変性変化を認めた症例はなかった。我々の以前の報告と比べると、本研究において
は再固定群の調査期間を2ヶ月延長した。この結果、再固定群にて15例追加し、inclusion
criteriaを満たしたのは全100例となった。
われわれの施設にて関節唇縫合の発展する前に73例75股の患者がFAIの関節鏡視下手術
を受けた。部分的な切除、デブリを受けた44例46股はinclusion criteriaに含まれた。2例
2股の患者はフォローを外れ、最小2年のフォローを受けたのは42例44股であった。男性
27例、女性17例で平均年齢32歳(16-57歳)であった。平均フォロー期間は44ヶ月(24-
72ヶ月)であった。術前診断はpincerが10股、combinedとcamが34股であった。術前レン
トゲン画像でtonnis grade0から1が42股、2が2股であった。
再固定するようになってからは、調査期間中ではFAIの鏡視下治療を95例97股に対して
行った。52例54股が関節唇再固定を受け、inlusion criteriaを満たした。4例4股は追跡不
能であった。48例50股が最小2年のフォローを受け、inclusionに含まれた。男性29例、女
性患者21例の平均年齢は28歳(16-52歳)であった。平均追跡期間は、41ヵ月(範囲、24-
56ヵ月)であった。術前診断は8股pincerで、42股がcombinedであった。術前レントゲン
は、48股のTonnisグレードの0~1変化と2股のグレード2変化を示した。
手術はFig1と2を参照。
21歳の大学生のホッケー選手。左股関節のAP像で、combinedタイプ形態を示している。
A)術前APレントゲンでdashed curved lineはacetabular retroversionを示している。white
arrowがcamタイプのFAIを示している。 B)術後APレントゲンでdashed curved lineはanteverted
Acetabulumで鏡視下リム切除を示し、white arrowがhead-neck offsetの改善を示している。 C)術前側
面レントゲンで、white arrowがcam-type FAIを示し、D)術後側面レントゲンは鏡視下大腿骨切除形成術後
のhead-neck offsetの改善を示している。
Fig2では
(A) PincerタイプFAIの鏡視下リム切除(矢印)後の右股関節の術中画像。
(B) 同様のpincerに対して関節唇のtake down後にリム切除して再固定(矢印)した術中所見。
結果は、クリニック診察時、または、メールで集められた。
筆頭著者の診療が3次医療のため、一部の患者は、客観的な追跡調査を受けることができ
なかった。
ごく最近の結果は、デブリ群の29例の患者と再固定群の29例の患者の結果がクリニック訪
問で得られた。ごく最近の結果は、メールでデブリ群の13例の患者と再固定群の19例の患
者で得た。senior authorは、術前および術後2週のAP骨盤とクロステーブル側面レントゲン
上でcamタイプFAIを有する患者のすべてのアルファ角を測定した。
結果
群間の統計的に有意な差が、性(P = .83)、年齢(P = .43)、FAI分類(P = .44)または
Tonnisグレード(P = .998)にて認められなかった。
Table1
Degree (Outerbridge Grade) of Chondromalacia Found Intraoperatively
Outerbridge Gradeはデブリ群と再固定群で有意差は認めなかった。だいたい大腿骨頭は問題なくて、臼
蓋のダメージが多い結果となっている。
Table2
Concomitant Procedures Performed at the Time of Arthroscopic Femoroacetabular Impingement
Correction (Hips)
FAIに対して付随的に鏡視下に行った処置
両群間に有意差はない。現在重要視されている円靭帯のデブリが結構行われている。Microfractureは臼蓋
に行ったかどうかは記載がない。
Fig3
術前のHHSは両群間に有意差なし。スコアは手術後に1年に再固定群で有意により改善し、3.5年の平均追
跡期間で、本研究のそれ以降は全体を通じて維持されていた。mHHSは平均3.5年の追跡期間でデブ
リ群84.9と比較して再固定群94.3で有意に良好であった。
Fig4
術前のSF12スコアは両群間に有意差はなかった。SF-12スコアはデブリ群(82.2)と比較して再
固定群(89.8)で有意により良好だった(P = .041)
Fig5
VASは両群間術前に有意差はなかった。術後3.5年のフォロー時ではでデブリ群(1.7mm)と比較し
て再固定群(0.7mm)で有意により低かった。(P = .004)
Table3
部分的な関節唇切除/デブリ群と再固定群を比較した術前術後結果
再固定群は改善点で、HHS、SF12、VASにおいて有意にデブリ群より改善していた。
ごく最近の追跡調査で、良好ないし優れた結果(HHS .80以上)は、デブリ群の68.2%と
再固定群の92%であった。(P 〈0.004)
FailureをHHS70より小さいまたはopen surgical dislocationやTHAなどのopen surgical
approachへのconversionと定義した。Failure rateは再固定群の8.0%(4股関節)と比較
してデブリ群の9.1%(4股関節)であった。(P = .998)
統計的に有意な差が、アルファ角の減少に関してはなかった。
合併症は、3例の患者で手術後に異所骨化をデブリ群に認めた。
これらの患者の2例は、症候的な異所骨を取り出すために、rivision股関節鏡と術後照射を
その後行った。この合併症を認めた後に、以降の患者は、手術後に3週の間ナプロキセン/
ナイキサン(500mgのBID)で治療した。修復/再固定群の患者は、手術後に異所骨化を生
じなかった。デブリ群の2例の他の患者は、不十分な最初の減圧法のためにrevision femoral
osteochondroplastyを受けた。修復群において、1例の関節鏡検査時の2.5cmの全層寛骨臼
chondral欠損患者は、1年の追跡調査でTHAを受けた。修復群のもう一人の患者は、2.5年
の追跡調査で症候性後方cam病変のために、open surgical dislocationでrevision hip surgeryをそ
の後受けた。修復群のこれらの患者の両方とも、failureと考えられた。
考察
Biomechanicalおよび有限要素モデル分析では、寛骨臼関節唇が股関節安定性と股関節適
合性に寄与する可能性があり、sealing機能を通して滑液を分布させるために機能する可
能性があることを示している。以前読んだ論文ですが、ヒツジ・モデルにおいて、外科
的に誘発された関節唇の断裂は1本のスーちゃーアンカーで修復された、そして、すべ
ての標本がカプセルおよび/またはカプセルの下にある寛骨臼骨に血管結合組織瘢痕組
織を経て治癒するがわかった。
最近の研究では、FAIのarthroscopic managementを受けた最小限の2年(平均、2.44年)
の追跡調査を有する96例の患者で、関節唇のデブリに対して関節唇の修復を評価した。
mHHSは、デブリ群と比較して修復群で有意により良好だったとの報告がある。
関節鏡視下FAIcorrectionの結果を2年以上の追跡調査で調べているもう一つの研究では、
関節唇の修復(デブリよりもむしろ)がより高いHHSの予測因子であることが明らかにな
ったと報告している。
本研究は、関節鏡視下の関節唇のデブリと関節唇の再固定の結果を比較した最初の研
究であったコホート上で、更なる追跡調査を意味する。他の研究は、同じ調査期間のた
め縫合群がたいしたことない損傷に対して行っているかもしれないと筆者らは述べてい
る。
画像評価では3次元的評価をしていないことも問題であると述べている。
本研究の関節唇のデブリの技術が部分的な関節唇の切除から成ったことは注意すべき
である。近年、pincerインピンジの治療における関節唇のデブリ技術は、進化している
ため同じような結果となったどうかわからないと述べている。
まとめ 他の因子がこれらの結果に影響する可能性があったにもかかわらず、関節唇
のデブリ群の初期コホートと比較して関節唇の再固定群では平均3.5年の追跡調査で良好
ないし優れた結果の割合とより良好なHHS、SF-12とVASの結果を得た。
20130801 JAMA Non-benzodiazepine sleep medications and hip fractures in nursing home residents
老人ホーム入所者における睡眠薬と転倒受傷の関係性について理解することは重要です。
我々は非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬(ゾルピデム:マイスリー、エスゾピクロン:ルネ
スタ、ザレプロン:ソナタ)と股関節骨折のリスクとの関連性を評価するために長期滞在
型老人ホームの全国的なサンプルにおいて全体、入居者の機能、入居施設の特徴にて階層
化し、ケースクロスオーバースタディーを行ないました。
方法ですが、メディケアのPartAとDに該当する、診療ごとの個別支払のあった15528人の
アメリカの長期滞在型老人ホーム入所中の50歳以上の股関節骨折を受傷した患者が本研究
に含まれました。股関節骨折のオッズ比は、股関節を骨折した日から0-29日前までの期間
(ハザードピリオド)に非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を所有していた、また股関節を骨
折した日からそれぞれ60-89日前、120-149日前(これらをコントロールピリオドとしま
す)この期間に睡眠薬を所有していたかについて条件付きロジスティック回帰モデルにて
評価されました。解析は個々と入居施設の特徴にて階層化されました。
結果ですが、対象の11%である1715人で骨折前に非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が処方
されており、927人の暴露状況が不一致なペアが解析に含まれました。平均年齢は81歳で
78%が女性でした。股関節骨折のリスクは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用者で上昇
(オッズ比は1.66、95%信頼区間が1.45、1.90)した。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬と股
関節骨折の関連性は新規の使用者でいくらか高く(オッズ比1.86vs1.43、p=0.06)、機能
障害の程度は重度よりも軽度でいくらか高く(オッズ比は1.72vs1.16、p=0.11)、移乗に
関して全介助よりも制限が少ない患者でいくらか高く(オッズ比2.02vs1.43、p=0.02)、
Medicaid bed(低所得者向けの医療費補助制度を用いた病床)の少ない施設でいくらか高
いという結果になりました(オッズ比1.90vs1.46、p=0.05)。
結論ですが、老人ホームにおいて非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を用いることは股関節骨
折のリスクを上昇させます。新規使用者や認知機能障害がわずかか軽度、また移乗に介助
があまり必要としない入所者においてこれらの薬剤の被害をもっとも受けやすいことが予
想されます。老人ホーム入所者に睡眠薬を処方する際には警戒すべきであろう。
とのことでした。
Backgroundです。
2006年にメディケア(高齢者向け医療保険制度) のPart Dでは「必須の薬剤費保険負担」
からベンゾジアゼピン系薬剤を除外することを抑制政策の一環として制定しています。ベ
ンゾジアゼピン系薬剤のメディケアでの制限を受けて、非ベンゾジアゼピン系の睡眠剤で
あるゾルピデムはアメリカの老人ホームにおいて不眠症に頻繁に使用されるようになって
いきました。当初ベンゾジアゼピン系よりも転落のリスクへの関連において安全であると
信じられていたが、ケースコントロールスタディが実際に行われたところ非ベンゾジアゼ
ピン系の睡眠剤が股関節骨折のリスクの増加に2倍関連することが明らかとなり、また後
ろ向きコホート研究でも非ベンゾジアゼピン系の睡眠剤の使用が短時間作用型のベンゾジ
アゼピンよりも骨折のリスクを1.7-2.2倍上昇させることがわかりました。
これらの研究からの危害への警告にもかかわらず、睡眠剤を使用していない人と睡眠薬を
処方された(睡眠薬を必要とする)人とを比較した内因性の違いとして一部説明されてい
た可能性がある。睡眠剤そのものが骨折のリスクの上昇に関連するかどうかを理解するこ
とは重要である。老人ホーム入居者の大規模なコホート研究において不眠症を睡眠薬で治
療した群と比較して非治療の不眠症と転落との間に強い関連性が認められているとの報告
もあり睡眠薬を差し控えることでさらに有害な結果をもたらす可能性もあります。
これらの疑念を対処するために我々は非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と股関節骨折のリス
クとの関連性についてセルフコントロール、ケースクロスオーバースタディデザインを
15528人のアメリカ国内の長期滞在型老の人ホーム入居者において調査した。さらに非ベ
ンゾジアゼピン系の睡眠薬を用いる際に股関節骨折のリスクを上昇させるサブグループを
明らかにするために、それぞれの特徴(すなわち認知能力や機能状態、移乗能力、尿失
禁、拘束具の使用)や施設の質や特徴(すなわち職員の割合の高い施設や医療保険制度対
応の病床数の割合)について層別に解析しました。
Methods(ここからはある程度要約する必要があります)
対象についてはFigure1で説明します。
メディケアでのPartAとPartDの要求は老人ホーム入居者と関連付けがあり、900万以上の
件数が2007年7月から2008年の12月までの期間に(一番上の)メディケアのPartAで入院
に対する診療ごとの個別支払の要求がされており、そのうちの127917件が股関節骨折での
請求となっています。そのうちの127253(99%)が少なくとも6か月前からメディケアに
登録されており、23882人が股関節骨折の診断の6か月以上前から老人ホームに入居してい
ます。処方薬の完全な情報を登録してあるメディケアPartDの患者が15626人(65%)、そ
のうちの50歳未満の98例を除外した15528人が最終的なサンプルサイズとなっています。
ケースクロスオーバースタディーデザイン(事例交叉デザイン)
ケースクロスオーバースタディーデザインは急性事象の一時的な被ばく効果を評価するた
めのものです。今研究では被ばくすなわち非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の所有の時期
が股関節を骨折した日から0-29日前までの期間(ハザードピリオド)と、また60-89日前
の期間、120-149日前の期間をコントロールピリオドとし、各々の参加者で比較していま
す。参加者における薬剤の使用や不使用についての時間の交錯、過度な交錯因子について
は除外した。不眠症悪化などの病態の変化が薬剤の調合や股関節骨折のリスクに寄与する
可能性は残存した。
非ベンゾジアゼピン系の薬剤の使用について
新規の使用による股関節骨折のリスクに関して検討しました。
定義としては受傷から60日前より以前には所有していなく、新規に内服されで受傷したも
のとしています。
老人ホームの特徴
Minimum data set(というメディケアのすべての入居者の臨床評価について国により義
務付けられているデータセット:略してMDS)が質や個々のニーズへの対応について評価
する道具として使用されています。
MDSアセスメント
認知面の評価はCongnitive Performance Scale
正常から軽度の機能障害(0-2)
中程度から重度の機能障害(3-4)
機能面の評価はADLロングスケール
軽度(0-7)、中程度(8-20)、重度の障害(21-28)
移乗能力についても
自立(0)、見守りや軽介助(1-2)、移乗にさらなる介助や全介助を要する(3-4、
8)
拘束具の使用は過去7日間のベッドやサイドレールの使用とみなして評価しています。
結果
15528人の股関節骨折を生じた老人ホーム入居者のうち1715人(11%)で非ベンゾジアゼ
ピン系睡眠薬が調剤されていました。ハザードピリオドとコントロールピリオドにおける
患者の所見についてTable1に示してあります。
平均年齢81歳、77.6%が女性、併存疾患は貧血6.8%、うつ病49.9%など。40%近い
39.6%の対象者が中程度から重度の認知障害を有しており、また65.4%がADLにて中等度
の機能障害を有していました。1日における入居者に対する看護師・准看護師や看護助手
の時間は平均3.4時間でした。
Table2になりますが非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の所有から30日以内の股関節骨折のリ
スクはオッズ比で1.66に上昇し、ハザードピリオドを15日に短くしても同様の傾向でした
(オッズ比1.47)。新規の非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の使用はそれだけで骨折のリス
クは高くなり、初めの15日間が最も大きくなりました(オッズ比2.2)。
Table3では正常から軽度の認知障害の患者の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用において
中等度から重度の認知障害の患者よりも股関節骨折のリスクの上昇が確認され(オッズ比
1.86と1.43)ADLの中程度の障害では重度のADL障害の患者の薬剤使用よりも骨折のリス
クが高い傾向がありました(1.71と1.16)。
移乗に対して介助が少ない患者で睡眠薬を使用する入居者は自立している入居者や全介助
を要する入居者よりも骨折のリスクが高かった(2.02と1.46と1.43)尿失禁や拘束具の使
用による階層化での股関節骨折のリスクについては違いはありませんでした。
Medicareのベッドが少ない施設での非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬使用している入居者
はmedicareのベッドが多い施設に比べて骨折のリスクが高いという結果が得られました
(1.90と1.46)しかしスタッフの割合による骨折のリスクについてはわずかな違いしか認
めませんでした。
感度解析
Figure3では横軸を股関節骨折までの期間、縦軸を各々の日での睡眠薬の調剤の割合でグラ
フ化されており有病率が太線で描かれています。
全体における非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の使用による経時的な傾向を認めませんでし
た(PanelB)。発症30日前において睡眠薬を使用すると股関節骨折の有病率が上昇してい
ます(Panel A)。
このことから経時的な傾向が観察期間内でのオッズ比では説明できなかった。
Discussion
今回のアメリカでの長期滞在型老人ホーム入居者において非ベンゾジアゼピン系の薬剤の
使用30日以内に股関節骨折のリスクが66%上昇することが分かりました。新規使用者の初
めの15日間で最も骨折のリスクが高くなることが分かりました。移乗に関して介助が少な
い入居者の方が特に睡眠薬の被害を受けやすく、また有意差はありませんが正常や軽度の
認知力の入居者や中等度の機能障害の入居者もこれらの薬剤の被害を受けることが明らか
になっています。
ケースコントロールスタディではゾルピデムの使用が股関節骨折のリスクを2倍上昇させ
ると報告がありコホート研究では非椎体骨折や脱臼などのリスクが薬剤投与から16-30日
においてもっとも高くなると報告しています。(これらの研究は睡眠薬に関連した骨折の
リスクを個人間の交錯により過剰評価される可能性がある)。我々の研究ではセルフコン
トロールな、ケースクロスオーバーデザインであり交錯を最小化しており、非ベンゾジア
ゼピン系の睡眠薬の使用による股関節骨折のリスクは同様であった(OR:1.66)。
我々の研究では股関節骨折を有する老人ホーム入居者の11%が非ベンゾジアゼピン系の睡
眠薬を使用しており、すべての老人ホーム入居者の15%が研究期間内に非ベンゾジアゼピ
ン系の睡眠薬を使用していると推定されました。この結果は2004年にナショナルナーシン
グホームサーヴェイによるベンゾジアゼピン系の薬剤使用の割合(13%)よりも若干高い
結果となっています。ベンゾジアゼピン系の薬剤の使用制限が結果として非ベンゾジアゼ
ピン系の薬剤の使用増加につながったものと考えられます。
この研究では影響を受けやすいサブグループの存在を検討した。その理由としては非ベン
ゾジアゼピン系の睡眠薬は記憶や注意力、バランス感覚に影響を与えるからです。認知力
や機能障害は薬剤使用により股関節骨折のリスクを高めると仮説を立てていますが、認知
障害が軽度な入居者の方がよりリスクが高いことが明らかになりました。徘徊や移乗が自
立した入居者ほど虚弱な地域在住者において骨折のリスクが高かったとの報告もある。
老人ホームでの転落は夜に多くトイレの際に生じています。尿失禁や夜間頻尿は股関節骨
折のリスク因子とされています。拘束具の使用もより高い骨折のリスクとされていました
が我々の結果では睡眠薬を使用することによるこれらの因子での骨折リスクへの影響は認
められませんでした。
老人ホームのスタッフの割合が転落率に関連するとのいくつかの報告があり、今回
Medicare bedの割合が少ない老人ホームでの睡眠薬の使用が骨折のリスクが増加してい
ましたが偶然(たまたま)見つかった可能性があります(原因はわかりません)。
この研究はセルフコントロールの、ケースクロスオーバースタディーデザインを使用した
最初の論文であり、薬剤のデータや患者の機能的な特徴が含まれたアメリカの老人ホーム
入居者の大量のデータをもとにしているところが強みである。
この研究のミテーションとしては1つ目は薬剤の投与量については検討していないこと
であり、高容量の入居者はリスクが高いかもしれない。2つ目に古典的なベンゾジアゼ
ピン系の薬剤を含んでいるためベンゾジアゼピン系の薬剤との相互作用により骨折のリ
スクが上昇したかどうかがわからない。3つ目に我々は入居者の23882人から15626人と
MedicareのPartD に含まれていない35%を非適任として除外している。PartDに登録され
ていない入居者は本研究の参加者より男性が多く(30%vs22%)、正常から軽度の認知症
であり(62vs47%)移乗に全介助を要する(43vs37%)。これらの違いが我々の結果に影
響を与えるだけの違いになるかわからない。
最後に我々は睡眠薬の影響と骨折のリスクと関連しうる医学的状態(すなわち不眠症)や
病状の悪化などとを完全に分離することはできない。(うつ症状や抗うつ薬の使用などは
我々の結果を説明することはできなかった)。基本的な内科的疾患や睡眠薬のいずれかが
骨折のリスクを上昇させているかどうか引き出したとしても関連事項が残っている。非ベ
ンゾジアゼピン系の睡眠薬を使用する老人ホーム入居者はもっと密に転落に対し監視し、
骨粗鬆症のスクリーニングをし、骨折のリスクを避けるべきであろう。
我々は非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬(ゾルピデム:マイスリー、エスゾピクロン:ルネ
スタ、ザレプロン:ソナタ)と股関節骨折のリスクとの関連性を評価するために長期滞在
型老人ホームの全国的なサンプルにおいて全体、入居者の機能、入居施設の特徴にて階層
化し、ケースクロスオーバースタディーを行ないました。
方法ですが、メディケアのPartAとDに該当する、診療ごとの個別支払のあった15528人の
アメリカの長期滞在型老人ホーム入所中の50歳以上の股関節骨折を受傷した患者が本研究
に含まれました。股関節骨折のオッズ比は、股関節を骨折した日から0-29日前までの期間
(ハザードピリオド)に非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を所有していた、また股関節を骨
折した日からそれぞれ60-89日前、120-149日前(これらをコントロールピリオドとしま
す)この期間に睡眠薬を所有していたかについて条件付きロジスティック回帰モデルにて
評価されました。解析は個々と入居施設の特徴にて階層化されました。
結果ですが、対象の11%である1715人で骨折前に非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が処方
されており、927人の暴露状況が不一致なペアが解析に含まれました。平均年齢は81歳で
78%が女性でした。股関節骨折のリスクは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用者で上昇
(オッズ比は1.66、95%信頼区間が1.45、1.90)した。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬と股
関節骨折の関連性は新規の使用者でいくらか高く(オッズ比1.86vs1.43、p=0.06)、機能
障害の程度は重度よりも軽度でいくらか高く(オッズ比は1.72vs1.16、p=0.11)、移乗に
関して全介助よりも制限が少ない患者でいくらか高く(オッズ比2.02vs1.43、p=0.02)、
Medicaid bed(低所得者向けの医療費補助制度を用いた病床)の少ない施設でいくらか高
いという結果になりました(オッズ比1.90vs1.46、p=0.05)。
結論ですが、老人ホームにおいて非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を用いることは股関節骨
折のリスクを上昇させます。新規使用者や認知機能障害がわずかか軽度、また移乗に介助
があまり必要としない入所者においてこれらの薬剤の被害をもっとも受けやすいことが予
想されます。老人ホーム入所者に睡眠薬を処方する際には警戒すべきであろう。
とのことでした。
Backgroundです。
2006年にメディケア(高齢者向け医療保険制度) のPart Dでは「必須の薬剤費保険負担」
からベンゾジアゼピン系薬剤を除外することを抑制政策の一環として制定しています。ベ
ンゾジアゼピン系薬剤のメディケアでの制限を受けて、非ベンゾジアゼピン系の睡眠剤で
あるゾルピデムはアメリカの老人ホームにおいて不眠症に頻繁に使用されるようになって
いきました。当初ベンゾジアゼピン系よりも転落のリスクへの関連において安全であると
信じられていたが、ケースコントロールスタディが実際に行われたところ非ベンゾジアゼ
ピン系の睡眠剤が股関節骨折のリスクの増加に2倍関連することが明らかとなり、また後
ろ向きコホート研究でも非ベンゾジアゼピン系の睡眠剤の使用が短時間作用型のベンゾジ
アゼピンよりも骨折のリスクを1.7-2.2倍上昇させることがわかりました。
これらの研究からの危害への警告にもかかわらず、睡眠剤を使用していない人と睡眠薬を
処方された(睡眠薬を必要とする)人とを比較した内因性の違いとして一部説明されてい
た可能性がある。睡眠剤そのものが骨折のリスクの上昇に関連するかどうかを理解するこ
とは重要である。老人ホーム入居者の大規模なコホート研究において不眠症を睡眠薬で治
療した群と比較して非治療の不眠症と転落との間に強い関連性が認められているとの報告
もあり睡眠薬を差し控えることでさらに有害な結果をもたらす可能性もあります。
これらの疑念を対処するために我々は非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と股関節骨折のリス
クとの関連性についてセルフコントロール、ケースクロスオーバースタディデザインを
15528人のアメリカ国内の長期滞在型老の人ホーム入居者において調査した。さらに非ベ
ンゾジアゼピン系の睡眠薬を用いる際に股関節骨折のリスクを上昇させるサブグループを
明らかにするために、それぞれの特徴(すなわち認知能力や機能状態、移乗能力、尿失
禁、拘束具の使用)や施設の質や特徴(すなわち職員の割合の高い施設や医療保険制度対
応の病床数の割合)について層別に解析しました。
Methods(ここからはある程度要約する必要があります)
対象についてはFigure1で説明します。
メディケアでのPartAとPartDの要求は老人ホーム入居者と関連付けがあり、900万以上の
件数が2007年7月から2008年の12月までの期間に(一番上の)メディケアのPartAで入院
に対する診療ごとの個別支払の要求がされており、そのうちの127917件が股関節骨折での
請求となっています。そのうちの127253(99%)が少なくとも6か月前からメディケアに
登録されており、23882人が股関節骨折の診断の6か月以上前から老人ホームに入居してい
ます。処方薬の完全な情報を登録してあるメディケアPartDの患者が15626人(65%)、そ
のうちの50歳未満の98例を除外した15528人が最終的なサンプルサイズとなっています。
ケースクロスオーバースタディーデザイン(事例交叉デザイン)
ケースクロスオーバースタディーデザインは急性事象の一時的な被ばく効果を評価するた
めのものです。今研究では被ばくすなわち非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の所有の時期
が股関節を骨折した日から0-29日前までの期間(ハザードピリオド)と、また60-89日前
の期間、120-149日前の期間をコントロールピリオドとし、各々の参加者で比較していま
す。参加者における薬剤の使用や不使用についての時間の交錯、過度な交錯因子について
は除外した。不眠症悪化などの病態の変化が薬剤の調合や股関節骨折のリスクに寄与する
可能性は残存した。
非ベンゾジアゼピン系の薬剤の使用について
新規の使用による股関節骨折のリスクに関して検討しました。
定義としては受傷から60日前より以前には所有していなく、新規に内服されで受傷したも
のとしています。
老人ホームの特徴
Minimum data set(というメディケアのすべての入居者の臨床評価について国により義
務付けられているデータセット:略してMDS)が質や個々のニーズへの対応について評価
する道具として使用されています。
MDSアセスメント
認知面の評価はCongnitive Performance Scale
正常から軽度の機能障害(0-2)
中程度から重度の機能障害(3-4)
機能面の評価はADLロングスケール
軽度(0-7)、中程度(8-20)、重度の障害(21-28)
移乗能力についても
自立(0)、見守りや軽介助(1-2)、移乗にさらなる介助や全介助を要する(3-4、
8)
拘束具の使用は過去7日間のベッドやサイドレールの使用とみなして評価しています。
結果
15528人の股関節骨折を生じた老人ホーム入居者のうち1715人(11%)で非ベンゾジアゼ
ピン系睡眠薬が調剤されていました。ハザードピリオドとコントロールピリオドにおける
患者の所見についてTable1に示してあります。
平均年齢81歳、77.6%が女性、併存疾患は貧血6.8%、うつ病49.9%など。40%近い
39.6%の対象者が中程度から重度の認知障害を有しており、また65.4%がADLにて中等度
の機能障害を有していました。1日における入居者に対する看護師・准看護師や看護助手
の時間は平均3.4時間でした。
Table2になりますが非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の所有から30日以内の股関節骨折のリ
スクはオッズ比で1.66に上昇し、ハザードピリオドを15日に短くしても同様の傾向でした
(オッズ比1.47)。新規の非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の使用はそれだけで骨折のリス
クは高くなり、初めの15日間が最も大きくなりました(オッズ比2.2)。
Table3では正常から軽度の認知障害の患者の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用において
中等度から重度の認知障害の患者よりも股関節骨折のリスクの上昇が確認され(オッズ比
1.86と1.43)ADLの中程度の障害では重度のADL障害の患者の薬剤使用よりも骨折のリス
クが高い傾向がありました(1.71と1.16)。
移乗に対して介助が少ない患者で睡眠薬を使用する入居者は自立している入居者や全介助
を要する入居者よりも骨折のリスクが高かった(2.02と1.46と1.43)尿失禁や拘束具の使
用による階層化での股関節骨折のリスクについては違いはありませんでした。
Medicareのベッドが少ない施設での非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬使用している入居者
はmedicareのベッドが多い施設に比べて骨折のリスクが高いという結果が得られました
(1.90と1.46)しかしスタッフの割合による骨折のリスクについてはわずかな違いしか認
めませんでした。
感度解析
Figure3では横軸を股関節骨折までの期間、縦軸を各々の日での睡眠薬の調剤の割合でグラ
フ化されており有病率が太線で描かれています。
全体における非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の使用による経時的な傾向を認めませんでし
た(PanelB)。発症30日前において睡眠薬を使用すると股関節骨折の有病率が上昇してい
ます(Panel A)。
このことから経時的な傾向が観察期間内でのオッズ比では説明できなかった。
Discussion
今回のアメリカでの長期滞在型老人ホーム入居者において非ベンゾジアゼピン系の薬剤の
使用30日以内に股関節骨折のリスクが66%上昇することが分かりました。新規使用者の初
めの15日間で最も骨折のリスクが高くなることが分かりました。移乗に関して介助が少な
い入居者の方が特に睡眠薬の被害を受けやすく、また有意差はありませんが正常や軽度の
認知力の入居者や中等度の機能障害の入居者もこれらの薬剤の被害を受けることが明らか
になっています。
ケースコントロールスタディではゾルピデムの使用が股関節骨折のリスクを2倍上昇させ
ると報告がありコホート研究では非椎体骨折や脱臼などのリスクが薬剤投与から16-30日
においてもっとも高くなると報告しています。(これらの研究は睡眠薬に関連した骨折の
リスクを個人間の交錯により過剰評価される可能性がある)。我々の研究ではセルフコン
トロールな、ケースクロスオーバーデザインであり交錯を最小化しており、非ベンゾジア
ゼピン系の睡眠薬の使用による股関節骨折のリスクは同様であった(OR:1.66)。
我々の研究では股関節骨折を有する老人ホーム入居者の11%が非ベンゾジアゼピン系の睡
眠薬を使用しており、すべての老人ホーム入居者の15%が研究期間内に非ベンゾジアゼピ
ン系の睡眠薬を使用していると推定されました。この結果は2004年にナショナルナーシン
グホームサーヴェイによるベンゾジアゼピン系の薬剤使用の割合(13%)よりも若干高い
結果となっています。ベンゾジアゼピン系の薬剤の使用制限が結果として非ベンゾジアゼ
ピン系の薬剤の使用増加につながったものと考えられます。
この研究では影響を受けやすいサブグループの存在を検討した。その理由としては非ベン
ゾジアゼピン系の睡眠薬は記憶や注意力、バランス感覚に影響を与えるからです。認知力
や機能障害は薬剤使用により股関節骨折のリスクを高めると仮説を立てていますが、認知
障害が軽度な入居者の方がよりリスクが高いことが明らかになりました。徘徊や移乗が自
立した入居者ほど虚弱な地域在住者において骨折のリスクが高かったとの報告もある。
老人ホームでの転落は夜に多くトイレの際に生じています。尿失禁や夜間頻尿は股関節骨
折のリスク因子とされています。拘束具の使用もより高い骨折のリスクとされていました
が我々の結果では睡眠薬を使用することによるこれらの因子での骨折リスクへの影響は認
められませんでした。
老人ホームのスタッフの割合が転落率に関連するとのいくつかの報告があり、今回
Medicare bedの割合が少ない老人ホームでの睡眠薬の使用が骨折のリスクが増加してい
ましたが偶然(たまたま)見つかった可能性があります(原因はわかりません)。
この研究はセルフコントロールの、ケースクロスオーバースタディーデザインを使用した
最初の論文であり、薬剤のデータや患者の機能的な特徴が含まれたアメリカの老人ホーム
入居者の大量のデータをもとにしているところが強みである。
この研究のミテーションとしては1つ目は薬剤の投与量については検討していないこと
であり、高容量の入居者はリスクが高いかもしれない。2つ目に古典的なベンゾジアゼ
ピン系の薬剤を含んでいるためベンゾジアゼピン系の薬剤との相互作用により骨折のリ
スクが上昇したかどうかがわからない。3つ目に我々は入居者の23882人から15626人と
MedicareのPartD に含まれていない35%を非適任として除外している。PartDに登録され
ていない入居者は本研究の参加者より男性が多く(30%vs22%)、正常から軽度の認知症
であり(62vs47%)移乗に全介助を要する(43vs37%)。これらの違いが我々の結果に影
響を与えるだけの違いになるかわからない。
最後に我々は睡眠薬の影響と骨折のリスクと関連しうる医学的状態(すなわち不眠症)や
病状の悪化などとを完全に分離することはできない。(うつ症状や抗うつ薬の使用などは
我々の結果を説明することはできなかった)。基本的な内科的疾患や睡眠薬のいずれかが
骨折のリスクを上昇させているかどうか引き出したとしても関連事項が残っている。非ベ
ンゾジアゼピン系の睡眠薬を使用する老人ホーム入居者はもっと密に転落に対し監視し、
骨粗鬆症のスクリーニングをし、骨折のリスクを避けるべきであろう。
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