2014年10月2日木曜日

20141002 BJJ Total hip replacement through a posterior approach using a 22mm diameter femoral head

BJJから
最近のはやりだった大径骨頭、前方進入じゃなくてもいいんじゃね?という論文。
僕の個人的な経験として、上手な先生の後方進入は確かに脱臼しないんですよね。
猫もしゃくしも。。。。に一石を投じたという意味で面白いかと思って読んでみました。

抄録
長期の成績が明らかになっていないにもかかわらず、最近THAでは大径骨頭が使用される頻度が増加している。これは脱臼の防止に有効であるという観点からである。しかしながら、後方の関節包の再建は大径骨頭にするとの同じくらいの効果が有るのではないかとこの筆者らは考えている。2004年から2011年までに512例のセメントTHA。22ミリ骨頭を使用。臼蓋の横靭帯を指標にしてできるだけ正確にコンポーネントを設置。平均年齢67歳。平均フォロー期間は2.8年。術前術後のOxford Hip Score、SF12,
UCLAスコアを聴取。他覚的評価はAngeles Merle DAuiigneスコアを使用。カップの設置角をデジタルに計測。脱臼は4股、0.78%であった。結論として22ミリ骨頭、後方アプローチで会っても正しいカップ設置と関節包の再建で脱臼率は低くすることができる。

はじめに
脱臼はTHAの中で最も重要な合併症のひとつである。反復性になった場合にはその治療に難渋する。脱臼の約半分が術後3ヶ月以内に起こり、そのうちの35%から60%が反復性脱臼に移行する。脱臼の病因として考えられていることは、患者側の要因としては年齢、神経学的疾患が併存症として存在すること、軟部組織バランスが悪いこと、術前の関節可動域が良いことなどが挙げられる。インプラントの要因としては骨頭径、臼蓋コンポーネントのデザインが挙げられ、術者側の要因としてはアプローチ、体位、軟部組織バランス、術者の経験が挙げられる。イギリスでは側方アプローチについで後方アプローチがよく使われる。スエーデンの国家レジストリーでは後方アプローチは脱臼の危険因子であると報告されている。近年、大径骨頭の使用が増加している。これは脱臼防止を意図したものである。2003年には36ミリ大径骨頭の使用は1%に満たなかったものの2010年には28%まで増加している。術後1年半までの報告では大径骨頭の使用は確かに脱臼を減少させている。以上の結果からすると小骨頭、後方アプローチの使用は打球のリスクを増加させていると言える。骨頭径の比較、アプローチのコンビネーションでの比較をした研究では後方アプローチにあわせて小径骨頭の使用は10年で12.5%もの脱臼がおこると報告されている。しかしながらこれらの報告では後方要素の再建がおこなわれておらず、26ミリから28ミリ骨頭の使用の間で6.2%から0.8%への脱臼率の減少が言われているもののより小さな骨頭でどうなるかということはわかっていない。また臼蓋コンポーネントの設置不良も脱臼の原因と鳴る。未だに理想的な臼蓋コンポーネントの設置位置には議論がある。本研究の目的は小骨頭を用いた後方アプローチTHAで横靭帯を指標として正しくコンポーネントを設置し、強固に後方成分を再建した場合の脱臼率について報告することである。

手術方法
外旋筋群と関節包は一塊として大転子から切離。横靭帯を指標として臼蓋コンポーネントを設置。40-45度の外方開角、10度の前方開角を目標にして臼蓋コンポーネントを設置。外旋筋群と関節包は大転子に穴をあけてほう着。

結果
4例の脱臼で全て前方脱臼が認められた。0.78%。

考察
歴史的にTHAの脱臼率は1%未満から9%以上まで差がある。0.78%という我々の数字はあらゆる報告の中でも優れた部類に属する。以上から小骨頭、後方アプローチの影響はないものと思われる。横靭帯を指標にして臼蓋コンポーネントを設置すると良い。また後方要素の再建を行うと脱臼率が4.5%から0.5%に下がるとするシステマティックレビューがあるのでこれも行うべきである。
今までの後方アプローチの報告では後方要素の再建を行なわずに脱臼している例が多いので、後方要素の再建は行うべきであろう。
大径骨頭を用いると関節可動域が増加し、ジャンピングハイトが増加し、インピンジメントしにくくなるといったメリットがある。しかしながら大径骨頭ではいまだにポリエチレンウエアが増加する危惧を払拭できない。
この研究は単施設で一人の術者の監修のもとで行なわれたケースシリーズである。今後はRCTも考慮すべきであろう。
結論として後方アプローチ、小骨頭を使用しても低い脱臼率を実現することは可能である。


<論評>
後方アプローチで後方要素を再建しないということはありえないと思ってました。苦笑。関節包と外旋筋群を一塊にして観音開きのように展開するのだと思います。
あくまでも「上手な術者が上手に行うと」低い脱臼率が実現したということです。RCTを行うと論文に書いて有りましたが、多施設で行うと予想としてはやはり小骨頭、後方アプローチはやや不利かなと。(僕自身は後方アプローチ、28-32骨頭派です。)
ポリエチレンウエアは骨頭サイズよりもクロスリンクかどうかの方が大きく影響していると思います。某メーカーで22ミリ骨頭はconventional polyetylene、28mmではhigh cross linkを発売しております。そうなるとHigh cross llinkのほうが摩耗が少ないのではないかと予想してます。材質の違いは骨頭径よりも大きく影響しているはずというのが僕の意見です。
人工関節はアプローチ、骨頭径よりも術者の技量をまず挙げて正確に設置することですよ。また再建できるものは再建して美しい手術をすることですよ。というメッセージと受け取りました。

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