2015年5月11日月曜日

20150511 BJJ Can the pre-operative Western Ontario and McMaster score predict patient satisfaction following total hip arthroplasty?


人工関節を受ける患者さんの術後の満足度を向上させるために。

術後満足度と関連する術前の因子が明らかになれば術前からその満足度に関わる因子に介入することでより患者さんが満足できる医療を提供できるだろうということです。

結論は術前に患者立脚型評価を取ってみたけど、術後の満足度とは関係ないし、また術後のWOMACスコアも患者満足度を評価するには不十分だよ。ということになりました。
これはOxford Hip Scoreでも同様な結論が報告されています(2011年BJJ)

患者満足度っていったいなんなんでしょう。。。。


以下抄録

術前のWOMACスコアがTHA術後の満足度を反映するかどうかについてコホートで調査を行った。2つの大病院で手術された446人の患者が対象。満足度は改善したか悪化したかで調べた。術前のWOMACスコアと術後のWOMACスコア、満足度で散布図を書いて相関関係を求めた。満足度と術前、術後のWOMACスコア、またWOMACスコアの変化量でROCカーブを書いた。
術前WOMACスコアと術後WOMACスコア、満足度の間には全く関連がなかった。相関係数は0.16から0.05にとどまった。満足度を対象としたROCカーブも術前WOMAC0.54、術後WOMAC0.67WOMAC変化量で0.43に過ぎなかった。術前のWOMACスコアは術後のWOMACスコア、満足度を予想することは出来ない。以上の結果から患者の優先順位を決定するのにWOMACスコアを用いることは適切ではない。

はじめに
THAは整形外科領域のなかでもっともうまく言っている手術の一つである。しかし術後の状態がどうなるかということを予想することは未だに困難である。患者立脚型評価は最近ルーチンに取得されるようになってきていて、手術がうまく言ったのか、手術の限界点はどこかということを決定することが試みられている。インプラントの生存率などからPROMに評価ポイントが変わってきている。
WOMAC24の質問からなる質問指標で100点が最高に悪い状態であるとされている。
術前に行なわれる患者立脚型評価で手術する患者の順位付けをしようとする試みは未だに議論のあるところである。近年行なわれたTKATHAの患者で術前のOxfordHipスコア Kneeスコアを用いて術後の状態を予想しようという試みが行なわれたが、ほとんど相関せず、術前に患者の優先順位を決めるのには適していないという報告がなされている。本研究はWOMACスコアで同様の手法を用い、術前のWOMACスコアが術後のWOMACスコア、満足度を予想することが可能かを検討することである。

カナダで2007年から2010円までの間に行なわれた多施設研究。446人のTHAの患者から術前と1年後のWOMACを聴取。217人(49%)の患者が男性であった。平均年齢は63歳。平均BMI30。セメントレスTHA88%、ハイブリットTHA11%、セメントTHA1%に行なわれた。摺動面は84%がMOP8%がCOP8%がMOM0.2%がCOC0.2%がMOCであった。リハビリはすでて同様のプログラムで行なわれた。WOMAC、満足度は独立したリサーチャーが取得した。

結果
12人の患者がアンケートに完全回答できなかったため除外された。
1に術前、術後のWOMACスコアを示す。
1が術前のWOMACスコアと満足度である。相関係数は0.0065と相関していない
2が術前のWOMACスコアと術後のWOMACスコアである。相関係数0.041とこれも相関していない。
満足度の改善をy軸によってROCカーブを作成した。
3が術前のWOMACとの関係、図4が術後WOMACとの関係。図5が術前後のWOMACスコアの変化である。
それぞれAUC0.540.670.43であった。

考察
本研究の結果から術前のWOMACスコアが術後の状態を予想することが出来ないことが明らかとなった。
 人工関節の目的は疼痛の除去、機能改善、患者の満足度向上である。患者立脚型評価はこれらの評価を定量化することができる。今までWOMACは術後の評価にしか用いられて来なかった。今までに多くの研究で術後の満足度と術前の状態が関連しないという報告があるにもかかわらず、明らかなエビデンスがないにもかかわらずPROMの点数の高低によって患者の優先順位を決めることさえあった。
以前にJBJSBrにてJudgeらがOxfordHip scoreで報告した結果と同じようにWOMACでも同様に術前の状態は術後の満足度を予想することは出来なかった。
ROC曲線を描画したものの、術後満足度を予想する術前、術後の満足度の閾値を明らかにすることは出来なかった。術後のWOMACスコアでさえ、満足度の感度は64%、特異度は66%にすぎなかった。WOMACスコアで術前に階層化するという目的にも使えなかった。
多くの患者がTHAに満足している一方、ある一定数の患者は手術に満足していない。そしてそのような患者を同定することは困難である。
術前の精神状態が術後の状態に関わっているとする報告もある異イプ、関係ないとする報告もある。また年齢、性別、合併症は患者満足度と関連しないとする報告がある。ある研究のみでTHAは年齢が高くなるほど満足度が低くなり、TKAは若い患者で満足度がより低いとする報告がある。

多方面から患者の満足度、機能疼痛を評価することは必要である。患者の不満足に係る因子がなにかということを明らかにすることはまた重要なことである。そしてその不満足に係る因子に術前から介入できることが目標となる。WOMACOxfotdhipスコアがともに満足度を評価するスコアとしては不十分であることがわかった。